表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TLS外伝 ~a crying soldier~  作者: 黒田純能介
48/50

喪われるもの、在りつづけるもの


…紛争は終わった。あまりにも犠牲が多すぎる紛争だった。



俺は大将を倒した後、ユーコが呼び寄せた味方部隊の連中に救助された。俺のケガを見て慌てふためいてたけど、どうせすぐ治っちまうんだろうな…。



ユーコはというと、俺が手当てを受け始めるのを見るや否や、真っ先にレイの捜索に加わった。


でも…まだ見つかっていない。



レイと同行した残りの部隊は全滅だった。その内、加藤と上原の部隊はほぼ跡形も無く吹き飛んでいたらしい。嶋田達に関しては、皆一様に射殺されていた。



…俺が無理にでも付いて行ってれば、皆死ななかったかもしれない…。クソッ!



潜入した施設の敵兵に関しては、大将が倒れたのがすぐに広まり、あっさりと全員降伏。制圧は容易だったとか。


奇十郎のオッサンの姿は見当たらなかったみたいだけど…。またひょっこり出てきそうな気がする。



黒田達の方は、ほぼ無傷だった。人員的にも、施設的にも無事に済んだ。そこだけが唯一の救いか…。



そして、レイは…。




皆の懸命な捜索にもかかわらず、発見されなかった。三日が過ぎ、五日経ち、とうとう一週間が経過した。



それでも手掛かりすら、見つける事ができなかった。



--------------------------------------------------------------------------------



「どうしてっ!何で見付けられないんやッ!」


噛みつかんばかりの勢いで、ユーコがダイバーの一人に詰め寄っている。


「おい、ユーコっ!」


俺がそんなユーコをたしなめようと手を伸ばす。


バシッッ。


「邪魔すんなや!もうええ!ウチが自分で探すわ!」


俺の手を払いのけそう言って、装備も無し、着の身着のまま濁流に飛び込もうとする。


「おっ、おいっ!止めろって!」


俺はそんなユーコを羽交い締めにして止めた。


「離せッ!離せぇぇ!」


必死にもがくが、力を緩める訳にはいかない。


「嫌やッ!ねぇちゃんッ!ねぇちゃんッッ…!」


徐々にもがく力が弱くなっていく。


「ねぇ…ちゃん…っ……うあぁぁぁぁ…」


もがく声は、いつの間にか嗚咽に変わっていた。



…そっと、腕を降ろす。


「うあぁぁぁぁぁ…」


へたり込み泣き崩れるユーコに、俺とダイバーはただどうする事もできずに佇んでいた。




…そうして、一カ月が過ぎ、捜索は打ち切られた。



--------------------------------------------------------------------------------



レイの捜索が打ち切られて更にひと月。


俺の所属していた軍は本部からの要請で解体が決まっていた。


捕虜に関しては、警護志願者と共に本州各地に護送。残った仲間も一部を残して各地に散っていった。


これからは本部の方針に合わせ、ごく小規模の小隊で区域ごとに治安維持に努めるとか。でもまだ落ち着いていないらしく、誰がどこに行くってのも決まってないみたいだけど。



俺はここに残る事にした。


…何だか、離れちゃいけない気がして。


…いつか、レイが帰ってくる。そんな気がした。



…それに、ユーコの事もあった。


捜索が打ち切られてからは、ふさぎ込む毎日だった。ろくに食事も取らず…ってのは聞いた事あったけど、正にその通りだった。


そんな、日に日にやつれていくユーコの事も放って置けなかった。


今はカウンセリングを受けながら、俺と一緒に暮らしている。ま、妹みたいなもんだし、俺が面倒見たって良いだろ…。



征流は組織を抜けた。


『私は各地を行脚します』とか言い出してそのままどっか行っちまった。ケガが治るまで待てよって言ったのに、振り切るみたいに。


やっぱり、アイツはアイツでショックだったんだろうな…。


面と向かっては俺に感謝してたけど、本当は怒ってたと思う。


だから、いたたまれなくて姿をくらましたんじゃないか。そう思ってる。



…護ろうと思っていても、次々と手から零れていく。


俺はみんなが好きだ。


あの二人を見て、やっと居場所を見つけたんだ。


だったらせめて、この手に残ったものだけでも、何とかして護っていこうと。


もう、間違いは起こさない為に。


もう、悲しみを引き起こさない為に。



俺は、そう決めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ