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ブレイカージャック   作者: ジェイムズ
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銀河の秘宝

ジャックは「対人観察機能」を最優先にした。

「ひどいなぁ、ジャカル君、僕らは仲間じゃないか」

目の前の男は薄笑いを浮かべながら両手を挙げる仕草をした。

ジャックの人工頭脳は物凄い速度で相手の表情や声、動作などの情報をパターン検索していた。

 その結果は・・・目の前の男は嘘をついている・・・と算出された。


 

 俺の名はジャッカル・ブレイカー・・・人呼んでブレイカー・ジャック。

俺はいわゆる生身の人間ではない。オーソドックスな言い方をすればロボットやアンドロイドと呼ばれる存在だ。

 しかし、見かけはどう見ても人間だ。

バイオ科学で作られた人工皮膚に包まれた身体に人工臓器、人工筋肉そして人工頭脳が詰まった

ハイパーテクノロジーの産物だ。

 

 俺の表の顔は銀河をまたにかける何でも屋、裏の顔は銀河全域に広がる謎の組織の下で活動する男。

 今回舞い込んだ(表の)依頼は、【銀河の秘宝】と呼ばれる謎のお宝の探索だった。

そして目の前にいる男が【銀河の秘宝】の情報提供者だ。俺と同じようにブレイカーの俗称で呼ばれる・・・ブレイカーとは金次第でどんな仕事でも引き受けるスペシャリストに対する蔑称だ。彼らの仕事が多くの場合、揉め事~破壊行為を引き起こしてしまう事から、ブレイカー(破壊者)と呼ばれる。


「あんたは【銀河の秘宝】の情報の提供を申し出たが、なぜ自分で探そうとしないんだ?」

 俺はあえて正面きって疑いの言葉を投げかけた。

「依頼を受けていないからさ。それに物が物だけにリスクが高い」

 この男の嘘は【仲間】という言葉か?【銀河の秘宝】についてか?・・・俺の人工頭脳が瞬時に判断して会話を続けた。

「もっともだな。情報料はもう口座に振り込んである」

 俺の言葉を聞いて目の前の男・・・ブレイカー・ジェイドがにやりと笑って応えた。

「商談成立だ。こいつが俺の知ってる全てだ」

 ジェイドは仰々しくアタッシュケースから極小の記録媒体を取り出した。


3日後、俺は辺境惑星のアズラに来ていた。

ジェイドの情報によれば、ここに【銀河の秘宝】の手掛かりがあるらしい。


アズラは資源に乏しく、陸地の大半が砂漠地帯のさびれた惑星だ。 

閑散とした宇宙港のゲートを出た瞬間、俺の防衛用センサーが警告を発した・・・狙撃ライフルにロックオンされている・・・俺の人工頭脳は危険を察知するとほぼ同時に最適な回避方法を検索し、すぐに実行した。

 次の瞬間、ライフルの発射音と的を外した弾丸が俺の後ろに停まっていた車のボンネットに突き刺さる音を高感度センサーが感知した。

 俺は運動機能を最大稼働させて出来るだけその場から遠ざかった・・・その直後、轟音が響き渡り被弾した車が爆発炎上した。

 センサーによる情報の分析の結果、使われた弾丸は超小型爆薬を仕込んだ特殊弾・・・軍事用のやつだ。たかが一人の人間を殺傷するには大げさすぎる。明らかに俺についてある程度の情報の持ち主に狙われたと考えるのが推論の第一候補だ。

 

 必要以上の騒ぎに巻き込まれないよう、消防隊や地元警察が駆けつける前に俺はその場を離れて車で市街地に移動し、予約していたホテルでチェックインを済ませた。


 ほどほどに豪華なホテルの部屋のドアを開けると・・・そこに、見知らぬ女がいた。

「ルームサービスを呼んだ覚えはないが・・・」

 俺はわざとらしく声を掛けた。

「初めまして。私はあなたのボスのメッセージを届けに来たの」

 あり得ない事だった。

最も情報漏えいの可能性が高い人間・・・しかも女を介して組織が連絡をよこす事などあり得ない。

 俺は対人観察、特に嘘発見器機能を最優先にしてみた・・・女の表情、瞳孔の開き具合、心拍数等々のデータを検知・分析したが嘘の兆候はみられない。

「とりあえず、聞かせてもらおうか」

 俺は人間らしい、少しとまどったような様子を見せつつも単刀直入に言葉を返した。

「せっかちなのね。せっかくお知り合いになれたんだから、もっと楽しみましょうよ」

 感情と理性が同時進行する、いかにも女性らしい反応だ。

「こいつは失礼。知っているとは思うが、俺はジャッカル・ブレイカーだ。あんたの名前は?」

女は少し間をおいて魅惑的な微笑みをみせながら答えた。

「ジョディよ。ジョディ・アセット」

俺の人工頭脳は即座に現時点でアクセス可能な全ての情報源に検索をかけたが、その名と顔で一致する人物の情報は得られなかった。偽名の確立は極めて高い。


「映像で見るよりずっといい男ね」

 俺を生身の人間でないと知ってか知らずかその女ージョディは誘うような言葉をかけてきた。

「光栄だね。君みたいな素敵な女性にお褒め戴くとは」

ジョディと名乗った女は値踏みをするように俺の全身に視線を這わせた。

「素敵なお身体ね。何かスポーツをしてらしたの?」

「若い頃にいろいろとね。君はどういう人なのかな?」

「私のことを知りたい?」

思わせぶりな言葉を返しながらジョディはさりげなくグラスに酒を注ぎ近づいてきた。

「じゃあ、お近づきの印に」

俺は普通の男がそうするように、ジョディの魅力のとりこになりつつある態度を示しながら受け取り乾杯した。


「こう見えても元々はお嬢様育ちなのよ」

杯を重ねて少し頬を紅潮させながらジョディは自分の事を語り始めた。

(実にいい女だ)俺の感情回路の主人格はすっかり目の前の女に惹きつけられている反応を示していた。人間にまぎれて活動」するために俺の人工頭脳には何人かの人格が設定され反応パ

ターンを記録していっている。人間なら恋に落ち始めている、といったところだろう・・・論理回路がそんな認識をしつつある最中に俺の中で機能低下の警告が発せられた・・・酒に何か混じっていたのか?・・・


 機能が回復し始め、俺の人工頭脳が状況分析を開始した。

俺がいるのはさっきのホテルの一室ではない。ここはどこか?女はどこに行った?・・・

位置情報システムの助けを借りて俺は自分の居場所を調べた。市街地から東南の方向約30キロの位置だった。身体にも内部機能にも異常はみられない。(空港で狙ったきた奴とは別口なのか?)論理回路が様々な推論を始め、同時に感情回路のに主人格が【後悔】や【自己嫌悪】の反応を示していた。

 酒には特別な混合物は検知されなかった、女は嘘発見機能に引っかからなかった、特に危害は加えられていない、ここは倉庫か何かのようだ・・・様々な情報を整理・分析し推論を繰り返す・・・何らかの事情で組織が俺の行動を阻止しようとしている?、俺のセンサーが故障している?、センサーを誤魔化せるだけの特殊技術が使われた?・・・明確な回答は導き出せなかった。俺の人工頭脳は同時並行でこの場所からの脱出方法を検討した。

 厚さ10㎝のコンクリートの壁に囲まれた一般的な倉庫、破壊するのはた易い、爆発物や監視装置は

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