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奇談散歩【17】 三宝寺池の主


三宝寺池の(ぬし)


明治の初め、ある夕刻の川越街道。

ひとりの車屋が空の人力車を引いて流していたところ、

「もしもし車屋さん」と、呼び止められた。

この辺りでは見かけないような良い身なりの美しい御新造さんだった。

「石神井までお願いします」

と、頼まれたので喜んで引き受けて走ったが、

三宝寺池に差し掛かった場所で、

「ここで結構です」

という、

言われた場所で降ろすと小判で支払いをして、

「おつりはいいので、お収めください」

という、

御新造さんは車を降り、三宝寺池の方向に歩いて行く。

夕刻、こんな人気のない場所に ……

と、車屋が訝しんでいると、

ばっしゃん!

と、大きな水音がした。

びっくりした車屋が音のした方向に駆け寄ると、

大きな蛇が池の中に泳いで消えた。

車屋が家に帰宅し、懐の小判を改めると、

それは、金と銀の不思議な模様がある蛇の鱗に変わっていた。





 三宝寺池( 石神井公園 )には、石神井池と三宝寺池の2つの池があり、特に三宝寺池は心霊スポットとして名高く、周辺では水神信仰が古来より盛んで、三宝寺池には龍の姿をした(ぬし)が住むとの伝承があります。

 また、「ねりまの昔話し」に「栗山の大蛇」という練馬城址の大蛇伝説があり、

 ≪ 練馬城が落城し、荒れ果てた城山 ( 栗山 ) に大蛇が住み着くようになった。大蛇は時々、石神井川の支流の小川の谷まで下りてきた。大蛇が山を下ると小川の湿地に跡が残り、この跡が無い年は凶作になった ≫

 … というもので、水神信仰とこれらの伝承が、上記の怪談噺の下敷きになっている様な気もします。


 1993年には池で巨大ワニを見た、と一時(いっとき)ニュースになりましたが、ワニは発見されず …

 また、三宝寺池には、豊島泰経と照姫の悲劇の伝説も伝わっていて、奇談には事欠かない土地柄のようですね。

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