奇談散歩【35】 王老杉稲荷神社
【 王老杉伝承之地:王老杉稲荷神社 】
住所:〒960-8057 福島県福島市笹木野折杉 王老杉稲荷神社
アクセス:福島駅から車で約15分
福島城の郭内用水に架けられた杉橋「密語 ( ささやき ) 橋」、現在は杉妻会館の庭園内に石橋として現存しており、この橋に纏わる杉の精の悲恋物語は前回ご紹介しましたが、この物語の後半には二つのバリエーションが残されています。
ひとつは、
福島城の杉橋から夜になると、物悲しい囁きが聞こえてくる ――
いつしか橋は「ささやき橋」と呼ばれ、人々は声の主は王老杉の精で、恋仲の娘に会いたいと囁いているのだと口々に噂し、恐れおののきました。
そして、橋となった杉の精を慰めるために、娘に橋を渡らせることになり、
娘は「これからは囁くことを止めてほしい」と橋に言い聞かせ、橋を渡り終えると倒れて、そのまま事切れました。
その後、橋から物悲しい声も聞こえることはありませんでした。
※ 娘が橋から身投げする結末も有り、
もう ひとつは ……
『 信達一統志 ( しんたついつとうし ) 』に ≪ 密語橋になった杉の御魂が、朝廷に祟りをなし、そのため平安中期の陰陽家、阿部晴明と芦屋道満が、下向し、平癒を祈願した。村人はこのため壇を築き、それが道満塚、清明塚であると言う。( 現在の清明町の名は清明塚からつけたもの )さらに杉の御魂の祟りをなだめて祭ったのが杉妻大明神とし、この杉妻稲荷こそは当地の産神であるとしている ≫とあり、
≪ また一説には、曳き出す時に大杉はどうしても動かない。陰陽師に占わせたところ、「木の精が娘との別れを惜しむ故であるから、かの娘に命じよ」という。娘が大杉にささやくと、果たして動きだした。この杉をもって城内に橋をかけた。娘は「ささやいて曳きてかけたる橋なればあらさで渡れ信夫うき人」と詠んだとある。『福島の伝説 ( 角川書店 )』より ≫
―― と、陰陽師が活躍するもので、
福島稲荷神社も安倍晴明の創建と伝わっており、福島には陰陽師が関わる神社も多く、この伝承以外にも、福島市下野寺宮田に「行神社 ( おこないじんじゃ )」 という神社があり、『信達一統志』に、この行神社で安倍晴明が秘法を「行った」と記されているようです。




