奇談散歩【34】 王老杉伝説
王老杉伝承之地( 福島県福島市笹木野折杉 )
福島県福島市に伝わる「杉の精霊」の恋にまつわる昔話。
その昔、福島市の信夫地域( 現在の笹木野辺り )に「王老杉 ( おろすぎ )」という杉の巨木がありました。
この王老杉の精霊は庄屋の娘に恋をして「杉の精霊」という素性は隠し、麗しい小姓侍に姿を変え、夜毎 娘の元に通っていました。
しかし、娘は夜にしか訪れず、夜明けと共に姿を消す若侍の事を不審に思い、村の古老に相談したところ「次の逢瀬で別れるときに赤い糸のついた針を着物の裾に刺しなさい」と助言されます。言われたとおりにした娘が逢瀬の後に糸をたどっていくと、「王老杉」の根元に針が刺さっていました。
このことを知り、娘が魔物に魅入られていると恐れた村人達は、杉を切り倒そうとしますが、精霊が宿る王老杉は固くてなかなか切れません。しかも夜になると木屑が切り口に戻って木を修復してしまう為、伐採作業が進みません。
そこで村人は一計を案じ、木屑をすぐに燃やしながら伐ることでようやく杉を切り倒すことに成功しました。
ところが倒れた王老杉は尋常ではない重さでびくとも動かせません。そこへ娘が駆けつけ、倒れた王老杉を偲ぶように触れると、途端に軽くなり運ぶことができました。
そして王老杉の杉材を使って立派な橋がかけられましたが、その橋からは、夜な夜な物悲しい声が聞こえ、いつしか橋は「ささやき橋」と呼ばれ、人々は声の主は王老杉の精霊で、恋仲の娘に会いたいと囁いているのだと口々に噂しました。
その後、娘は王老杉の精と添い遂げるためにささやき橋から身投げをし、以来ささやき橋から声がすることは無くなりました。
人々は切り倒された大杉の御霊と娘を弔うために「杉乃妻大仏」を造り御城に安置して供養したと伝わっています。
杉の精と恋仲になった娘は時満ちて双子を出産しましたが、この子供たちは生まれて間もなく忌子として葬られ、今も双子塚に祀られています。
また、この王老杉の杉材で福島城 ( 大仏城 ) の側に造られた橋 ( ささやき橋 ) は、杉妻会館の庭園内に石橋として現存。大杉の御霊と娘を弔うために作られた「杉乃妻大仏」はじめ、これらの由緒により、付近にはこの伝説にちなんだ地名・名称が多いといわれます。
王老杉を切り倒すときに、杉と仲の悪いヨモギの精が「木っ端を焼いてしまえばよい」と村人に教えた、杉が川を流れ下るときにヨモギが悪口を言ったので、杉が怒って川を逆戻りした。
…… というヨモギの登場するバリエーションもあり「ヨモギ、そんなんだから餅にされちゃうんだよ」とか、思ったんですが、
ヨモギが意地悪なのは もともと杉の精が「草のくせに」と悪口を言ったから、らしいので、口は禍の元ということでしょうか、
この昔話に登場する大杉は顔立ちも凛々しい男性の姿をした精霊だったので、密語 ( ささやき ) 橋を渡った人には美男子・縁結びの御利益があると言われているそうです。




