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おじさんは戦闘シーンをこう書いている。

・まずは妄想してみよう


 あなたは普段、作品を創る際に、どんなことから始めますか?

 私はまず妄想をします。

 シーンの断片だけでも妄想して、それをまず書いてみる。

 ほとんどの場合、セリフだけだったりします。


 戦闘シーンも同じです。

 どんな戦闘を書きたいのか。タイマンなのか、集団なのか。殴り合い、斬り合い、魔法の撃ち合いなど、バリエーションは無限にあると思います。


 大雑把でも構いません。まずはどんな戦闘なのかを想像してみましょう。

 それが苦手な人は、イメージだけでも構いません。

 静かな戦い、乱戦、ボッコボコの殴り合いなど、方針が固まったら次の段階です。

 どうしても無理なら、先達の戦闘シーンを丸っと参考にしてしまいましょう。

 戦いのやり取りに版権はありません。自分の言葉で書いてさえいれば、流れ自体は真似しても問題ないと思います。


・戦闘のパターン


 戦闘シーンには、主に次のようなパターンがあります。

 ① 1対1

 ② 1対多

 ③ 多対多


 書き慣れた人の戦闘シーンは、これらを組み合わせて作られていたりします。


例:戦記もの。

味方1万の軍勢VS敵3万の軍勢 (味方の方が少ない設定だと燃えやすい)

→多対多

主人公の姿を敵軍の将(因縁のライバルなんかも良き)が見つける

→1対1

敵将が劣勢に→敵の部下たちが加勢

→1対多

主人公の無双(必殺技)、または味方の軍勢(多対多)で決着


 こんな流れ、よく見るんじゃないでしょうか。

 このような流れは、戦場を大きく使うことが出来る上に、要所で人海戦術を使うことが出来るため、ダイナミックな表現が可能になる一方、戦闘描写力が大きく問われる方法になります。下手をするとバランスが一気に崩れ、どういう状況で何をやってるんだか全然分からないということにもなりかねません(経験済)。


 まずは上の3つのパターンを、それぞれしっかり書けるようにした方が良いかと思います(経験して後悔済)。


 ちなみに、戦略と戦術の意味の違いが分からない、という声も見かけたので、ものすごくざっくりお話ししておくと。


 戦略=集団戦闘

 戦術=数人程度以下の戦闘


 くらいのつもりで構わないと思います。

 これはもちろん、これから書く人や苦手な人向けの話です。


 次からは、戦闘シーンの見せ方、おじさんはこう書いているよというのをご紹介していこうと思います。


・攻撃と防御


 戦闘シーンの見せ場には、主にこの2つがあります。

 え、防御も? と首を傾げる方もいらっしゃるかもしれませんが、

「敵の猛攻を防ぐシーン」は実は結構熱いんです。

 防ぐのか、躱すのか、はたまた“いなす”のか。

 更にそこからカウンターを入れる、つまり攻撃に転じる流れまで作れると、

「不利な状況を一気に覆す」展開を作ることが容易になります。


 さらに、防御側から見た場合、相手の攻撃も一度に描写することが容易になり、戦闘シーンをより濃く描き出せるようになるかと思います。


 一方、攻撃の見せ方としては、「一撃必殺」「連続攻撃」「反撃カウンター」のいずれかで考えるといいでしょう。

 小説という文字だけで表現する特性上、より強さをアピール出来るのは「一撃必殺」です。連続攻撃は、慣れないとどうしても一発が軽くなりがちです。その分手数を増やすわけですが、それを全て払拭する一撃、という書き方は、そのキャラクターの強さを誇示するのには一番分かりやすいのではないかと思います。


 漫画であれば、一コマの中に攻防織り交じる描き方が出来、それが戦いの緊張感を魅せることにもつながりますが、小説で戦闘を書く場合、下手をすると“誰が何をしてるのか分からない”状況になりかねません。

 なので、小説で戦闘を描く時には、RPGなどでよくある「ターン制」を意識するといいかも知れません。


・一撃の重さ


 攻撃の威力を示すために、どんな書き方があるでしょうか。

 VRMMOなどでは、数字という絶対的な物差しを使う人もいると思います。

 システム上そういった書き方の出来る世界であれば、それもアリかとは思いますが、現実には中々そうもいきません。DBのスカウターのようなアイテムを使うという手もありますが、小説ではそのスタイルはあまり得策ではない気がします。

 さりげなくアイテムを使う、という表現は、絵では出来ても、わざわざ言葉にすると野暮ったくなりがちだからです。


 では、小説ではどう書けばいいのか。

 これは漫画にも通じることではないかと思うのですが、攻撃の強さはまず、その前の「タメ」の描写にかかっていると思っています。


 例えば、同じ「刀を振る」を表現するとして、予備動作を書かずにいきなり振るのと、構えの際に腕に力が入る、腰をひねる、一瞬止まった時に全身からオーラが吹き出る、などの一タメがあると、より力の入った一撃を表現することが出来るかと思います。


 また、それを逆手にとって、いきなり振った一撃の剣風で岩を砕く、みたいな見せ方をすると、そのキャラのチート具合を表すことも出来ます。


・スピードの出し方・加速、減速の調節


 戦闘シーンにはスピード感が大事です。ただ闇雲に速いのではなく、緩急をつける、ということです。


 マトリックスをご覧になったことはあるでしょうか。

 あの映画では、要所要所で動きがスローモーションになる演出が入ります。

 あれを小説に持ち込むと、「スローモーションの部分に文字数を割き、その後のスピードの速い戦闘は出来るだけ簡素に、やり取りの内容だけを書く」という感じになってきます。


 初出の技や動きは詳しく、あとは短く、キレを出す。

 これをやるのに便利なのは「技名」です。

 初出の際、誰かのセリフでも、地の文でも構いませんが、技の名前を出しておきます。出来るだけ簡単な、一般名詞の組み合わせにするといいでしょう(例:全力パンチ・火炎魔法・三連撃など。ルビを振るなどしてもいいですね)。

 初出のあとは、出来るだけ近いタイミングで同じ技を出します。そうすることで技名を印象付けることが出来ます。


・決着の付け方


 あなたの思い描く戦闘は、どういう種類のものでしょうか。

 喧嘩・殺し合い・戦争など、様々な種類があるでしょう。

 そしてその先には必ず「決着」というものが待っています。


 ただ、それらは必ずしも「勝ち負けを決めないといけない」ものではありません。ルールのある戦闘ならともかく、殺し合いで双方生き残るような展開にする場合、そこには明確な勝ち負けはありません。なぜなら、圧倒的に押されていても、最後の力で引き金を引けば、相手が死ぬ=勝つ、もしくは相討ちになるからです。


 敗北感、優越感を、誰がどういう形で持つことになるか。また、どんな遺恨を残すのか。次の戦いに影響するのか。

 その辺り、もしかしたら戦闘シーンを描くうえで、一二を争うくらい難しいかも知れません。


・テンポの作り方


 テンポの良い戦闘シーンは読んでいて爽快になります。

 逆に、ギッチリねっとりと細かく描写をしていく戦闘シーンは、緊迫感を伴います。

それぞれを意図的に狙って書く場合、大事になるのは「一文の長さ」だと思っています。


 具体的に、「なろう」の文字数を参考にしましょう。

 テンポの良い戦闘を書く場合、なろうの表示で一行以内で一文を書く。

 緊迫感を煽る場合、3行程度文を続ける。ただしそのあとは一行、空白を入れる。

 これを意識して言葉を選んでいくと、戦闘シーンの緩急を付けやすくなると思います。


・技は3つまで、防御はいくつでも


 一度の戦闘での攻撃技は、一人当たり大体2〜3つ前後でまとめるといいでしょう。1つだと一撃系の描写はいいですが、長めの戦闘シーンでは冗長になりがちです。また、4〜5つの技を出す場合、慣れていないと描写がごちゃごちゃになり、読んでいてもあまり気持ちよくシーンが進みません。


 逆に防御の仕方は、多ければ多いほど、出来れば毎回違う防ぎ方をするといいと思います。攻撃への攻略法、みたいな要領で書くといいかも知れません。

 →偶然、または雑な防ぎ方〜キャラの心理(「なぜ今避けられた?」「防げた……もしかして!」)を挟んで、より確実に防ぐ〜防いだ上でカウンターを入れる、または逃げる、など。


・地形を利用してみよう


 こんなの考えられないよ、という方もいらっしゃるかも知れませんが、実は簡単な話です。


 高低差がある場合、原則的には上にいる方が有利。

 障害物を挟む場合は攻撃側の攻め方に重視。

 戦闘を行う場所に、何があるかを考えておく。


 これが意識できると、立体的で面白いシチュエーションを書くことが楽になってきます。


・質問に答えるコーナー


 Twitterで質問を受け付けたところ、いくつかいただいたのでお答えしていきたいと思います。

 重ねて言いますが、あくまでも私の考えに過ぎません。

 私はこうやってますよ、私ならこうしますよ、という考え方の紹介です。


◉隠し玉、逆転劇のコツを教えて下さい


 隠し玉、つまり秘密兵器的なことだと思います。

 いきなり出すとあまりの唐突感にただのご都合主義と捉えられてしまいがちですよね。

 なので、戦闘直前、または戦闘前半の時点で、秘密兵器の存在を匂わせておきます。

 ほんの一文でも構いません。

(……まだだ、もうちょい待て)みたいな心象描写なんかもいいでしょう。

 戦っている相手にとってはいきなりでも、読者さんにそれを伝えておけばいいので、わざわざ仕草やセリフ、地の文に出さなくても問題ないと思います。


 次に逆転劇ですが、これは「どう逆転させるか」を予め考えておくといいと思います。

 自分の機転で乗り切るのか、相手の自爆を誘うのか、仲間の救援があるのか。など。

 逆転が決着になることも多いので、そこは展開を最初に決めておくと、秘密兵器と同じく、ちょこっと仕込んでおくことなんかも出来ると思います。


◉カメラワークのイメージの仕方、寄せや引きについて


 この辺りはバトル漫画を参考にすることが多いです。

 戦闘前のやり取りや、これからの激しい戦いを予感させる部分は引きのイメージ。これはセリフメインで考えると書きやすいと思います。

 そして、戦闘に入る時や戦況が変わるとき、決着のつく直前など、動作や表情が大きく変わるタイミングは寄せのイメージ。私の場合、こちらは地の文や心象などの描写を多めにすることが多いです。


 なお、戦っている最中の描写は、タイマンは接写、パーティ戦闘は引き多め、大規模戦闘は個人の書き分けをする必要なし。

 と思っています。


――――


 今のところこんな感じです。

 素人が偉そうに語ってんじゃねえよ、というご意見もあるかと思いますが、そこはそれ。

 ちょっと面白そうじゃん、と思ったり、苦手意識を薄れさせる一助になれば幸いです。

このエッセイをご覧になって、

「こいつはそもそもどんなん書いてんだよ」と思ったあなた。

ぜひ一度お読みくださいませ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 勉強になります! いつも勢いだけで書いてるもので。 活かせるようになりたいです! がんばります!
[良い点] ありがとうございます! なかなか書けずにいた戦闘描写がなんとなく見えてきたような気がします。 どこを取ってもははあ、なるほど!の連続だったのですが、特に防御も大事、タメが攻撃の強さを感じさ…
[良い点] Twitterでご紹介いただき、ありがとうございました。 まずは妄想と好きなバトル漫画のシーンを思い浮かべて字にしていこうかなと思います。 カメラワークは上級ですね!そんな視点までも操れる…
2020/06/29 20:15 退会済み
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