悪意を止められない聖女
現在、連載中の
「わたくしの破滅の未来を回避するためなら、常識、淑女、晴れやかな学生生活すべてくれてやる!」
で、出てきた童話です。
童話なので、長編読んでなくても大丈夫です。
あるところに一人の少女がいた。
まだ八歳であるが少女の精神は大人のものと変わらないほど成熟していた。
「お父さん、お母さん、わたしは人のために頑張ります。毎日神様へ祈って人々に幸せを届けます」
両親共に少女の行動を子供の時に誰もが通る無謀な夢だと思い、好きなようにしなさいと言った。
それから毎日少女は神殿へ通った。
その途中に出会った人の幸せを祈った。
時には暴力を受けることもあったが、それでも恨んだりはしない。
また神殿へと通い幸せを祈った。
だが幸せを祈ったばかりの男性が突然死した。
それから似たようなことが何度か起きた。
「これじゃダメなんだ。神様に頼ってばかりではいけない。わたしの行動の結果として人を救うんだ」
それから少女は人を助けた。
道を聞いた人と一緒に目的地に行ったり、盗みを働いた子供には森での採取を教えた。
だがその者たちは亡くなった。
だが少女に悲しみに暮れる時間はない。
「もっと多くの人を救わないと!」
少女は一人一人助けるのでは助けれない命が多くなることに気付いた。
「そうよ、畑を作れば沢山の人に分けられる!」
少女は色々な知識を組み合わせて畑を耕した。
だが全く芽が出なかった。
「畑がダメなら、魚を釣ればいいじゃない!」
少女はまた色々な知識を組み合わせて魚を釣ろうとした。
しかし洪水が起きた。
「わたしは教えるほうが得意に違いない!」
少女はこれまでの経験から沢山の知識を手に入れていた。
それからは子供から大人、男女関係なく教えを広めた。
しかし、その教えた者が国の敵となった。
そしてとうとう少女の話を知った王が少女を処刑台へとやった。
「この悪魔め! お前が民を唆したせいでこの国はおかしくなかった。何か言いたいことがあるのなら最後くらい聞いてやる」
「王様! わたしは悪魔ではありません。わたしは人々を救いたいだけなんです!」
少女は一生懸命伝えたが、王はさらに怒ってしまった。
「まだ言うか! その女を殺してしまえ! 悪意を止められず、ましてや聖女を語る女を許すな!」
少女の涙が頬を伝った。
少女は一人だけ救えなかったのだ。
この日、国は変わった。
農業革新で飢えがなくなり、魚は養殖ができるようになり、そして国を善政する者たちが生まれた。
だがそれよりも一番の変化はその玉座だ。
町を歩く一人の若者が旅人にこう言った。
「ようこそ、聖女の国へ」