下駄箱に手紙とか入れるなよ、絶対!
気の向くまま、気分転換でUPしています。
※
朝練を終えた僕が、授業に向かおうと下駄箱を開けた時、
生涯で1、2を争う事件が起こった。
下駄箱に、手紙!!
昭和かよ、とは思ったものの、僕はSNSに尻尾を出さなかった。
もしも、の話だよ。
バスケ部の新入生として活躍する僕を、
奥ゆかしい、可愛い女子が見ていて、
何とか連絡を取ろうとすることって、
可能性0%じゃないと思ったんだ。
ごめん。
僕、二次元、三次元で生きてるから、結構面食いなんだ。
でもリアル女子に上目遣いで見られたら、
どんな女子でも120%上がってしまうから、
やばいよね、女の子前にして僕のピーがピーするの。
女子からの手紙っぽいものを見ただけで、
僕のハートが鷲掴みにされる。
手にとった手紙を隠そうとして、
恐る恐るカバンに入れようとすると、
見知った大きな体格の男が近づいてきた。
「あ、おまえの下駄箱の隣だったんだ」
僕の一番苦手な男が、僕の隣。
下駄箱って名前書かないからな、
学籍番号で敵を察知できなかった。
滅多なことでは一緒にならないし、まさか和木ヨースケと、下駄箱が隣だとは思っていなかった。
「森リトウ君だっけ? 足利家の、利。トウは刀で、利刀?」
こいつにもやっと名前を覚えてもらえたらしい。
「おまえの名前、刀由来だよな。ーー刀とか、好き?」
え? こいつもトーラブマニア?
たまに男でもいるんだよ。
8割以上女子ユーザーのゲームをやってる男子。
僕はそんなの、全然興味ないし。
大体その手のゲームって、女子受けするために、
ご主人である女子の顔出さないじゃん。
ーーまあ、ご主人になりきる痛いけな女子のために、妄想膨らます余地を残してるんだろうけど、これがとんでもないブスだったら、お話成り立たないじゃん。
顔出しNGの主人公なんて、男子の僕には興味はなかった。
やっぱビジュアルに訴えてよ。
ちゃうちゃう。
ん、刀??
和木が自分を見ていた。
「そ、そ、そ、そんな興味あるってほどじゃないけど。自分の名前の刀くらいは、興味持って歴史も知っているけど」
和木を前に萎縮して、遠慮がちな言葉を紡ぐ。
「そうか。俺さ、ーー実は刀鍛冶、ちょっと憧れているんだよね」
今どき刀剣○○ではなく、刀鍛冶!?
鍛冶屋って言ったら、いきなり必殺仕事人っていう昔の時代劇しか思い出さないよ。
もしくは斬鉄剣鍛える、○○○三世にでてくる、鍛冶屋くらい。
あ、ごめん。
リアルな想像無理ゲーだわ。
「うちさ、花道の家元だろ。ハサミとか自作してるうちに、ちょっと目覚めちゃったんだよねぇ」
はい!
オタク、変態領域いっちゃったんですね。
「いいじゃないですか」
僕は罪のない爽やかな笑顔で対応した。
所詮、こいつもオタク領域なら、恐るるに足りず。
「今度、俺が作った刀、見にくる?」
ケッコーです。
心の中で、少しせせら笑いながら、微笑んでみる。
案外チョロイカも、和木ヨースケ。
ところが、彼が下駄箱を開けた途端、
完全に溢れ落ちた手紙の量を見て、
僕は絶句した。
全部!?
全部ラブレターか!?
おいっ!!
「SNSとか危険だろ。一切やらないとこうなるわな」
スカした顔の和木が言った。
「また放課後部活で」
そしてモンスターは去っていった。
『前略 和木ヨースケ様
貴方を見かける時……』
僕の下駄箱に迷い込んだ手紙を開き、僕は打ちのめされた。
間違って、入れちゃった女子も、そりゃいるわなぁ……。
やっぱ和木ヨースケなんて嫌いだ!!!
オタクの青春は異世界転生
いつ異世界転生するの!?
きっとするので、ちょっと待ってください。
全てがアドリブで、最終地点まで向かう作品です。