未来のデータ
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
※
樫木のこと、何にもわかってなかったな。
僕は反省した。
婚約までしている彼女がいたなんて思ってもみなくて、
女の子と付き合ったことのない童貞の僕には、想像するのも難しい寂しさだ。
リオナにご執心のように見えたのだって、茜って人の影をどこかで重ねているみたいだった。
そんなに似ていたんだろうか?
何があったのかはわからないけど、樫木の後悔は拭い去れないものらしい。
茜って人のことを口にする時、苦しそうな顔をして、暗い目をする。
僕がルイさんやマキちゃんを思い出すような気持ちとは、
また違うんだろうな。
クエスト前に気持ちが落ち込んでいる樫木をあげようと、
和木が話しかけていた。
励ますなんて僕には到底できそうもないこと、和木は自然とやってしまう。
僕だったらたぶん、「元気出して」とか「頑張ろう」とか通りいっぺんのことしか言えない。
でもこんな時に、そんな薄っぺらい言葉かけられたら、余計に腹たつってこと僕でもわかるから、和木の自然な寄り添い方が素晴らしいと思う。
そういえば和木は彼女とかいたのかな?
彼女じゃないけど、樫木は黒田コウのことが好きだって言ってた。
黒田に会えないってのは和木にとってもキツいんだろうな。
僕は、いたたまれない気持ちになって、二人の側に近寄った。
「僕たち、今ちゃんと生きてる。たぶん、他の人たちもちゃんと生きてる」
永遠に会えなくなることは辛いけれど、
彼らを覚えている自分たちが死なない限り、つながりが完全に消えることはない。
ルイさんやマキちゃん、樫木の彼女や、黒田姉弟、
何処かで生きているのだから、絶望しちゃいけないと思った。
僕はただ、二人の腕を掴んでいた。
今一緒にいてくれる人を大事にしよう。
今度は後悔しないように。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月13日