兵士として
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…目の前に、大剣を背負う男。
―――良いか?叢雲。
男がその背を向けたまま語り掛ける。
―――俺達は普通の人間とは違う。
男は何者かと対峙している。自分は怪我をしたのか、その場から動く事ができずその先に何が居るのか分からなかった。
―――だが、俺達の力は、無闇に遣うな。特にお前は…。
カッッッ!
不意に閃光が走る。
眩さに目をつぶり、数秒。
再び目を開けると、変わらず男はそこに居た。
唯一違ったのは、その右手。それは力強く輝いていた。
―――俺はこれしか遣えないが…。
ググググ…。
男が前方に対し、右手を引き絞る。
グオッッ!
直後、砲丸投げの要領で右手を突き出した。
…一瞬の間。そして…。
ドガァァァアンッッ!!
激しい爆風と閃光。
辺りに対峙していたと思われる者達の悲鳴が響き渡る。
―――叢雲。お前なら…。
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バヂヂヂヂヂッッ!!
「…ッ!?」
現実に引き戻される。いまだ雷撃は止まっていなかった。
―――そうか…。
「ありがとう」
自然と唇が動いた。
両手を握り締める。
「…うおおおおおッッッ!!」
バヂ、バヂヂヂヂヂッッ!!
電撃が走るのも構わず立ち上がった。
「何!?」
蒼琉が驚愕の声を上げる。
…ブブ…ブブブブッ…!
走り回る龍の音が不意に変わる。
苦しみにのた打ち回る様に暴れ回る。
「ハァッ!!」
バシュンッッ!!
気合と共に、龍が四散した。
「…テメェ」
初めて、蒼琉が焦りの色を見せる。
チャキッ!
即座に村正の持ち手を切り替え構える。
「…アンタ、そんな危ない物どこで見つけた?」
須藤が不意に問う。
「あぁ?テメェに答える義理はねぇな」
つっけんどんな物言いを早々に受け流す。
「…まぁいいや。今はアンタをぶっ斃せれば」
ガッッッッ!!
床に転がった大剣の先を踏み付け跳ね上げる。
パシッッ!
起き上がる柄を受け止め、
ガシャンッッ!
両手に構えた。
「言っとくけど、アンタの電撃はもう効かないぜ」
正面から蒼琉の目を見据え、ハッキリと宣言する。
「あァ?…言ってくれるじゃねーか?」
こめかみに筋が浮く。
ヒュヒュンッッ!
だいぶ放電したのか、刀身の輝きは僅かな物になっている。しかしそれで妖刀の切れ味が落ちる訳ではない。
空気の摩擦を斬り、八双に構えた。
「はぁぁぁッ!」
仕掛けたのは須藤だった。
ブオンッ!
横薙に大剣を払う!
「でやあっ!」
ガギギンッ!ギィンッ!
下段からの斬り上げで弾き返し、袈裟斬りに繋げる。
「ハアッ!」
ヒュンッ!
「フッ!」
切っ先との距離を見極め、紙一重で上体を逸らす。
「…ッラアッ!!」
腹筋の瞬発力を最大限利用し、上段からの大振り。
「…甘えっ!」
トンッッ!
後方に飛び回避。
ズガンッッッ!!
目標を見失った大剣が床を抉る。
バッッ!
砕け散る床石が舞うや否や、須藤が後を追う。
「どりゃぁぁあ!」
ブオンッ!
相手の体勢が整わぬ内に大剣を振り下ろす。
ガギギィッ!
しかしそれは妖刀に阻まれる。
「まだ甘ぇっ!」
ギィンッ!
火花が散り、再び妖刀に光が集まっていく。
ヒュンッ!
先程よりも速度を増した斬撃!
ビシュッッ!
「くっ!」
僅かに脇腹を掠め、血が零れる。
「…んのっ!」
無理矢理大剣の軌道を変え、逆袈裟に斬りかかる。
ビシュッ!
「ぐっ…!」
紙一重でかわしきれず、頬を掠めた。
パラッ…。
左目の眼帯紐が切れ、落ちる。
「…ヘッ」
一旦距離を取ると、微笑を浮かべた。
「………」
ガシャンッ。
須藤は右手を下ろし、真っ直ぐに相手を見つめる。
「最高だ」
ぽつりと蒼琉が漏らす。
「お前みたいなヤツは、今まで居なかった」
チャキッ。
妖刀を構える。
バチ、バチチッ。
小さな龍が、再び絡み付き始めた。
「もっと早く、お前と闘いたかったぜ…」
右目を細める。つられて、今はもう無い左目が傷痕と共に歪む。
「アンタは!」
ガシャンッ!
声に怒気を含み、大剣を構える。
「ただ闘うだけの為にこんな戦争を始めたのかよッ!」
ニィィ…。
蒼琉が唇を歪める。
「…さあな」
ザッ…。
軸足を広げ、いつでも駆けられるよう体勢を整える。
「知りたきゃ、剣で訊きなッ!」
バヂ、バヂヂヂッッ!
龍が次第に勢いを増す。
「…大バカ野郎…ッ」
ガシャンッ!
大剣を構え直す。




