狂人対狂戦士
サァァァァ…。
そこは屋外だった。何時の間にか降り始めていた雨が、屋上の床面と傷だらけの躰を叩く。
…数メートル先に立つ人影。こちらの気配に振り向く。
「ハッ。来たな」
蒼琉は雨に濡れるのも構わず、現れた相手を凝視する。
…目の前にいる男。姿形は人であったが、その内側からは異常な存在感が漂っていた。
殺気立ち、理性が飛んでいる眼光。
それはギラギラと輝き、それを向けられただけでもズタズタに斬り裂かれてしまいそうに思えた。
―――タダの人間じゃねぇな…。
肌が粟立つ。少しの間の後それに気付き、唇を歪めた。
―――コイツぁ楽しめそうだ。
腰の刀、村正に手を掛ける。
「おい、お前…、須藤と言ったか?」
蒼琉の問いには答えず、ひたすら殺気を発する。
「…まぁいいか。この際誰が何なのかってのはどうでもいい」
スラリ…。
村正を抜く。薄暗い天候の中、それはやけに青白く輝いていた。
「………」
ガシャンッ。
呼応するように、背中の大剣を手に取る。
「語るには及ばねぇ。剣で十分だ」
チャキッ。
八双に構える。
ガシャ…ッ。
それに対し、正眼の構えをとった。
カッ!ゴォォォォン…!
上空には黒雲が横たわり、雷光と雷鳴が荒れ狂い始めた。
「さぁ、楽しい時間にしようぜぇ!パーティーのメインディッシュはこれからだ!」
心底楽しそうな笑みを浮かべ、高らかにそう宣言する。
すぅぅぅ…。
大きく呼気を起こす。
そして、咆哮と共に地を蹴った。
「オオオオオッッッッ!!!」
ブンッッ!!
小枝の様な細腕で、自らの身長程もある幅広の大剣を相手に向け振り下ろすッ!
「ハァッ!」
ガギィィンッッッ!!
その剛剣を、青白い刃で弾き返す。
「ヒュウ。手が痺れるぜ!」
益々唇の端を吊り上げ、攻撃の体勢に入る。
「そぉりゃあッ!」
ヒュンッ!
下段からの斬り上げ。まだ体勢が整わない内に襲い掛かる!
パッッッ!
右手側に流された大剣から左手を離し、躰を捻り紙一重で斬撃を回避する。
ギリギリギリギリ…ッ!
回避しながら、右手に残った大剣を握り潰しそうな程力を込める。
「オアアアアッッッ!」
限界まで高めた瞬発力で、左へと薙払うッ!
ゴォォビュンッッ!!
「セイッ!」
スタンッ!
すぐさま反応し直上へと逃れる。
「避けられるかぁっ!」
空中で上段に構えた村正を、相手に向け振り下ろすッ!
バシュンッッ!
超高速の斬撃が降る。それは同時に降る雨を斬り裂き更に青白く輝く。
ッガギィィィィイッッ!!
大剣から火花が飛び四散する。瞬時に斬り返すッ!
「オオオオオッッッッ!!!!」
ガギギギギギギギャッギャギャギャッ!!!
大剣の剛刃が村正の刀身を削る。
「うお…ッ!」
ブオンッ!!
受け止めた村正ごと十メートル以上吹き飛ばされる。
―――コレだ!俺の求めていたもの!
「ッハアッ!」
スタンッ!
事も無げに着地すると、全力で目の前の狂戦士へと駆けるッ!
「ウオオオオオッッ!!」
ヒュンッ!
あっという間に距離が詰まり、再び斬撃が迫るッ!
ガガギンッ!ギィンッ!ガァンッッ!
大剣と妖刀の応酬。
薙払いを叩き落とし唐竹割りを払いいなし突きを弾き返し双方が身を削る。
ガンッッ!ガギギギギギギギッ!
互いの獲物が鎬を削る。
「グ、ウウウウウウ…」
「く、ぬううううう…」
片や力、片や技量により実力は拮抗しているように見えた。
互いに一撃入れば、その瞬間決する。だが双方決め手を欠いていた。




