喪われるもの、在りつづけるもの
…紛争は終わった。あまりにも犠牲が多すぎる紛争だった。
俺は大将を倒した後、ユーコが呼び寄せた味方部隊の連中に救助された。俺のケガを見て慌てふためいてたけど、どうせすぐ治っちまうんだろうな…。
ユーコはというと、俺が手当てを受け始めるのを見るや否や、真っ先にレイの捜索に加わった。
でも…まだ見つかっていない。
レイと同行した残りの部隊は全滅だった。その内、加藤と上原の部隊はほぼ跡形も無く吹き飛んでいたらしい。嶋田達に関しては、皆一様に射殺されていた。
…俺が無理にでも付いて行ってれば、皆死ななかったかもしれない…。クソッ!
潜入した施設の敵兵に関しては、大将が倒れたのがすぐに広まり、あっさりと全員降伏。制圧は容易だったとか。
奇十郎のオッサンの姿は見当たらなかったみたいだけど…。またひょっこり出てきそうな気がする。
黒田達の方は、ほぼ無傷だった。人員的にも、施設的にも無事に済んだ。そこだけが唯一の救いか…。
そして、レイは…。
皆の懸命な捜索にもかかわらず、発見されなかった。三日が過ぎ、五日経ち、とうとう一週間が経過した。
それでも手掛かりすら、見つける事ができなかった。
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「どうしてっ!何で見付けられないんやッ!」
噛みつかんばかりの勢いで、ユーコがダイバーの一人に詰め寄っている。
「おい、ユーコっ!」
俺がそんなユーコをたしなめようと手を伸ばす。
バシッッ。
「邪魔すんなや!もうええ!ウチが自分で探すわ!」
俺の手を払いのけそう言って、装備も無し、着の身着のまま濁流に飛び込もうとする。
「おっ、おいっ!止めろって!」
俺はそんなユーコを羽交い締めにして止めた。
「離せッ!離せぇぇ!」
必死にもがくが、力を緩める訳にはいかない。
「嫌やッ!ねぇちゃんッ!ねぇちゃんッッ…!」
徐々にもがく力が弱くなっていく。
「ねぇ…ちゃん…っ……うあぁぁぁぁ…」
もがく声は、いつの間にか嗚咽に変わっていた。
…そっと、腕を降ろす。
「うあぁぁぁぁぁ…」
へたり込み泣き崩れるユーコに、俺とダイバーはただどうする事もできずに佇んでいた。
…そうして、一カ月が過ぎ、捜索は打ち切られた。
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レイの捜索が打ち切られて更にひと月。
俺の所属していた軍は本部からの要請で解体が決まっていた。
捕虜に関しては、警護志願者と共に本州各地に護送。残った仲間も一部を残して各地に散っていった。
これからは本部の方針に合わせ、ごく小規模の小隊で区域ごとに治安維持に努めるとか。でもまだ落ち着いていないらしく、誰がどこに行くってのも決まってないみたいだけど。
俺はここに残る事にした。
…何だか、離れちゃいけない気がして。
…いつか、レイが帰ってくる。そんな気がした。
…それに、ユーコの事もあった。
捜索が打ち切られてからは、ふさぎ込む毎日だった。ろくに食事も取らず…ってのは聞いた事あったけど、正にその通りだった。
そんな、日に日にやつれていくユーコの事も放って置けなかった。
今はカウンセリングを受けながら、俺と一緒に暮らしている。ま、妹みたいなもんだし、俺が面倒見たって良いだろ…。
征流は組織を抜けた。
『私は各地を行脚します』とか言い出してそのままどっか行っちまった。ケガが治るまで待てよって言ったのに、振り切るみたいに。
やっぱり、アイツはアイツでショックだったんだろうな…。
面と向かっては俺に感謝してたけど、本当は怒ってたと思う。
だから、いたたまれなくて姿をくらましたんじゃないか。そう思ってる。
…護ろうと思っていても、次々と手から零れていく。
俺はみんなが好きだ。
あの二人を見て、やっと居場所を見つけたんだ。
だったらせめて、この手に残ったものだけでも、何とかして護っていこうと。
もう、間違いは起こさない為に。
もう、悲しみを引き起こさない為に。
俺は、そう決めた。




