奇談散歩【39】 悉平太郎の墓 ( しっぺいたろうのはか )
≪しっぺい太郎 ( しっぺいたろう、竹篦太郎、悉平太郎 )は、魔物退治の犬である。日本各地の猿神退治の昔話に登場する。犬名は、すっぺえ太郎などと訛った名前をはじめ、早太郎など異なる名前でも採集されている。
― 中 略 ―
猿神退治の「犬援助型」の話型とされ、対象の魔物は典型例では猿や狒々 ( ひひ ) だが、他にも化け狸、化け猫(ドイツ訳・英訳にもなっている)など様々である。
『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』に編まれた中世の説話より口承文学として伝搬したとの説がある。― Wikipedia:しっぺい太郎 より≫
【 悉平太郎:あらすじ 】
今から700年ほど昔、遠江国。
見付天神では、毎年 乙女を人身御供として山神に差し出すという供儀が執り行われていた。乙女を供えねば、村の田畑が荒らされ酷い有様になるのだという、
ある年、村を訪れた廻国巡礼の僧が村人を不憫に思い、山神の正体を探ろうと、社 (やしろ) 近く、松の洞穴に身を潜め夜になるのを待つことにした。
深夜になると、怪しのもの多数が集い来て、中でも取り分け大きな影が「悉平太郎はおるか」と聞く、他の怪しのものは口々に「ここにはいない」と答え、社のなかに入り、
あのこと このこと聞かせんな
悉平太郎に聞かせんな
近江の国の長浜の
悉平太郎に聞かせんな
すってんすってん すってんてん
踊りながら、囃子を繰り返し歌い騒いだ。
こうして、山神が “ 信濃の悉平太郎 ” を怖れていることが分かったので、僧は信濃へ赴いて悉平太郎を訪ね歩いた。そして、僧がついにたどり着いた悉平太郎は人にあらず、信濃駒ヶ根の光前寺の飼い犬であった。僧は事情を話して、その子牛ほどもある犬とともに村に帰り、見付天神の祭礼の日、乙女の代わりに悉平太郎を長持に収めた。
その夜、境内では恐ろし気な声が響き渡り、翌朝、村人たちが様子を見に行くと、多くの猿が死んでいた。なかでも一番大きい猿は針金のような毛をした年老いた狒々で、喉笛を噛み切られて事切れていた。
爾来、この村に山神は現れず、村人は安心して暮らせるようになり、その見事な働きぶりに感謝した村人は光前寺へ大般若経六百巻を書き写し奉納したと伝わる。
この伝説は、人身御供の供儀があったとされる見付天神に伝わるだけでなく、悉平太郎が飼われていた光前寺にも “ 早太郎伝説 ” として伝わっている。
そして、二つの地に残された伝説は結末に相違があり、
見付天神では、悉平太郎は手当の甲斐もなく亡くなったため、その亡骸を祀って “ 霊犬神社 ” を建立したと伝わり、
光前寺境内には、早太郎が埋葬されたと伝わる “ 早太郎の墓 ” が残され、光前寺では、狒々との戦いで負傷したものの、光前寺まで帰って住職の手の中で事切れたと伝わっている。
また、この勇敢な犬の終焉の地とされる伝承地が、見附天神・光前寺以外の二ケ所以外にも有り、
浜松市内の県境である青崩峠のやや手前、足神神社付近の小さな祠に犬の姿が浮き彫された三角形状の石が安置され、それが悉平太郎( 早太郎 )の墓と伝わっている。( 所在地:浜松市天竜区水窪町奥領家 )




