表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

異世界の護衛依頼

 前日はよく眠れなかった。なにしろ、見た目同世代の女の子と、容姿端麗な女性の間に挟まれて寝ていたのだ。熟睡しろというのも無理な話だ。

 それはそれとして、今日は護衛クエストの日、時間を見るとまだ余裕があったため、二人を起こさないようベッドから抜け出し、部屋の椅子に座りギルドカードを確認する。

 しかしまぁ、ここまで詳細に書かれたものだと思う。全ての情報がここに詰まっている。下の方へスクロールしていくと、実績の欄があるのを発見した。そこには転移者と書かれていた

 書いていたのはこれだけだった。予想はしていたが、やはりこの世界は僕が元々いた世界とは違うようだ。あの家にもう戻れないと考えると少し悲しい気持ちがある。するといつの間にやら起きていたレヴィアに後ろから抱きしめられてしまった。

「すまないな。覗き見るつもりは無かったんだが。寂しいのか?あの世界に戻れないことが」

「寂しくないといえば、嘘になるけど。今は大丈夫。レヴィアさんに、それにヴァーデルだっている。だから平気だよ」

 それは本心だった。笑顔でそう言うと、いい子だと頭をクシャクシャと撫でられた。

 するとこれもまたいつの間にやら起きていたヴァーデルがあぐらをかき、膝に肘をついてワシは仲間外れかといじけていた。

「ヴァーデルさんも、僕の家族だよ。魔法も教えて貰ったし、それにヴァーデルさんの魔法カッコイイし!」

 するとヴァーデルは目が潤んだと思うと後ろを向いてしまった。

「な、なにを言っておるか!ワシが家族など……お主らを不幸にしてしまうだけじゃ!」

 過去に何があったのだろうか。幼心に、これは聞いてはいけないと思った。

 レヴィアはその事を知っているのか神妙な面持ちで、話しかけた。

「まぁ、過去は過去だ。お前もあまり拘りすぎるな。今は私だっているから大丈夫だと思うがな」

 その場の空気が何やらあまりよろしくないことになってきたため、空気を変えるために朝食に誘うことにした。

「あ、朝ごはんそろそろじゃない?行こうよ!」

「あ、あぁそうだな。行こうか。すまないな、変な空気にしてしまって」

 ヴァーデルは思うところがあるのか無言だった。レヴィア、僕と続いてヴァーデルが部屋から出る。後ろから何やら視線を感じるが何も言えなかった。

 朝食を食べ終わる頃にはヴァーデルもレヴィアもいつもの雰囲気に戻っていた。宿屋から出て、こっそりとレヴィアに過去のことを聞いてみた。

「アイツは不老不死なんだ。それで、今まで家族や仲間を目の前で何度も見送っているんだ。だから、余程の興味が惹かれる相手でもない限りは、こういったことには干渉しようとしないんだ。だから私は内心驚いているよ。アイツが仲間になりたいなんて言い始めるなんてな」

 不老不死、人々の中にはその永遠の命を求める人も多いが、その実あまりいい事ばかりではないようだ。特に、家族を失う辛さは僕にもよく分かる。

「あぁ、私が言ったのは秘密にしておいてくれよ?怒られてしまうからな」

 わかったと言い、護衛の集合場所である北口へと向かう。北口へ着くとすでに商人は集まっており、僕達の到着を待っていた。

 すると僕を見た商人が心配そうな面持ちでレヴィアを見ていた。

「そんな目でこの子を見ないでくれ。自分の身は自分で守れる子だし、面倒は私たちが見るから大丈夫だ」

 そう言うと安心したのか馬車に続々と乗り込んでいく。最後に商会長であるユピルがレヴィアの前まで来る。

「乗り心地はあまり宜しくありませんが、よろしくお願いします。それとこの子は……その、戦えるのですか?」

「戦闘経験はないが私が鍛えているし、魔法も使える子だ。戦力にはなるよ。なに、私がもしもの時はフォローに入るから、何度も言ったが安心してくれ」

「わかりました。それでは、よろしくお願いします」

 商隊は五車からなっており、先頭にレヴィア、二番目に僕、最後尾にヴァーデルが付くことになった。魔法も近接も出来る僕が中央らしい。乗合の商人たちはどうしようもなく不安な顔をしている。僕だって実戦経験の無さは自覚しているのだから、そんな顔をしないで欲しい。レヴィアがいないから心細い。

 人国へは北へひたすら北上する。その途中に森があり、その森が問題とのことだった。稀に高ランクの魔物が現れるらしく、そのためにもAランクであるレヴィアを雇ったらしい。有名なのはレヴィアだけなため、僕やヴァーデルが乗っている馬車は不安だろう。

 そして問題の森に差し掛かり、商隊に緊迫感が漂い始めた。その時だった。

「出たぞ!魔物だ!」

 高ランクの魔物ではないが、よりにもよって前方と、僕が乗っている馬車を狙って来られてしまった。

 蜘蛛のような見た目の魔物で、後から教えて貰ったがブラッディスパイダーという魔物らしい。

 3体ほど現れて、レヴィアやヴァーデルが来るまで時間を稼がねばならなかった。

「あぁ……み、水よ、暴龍となりて敵を押し流せ!ドラゴニックウェーブ!」

 とにかく強いイメージをした。昔本で読み、憧れていたドラゴンをイメージして放つと、それはそのドラゴンそのままに顕現し、馬車を傷つけることなく、三体のブラッディスパイダーを食い破り、僕の元へと戻ってきた。その際口にはこぶし大程の石を咥えていた。それを受け取る。

「た、助けてくれてありがとう。もう戻ってもいいよ」

 自分でもこんなに強い魔法が出るとは思わなかったため、驚きながらもそのドラゴンを僕の中に戻す。すると魔力を多量に使って少しだるかった体も元に戻り、体調が元に戻った。

「きみ!凄いじゃないか!いやぁその年であんな上級魔法を使うだなんて大したものだ!」

 今までどうしてこいつがみたいな目で見ていたのに、掌を返すようにして態度が良くなった。まぁ、確かに僕でもそうなってしまうかもしれないためなんとも言えない。

「師匠がヴァーデルさんだったから良かったんだよ。魔法はイメージ。あとはその人の魔力次第でなんでも出来ると教えてくれたんだ。でも師匠の方がすごいよ!なんたって四属性の他に空間魔法だって使えるんだから!」

 そう言うと驚き、近くまで来ていたヴァーデルは聞こえたのか元の馬車まで走って逃げてしまった。

「雄君!大丈夫だったか!しかしあのドラゴンはなんだったんだ?ヴァーデルが出したのか?そうだとしたら危ない奴だな。雄君が怪我したらどうするんだ。なんにせよ怪我がなくて良かった」

 あのドラゴンは自分が水魔法で作り出したことを伝えると、大層驚いていた。

 その後は何事もなく森を抜けることが出来て、ひとまずは安心と言ったところか。

 抜けた先でも、狼型の魔物、グラスウルフが襲ってきた。自分達が出る前にレヴィアが切り刻んでしまったが。レヴィアもやはり石のようなものを魔物を解体して取得している。ブラッディスパイダーのときもそうだったが、これはなんなのだろうか。

 乗合の商人に聞いてみるとこれは魔石と言うらしい。冒険者ギルドに持っていくといい値段で売れるらしい。もうけものだ。

 その後は魔物の襲撃もなく、無事人国、エルネシアへと辿り着くことが出来た。

 人国の入国は個人個人で行うため、入口前で解散することになった。

「いやはや、ありがとうございました。特にこの子には助けられましたね。まさかブラッディスパイダーを一撃で、それに同時に三体も倒せるような魔法使いだなんて驚きでしたよ。報酬の件ですが、その働きや貴重なものを見れたこともありましたので少し上乗せしておきます。あとで冒険者ギルドで受け取ってください。それでは」

 そういい続々と入国審査をパスし、商人達は皆人国へ入国していった。

 僕達も問題なくパスし、入国すると、人国は機械が発達しているらしく、リューネとは違い僕の世界と似たような景色が広がっていた。

 ヴァーデル以外は人国は初めてだが、その肝心のヴァーデルも来たのは50年前とのことだったので、道行く人に聞きながら冒険者ギルドへ行くこととなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ