妖刀
ガァァンッ!!
金属が削り合いから解放される。
フォンッ。
一度刀身を払う。
「面白れぇ。ここまでたぁな」
スッ。
より一層輝きが強くなった切っ先を向ける。
「お前だったら、コイツの真価を見せて良いかも知れねぇ」
パチッ。
一瞬、蒼い光が村正に立ち上る。
バチチッ。
…目の錯覚では無い。刀身に走る龍。雷電。
「………」
見えていないのかお構い無しなのか。
ガシャンッ!
大剣を構え直す。
「…ハッ。往くぜ」
カチャ。
再び八双に構える。
「伊達、蒼琉。参るッ!」
タンッッ!
一足であっという間に距離が縮まる。
ブオンッ!
振り下ろされる刀を受けようと大剣を向け―――
バヂヂヂヂヂッッ!!
「!!!?」
降りかかる刃を受け止めた直後、電流が躰中を駆け巡った。
バッッ!
思わず膝を着きそうになるのを堪え、後方へと飛び後退る。
「…ハッ、流石に痺れたみたいだな?」
ブオオンッ。
いまだ龍が絡み付く妖刀を払う。
「フゥゥゥ…」
突然の事に驚いたのか、焦りの様な表情を浮かべ唸る。
「コレで終わりじゃねぇぜ」
言うが早いか、再び突進する!
ブオヒュンッ!
右からの斬り上げを紙一重で回避。しかし怒涛の勢いは止まらないッ!
ブオオンッ!ヒュヒュヒュンッ!
からくも避けきる。
「どうした!さっきまでの勢いが無くなってるぜ!?」
「グウウウ…」
勝ち誇る蒼琉に対し、眉間に皺を更に寄せ唸る。
ズダンッ!
「オオオオオアアアッッッッ!!!」
それを挑発と取ったのか、雄叫びを上げながら大剣で薙払おうと飛び掛かるッ!
ゴオオオッ!!
「…ハッ」
ガギンッ!
金属音も束の間。
バヂヂヂヂヂヂッ!!
「グゥオアアアアアッッ!!!」
先の激突よりも激しい電流が体内を蹂躙する。
ズシャッ。
堪らず膝を着く。
「ヘッ。まあこんなもんか」
蒼琉がクルリと背を向ける。
「そろそろ、止めを刺してやるよ」
次第に強くなる雨の中、激しく床を叩く雨音にもその声は良く通っていた。
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―――っ…。
ぼんやりとだが、刀を携えた男が視界に映る。
―――ヤ、ヤバい…。
雷撃のショックか、須藤は理性を取り戻しつつあった。
…相対する男との距離はあったが、本能的に危険な攻撃が来ると直感していた。
まだ躰の自由は利かない。
南条が転落してからの記憶はほとんど無かったが、大体の状況は掴めていた。
「コイツは今までとは比べ物にならねぇぜ?」
蒼琉が村正を逆手に持つ。
バヂ、バヂヂッッ。
刀身に纏わり付く龍は、更に勢いを増しその場から離れようと暴れていた。
…その時点で、須藤は何としてでもそこから逃げるべきだった。
―――!!
下は降り続く雨で、水溜まりが出来ていた。謀られたか、或いは偶然か。高低差で須藤の側に雨水が流れ込んでいたのだった。
「ここまでよくやった。敬意を表して、雷葬にしてやるぜっ!!」
ズダンッ!!!
水溜まりに村正を突き立てる!
ババババババババババババババババババババヂヂヂヂヂヂィィィィッッッ!!!!
「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?」
蒼い龍が、まさに水を得た魚の如く縦横無尽に駆け巡る。その雷電は須藤の全身をも蹂躙し焼き尽くそうと暴れ狂う。
「黒焦げになりなぁ!ハハハハッ!」
龍を降ろす蒼琉が嗤う。
―――し、死ぬ…。
須藤の脳裏をよぎる。
…再び自らを獣にやつせば、この状況を突破できるかもしれない。そう考えた。
だが、そうしなかった。
―――ただの暴風じゃ、コイツは倒せない…。
バヂヂヂヂヂヂヂィィィィッッッ!!
その間にも電撃が体内を食い荒らす。
―――レイ…俺は…。
須藤は見ていた。南条が転落する直前の表情を。
………哀しげな、それでいて安堵したその顔を。
グ、グググググ…。
跪いたその躰を、起こす。
走る龍がより一層激しく暴れる。
「…!」
蒼琉が残る右目を見開く。
―――何てヤツだ…。ますます人間離れしてやがる…。
思いとは裏腹に唇の端が吊り上がる。
ググ、ググググ…。
必死に躰を起こそうともがく。だが、立ち上がる事はできなかった。
―――く…。レイ…ッ…力を貸してくれ…!
その時。
―――――――!
脳裏にフラッシュバックする光景があった。




