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TLS外伝 ~a crying soldier~  作者: 黒田純能介
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目覚め


壁に設けられた計器が、グリーンのゾーンを指し示している。


『……』


誰かの話し声が聞こえる。


『………』


声がひどく遠い。


良く見れば、目の前にガラスの壁があった。


そっと、手を触れる。




―――冷たい。




それだけ。周りも冷たいガラスに囲われ、自分が閉じ込められている事に気付く。




―――不安。




そんな言葉が過ぎる。


ドクン


心臓が一つ、大きく脈打つ。


途端に壁の計器が赤く点灯する。


グリーンからイエロー、そしてレッド。


ガラスの外に居る人物達が慌ただしく動き始める。



そしてワタシは左手を振り上げ―――




「うわぁぁぁぁあ!」


自分の叫び声で跳ね起きる。


「ハァ、ハァッ…」


両手で顔を覆う。


「…今のは…。夢…?」


そう呟いたが、そのリアルさは気味の悪い物だった。


コンコンコン。


扉がノックされる。


「…どうぞ」


南条は顔を上げると、扉の向こうにいる人物に声を掛ける。


「失礼します」


現れたのは副官だった。一礼すると再び口を開く。


「叫び声が聞こえたもので。慌てて参りました」


その口調は実にのんびりしたものだったが。


「…大丈夫だ。問題無い」


そこまで言い、自分の体を見回す。


「…!」


南条は一糸纏わぬ姿でベッドに居た。


ガバッッ!


慌ててベッドの中に潜り込む。


「…黒田…。貴様ワザとか?」


「いえいえ。今私も気付きました」


黒田(クロダ) 征流(セイリュウ)は笑顔のまま後ろを向く。


「良いから早く着替えを持ってこい…っ」


焦りを隠しながら指示を出す。


「畏まりました」


やや間延びした声を残し、黒田が姿を消した。


ふと、周囲を見回す。…見覚えのある、自分の部屋。


「………」


ふと思い返す。




―――確か…。陣から黒田に追撃指令を出して…。その後刺客に襲われたのだったな…。




顎に手をやる。




―――そうだ。確かあの時…。




コンコンコン。


再びのノックに、思考を中断する。


「失礼します…」


今度は黒田ではなく、女性兵だった。



…着替えを受け取ると、早々に着替える。紅を基調としたスーツだ。


「…うむ、ご苦労」


着替えを補助した女性兵に労いの言葉を掛け、黒田を呼ぶ様に指示する。


女性兵が去ると、テーブルの上にあった手帳を取り上げる。




―――何時まで続くのか…。この闘いは…。




「南条様?」


不意に声を掛けられ、やや狼狽する。振り向くと黒田の姿があった。


「急に出てくるな。ノックはしたのか?」


「えぇ。返事が無かったもので」


黒田は微笑むと一礼した。



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「…あの後、追撃部隊からは全員自害していたとの報告がありました。手掛かりも特に得られず。ただ疲弊しただけに終わりました」


「そうか…」


パタンと手帳を閉じる。


「それと…」


黒田が付け加える。


「南条様を襲った刺客ですが、やはり同様の手の者かと」


「だろうな。戦場では常套手段だ」


ふと窓の外を見やる。外界ではまた雪が降り始めていた。


「やはり護衛を付けた方が宜しいのでは?」


「要らん」


ピシャリと突っぱねる。


寧ろ足手纏いだ、と付け加えると、窓に近寄る。


「そうですか…。あ」


「何だ」


途端に黒田が申し訳無さそうな表情になる。


「その…申し上げ難いのですが…」


無言で先を促す。


「…敷島様がまた行方不明になりました」


一瞬、南条が愁眉を寄せる。


「全く…。アイツは何を考えて居るのだ…。悪いが捜索を頼む」


「既に手配済みです」


「そうか。済まないな」


間髪入れずに答えた黒田に、礼の言葉を寄越す。


「ご報告は以上です。それでは、私も執務がありますので」


失礼します、とだけ言い残し黒田が退室する。



「…フゥ…アイツにも困った物だ」


自覚が足らん、と零すと手帳を小脇に抱えその場を後にした。



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