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異世界と魔族

 気が付くと宿屋にいた僕は、誰よりも早く目が覚めた。昨日は皆が起きてる中自分だけが寝てしまったため、少し申し訳ない。二人を起こすのも気が引けるため、日課のギルドカード確認を行う。すると、タブにNewと表示されているアビリティリストが追加されているのに気が付いた。様々な職業のタブがあり、その中の一つ、魔眼士のタブをタップすると、多数にわたるアビリティが表示された。そのほとんどが暗く表示されており、ためしにタップしてみるとエラー表示とともにアンロックのための条件が表示された。個々にチェックしていくと、魔眼使用時間、魔物討伐数、殺人数など様々条件があった。そこまで確認したところで、二人が起き始めたので確認作業は終了した。

「おはよう、雄君。昨日は夜遅くまですまなかったね。年の割にしっかりとしているから君がまだ七歳ということを忘れていたよ」

 すると着替えるよと話すため部屋からでる。最近思うのだが、自分は意外と強いのではないのだろうか。調子に乗るわけではないが聞く話によると魔力を感じることができるようになるのが人にもよるが大体六歳前後だそうだ。そこから小学校で魔法の鍛錬を行い、初級魔法が使えるようになるのが十歳あたりらしい。となると、魔法の師匠がいて、今の時点で使える自分は環境がかなり恵まれているし、同年代と比べると相当強いほうだと思うのだ。

 考えていると、二人が部屋から出てきたため朝食となる。今日の予定は、いよいよ中央国へと向かう日だとのことだった。盗賊討伐の朗報を聞いた商人たちならば続々と護衛依頼を出すだろうとの読みでまずは冒険者ギルドへ行くこととなる。実際行ってみると、その読み通り、大勢の商人らしき人々が受付に並んでおり、済んだ人から張り出されていった。その依頼もボードの前で待っていた冒険者にすぐに取られてしまう。するとレヴィアが、そこに並んでいる商人らしき人の一人に話しかけていた。

「すまない。商人殿であっているか。私は勇者レヴィア。詳しくはギルドカードで確認してくれ。そこで、どうだろう。私たちに指名依頼を出すというのは」

 これはいいのだろうか。グレーゾーンに思えるが見ないふりをしておこう。怪しげな眼でこちらを見やり。僕のことを特に見ているように思える。

「あぁ、あの子供も十分に戦力だよ。あの年齢で上級魔法を使える程に魔力が多いんだ。安心してくれ。雄君こちらの方にギルドカードを見せてくれ」

 その通りにすると、驚きの表情で満ちていた。少し気持ちがいい。ギルドカードを返してもらい、商人をジッと見つめると、頭の上に名前と商人ランクが表示された。アビリティリストでアンロックされていた観察眼の効果だろう。その他にも捕捉眼、焔の目、時読みの眼が現在使える魔眼だ。片目ずつで二つ同時発動することができる。

「で、では、そのようにしますので護衛のほど、お願いします」

 ジッと見ている僕を気味悪がったのか目を逸らし、話を終わりにして先に進んで行ってしまった。滞っていた期間がかなり空いていたのか僕たちも受ける依頼もそうだが、皆できるのであれば本日付けでの依頼だった。人国にもかなりの数の冒険者がいるらしいため問題はなさそうだろう。

 依頼を受けると、準備が出来次第東口へ集合とのことだったため、急いで準備をすませる。食料だけは盗賊から回収した分があったため、調理器具さへ準備すれば問題はなかった。武器の手入れと必需品の補充を済ませれば終わりだった。どれだけ持って行っても、ヴァーデルの空間魔法があるため楽だ。商人の荷物も運んであげればいいのではないかと提案したが、そこだけは断固として断られた。仲間以外の物を入れるのは嫌らしい。他人には厳しいようだ。

 旅程は一週間の予定だった。盗賊も殲滅したため、道中は魔物に襲われない限り楽だろう。だが、魔眼のアンロックのためや、魔物の早期発見のために捕捉眼だけは常時展開していこうと思う。

 東口へ行くと、中央国へ向かう馬車で行列ができていた。その列の中に件の商人も混ざっていたためその中に加わる。

「あぁ、みなさん。いやはやこの行列ではいつ出発できるかわかりませんな」

 ハハハと笑ってはいるが顔は困っていた。まぁ、こればかりはしょうがないだろう。東門から出ることができたのは一時間後のことだった。だが、皆行先は同じなため、そのまま一列の大所帯になっていた。まるで餌へと列をなすアリのようだった。

 何度か前方から捕捉眼に反応があったが、消失してしまっているため、前方にいる冒険者が退治してくれているのだろう。貧乏くじを引いたと思っているに違いない。自分でも前方にいたらそう思う。

「なんか。魔物は前の人が倒してくれるから楽だね」

「確かにその通りだが、油断してはいけないよ。魔物の生まれかたは知っているかな?雄君」

 そういわれると知らなかったため聞いてみると、何もないところから出現するらしい。なぜかというと、魔大陸から漏れ出ている瘴気が世界中に蔓延しており、人体には害はないがその微弱な瘴気が一定量同じ場所に滞留すると魔物が生まれてくるらしいとのことだった。

「ありがとう。油断しちゃいけないね。それじゃあ」

「あぁ、そうだ。物わかりのいい子だ」

 頭をくしゃくしゃと撫でられなされるがままにしていると、いちゃいちゃするでないとヴァーデルから注意を受けてしまった。そんなつもりはなかったが、そう見えてしまうのなら気を付けなければならない。僕じゃなくてレヴィアが。

「そんな……いつでも雄君の頭が撫でられないなんて耐えられるわけがないだろう!?」

「そこなの!?」

 思わず驚いてしまったが、そこまで好かれているのなら悪い気はしない。

 そんなことをすると真横から捕捉眼に反応があった。レヴィアの様子が鋭くなり、僕に隠れているようにと馬車から飛び出していった。

「くそっこんなときに魔族が出てくるとはな……」

 飛び出す瞬間ボソリとその言葉が聞こえてきたため、捕捉眼を発動している反対側の眼で時読みの眼を発動させる。周りの動きがゆっくりとなり、レヴィアと魔族の戦闘が視認できた。魔族は全身紫色の人型で、手には鋭い爪がある。レヴィアの神速剣に対応しており、あのレヴィアが苦戦していた。

 馬車から少し覗き込み、手をかざし無属性魔法の身体強化をレヴィアへとかける。その瞬間レヴィアの速度が上がり魔族を押し始めていたが、その魔法を掛けているいるのを僕だと思ったのかこちらへと走り出してきた。

 レヴィアが何かを叫んでいるが距離があり聞こえない。これを対処できるのは今もしかしたら自分だけなのだろうか。レヴィアが魔族の背中へと切りつけるが、傷が浅く動きが鈍ることはない。捕捉眼の発動を辞め、詠唱を開始する。魔族も人型なら呼吸をしているはずだ。

「水よ、水球となり敵を包み込め。ウォーターボール!」

 水が魔族を包み込むが、魔族はその走りの勢いで水球を走り抜けようとしていたが、時読みの眼を発動している僕には見えている。

「逃がさない!」

 水球は再び魔族を飲み込み、今度こそその勢いを止めることに成功した。苦しそうにしているが、全く死ぬ様子はない。魔族も何やら唱えており、その瞬間僕の作った水球が破裂した。

 まさか破られると思わなかった。動揺していると、後ろからレヴィアが今度こそ胸を貫き、とどめを刺すことができた。

「私を忘れるとは、愚かな魔族だ」

 息を一つ吐き、魔族の魔石を取出しこちらへ歩いてきた。するとレヴィアが僕の頬を叩いた。褒められると思っていたが、思いもしないことをされたため唖然としてしまう。

「私がなんと言ったか聞こえていたか?隠れているように言っただろう!あの魔法は確かに助かった。だが、結果魔族は私から注意を逸らし君のほうへ行ってしまった。それはこの商人を危機に晒すことと同義なんだぞ!」

 そうか、そうだった。調子に乗らないようにと思っていたが、乗ってしまっていた。僕なら倒せるなんて思っていた。なんて僕は馬鹿なのだろう。

「……ごめんなさい……」

 あまりにも普段甘やかされていて、久々に怒られてしまったため涙が出てきてしまった。止めようにもそれは止まらず、ヴァーデルが抱きしめてくれた。

「なに、レヴィアもお前のことも心配だったのだ。あまりそう泣くな。男の子だろう?」

 そういわれ、ようやく涙が止まりはじめる。赤くなった目で商人をみて、謝る。しっかりと、危機に晒してしまったことを謝った。

「いえいえ、いいんですよ。人は失敗する生き物なのですから。いやはや、言ってしまっては悪いですが、初めて見たときは気味の悪い子供だと思っていましたが、しっかりと七歳児だったんですね。確かに、ヴァーデルさんの言うとおり男の子はそう泣いてはいけませんよ!強い子に育ちませんよ?」

 おそらくこの強いとは精神的に強いという意味だろう。そこまでいわれてようやく涙はとまった。

「ありがとう。商人さん。僕、頑張るから」

 レヴィアも頭を撫でてくれて、叩いてしまったことを謝ってくれた。謝る必要はないのに。そこでようやく空気は和やかになり、外を見ると日が暮れ始めていた。ちょうどその場は広い草原だったため、各パーティは散開して、見張りもそれぞれで立てることで決定した。僕たちもテントを空間から出し設営し、休むことにした。

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