決着
「オオオオオオッッッッッ!」
「ラアアアアアッッッッッ!」
パパパパパパパパパパシッッッッ!!
奇十郎の嵐の様な突きを、須藤が全て掌底でいなす。
「オアァッ!」
「ラアァッ!」
ドガァンッ!
互いのフィニッシュブロウが激突。その勢いで双方が後退する。
「ヌウッ!…やりおるわ!」
「ヘヘッ!…オッサンも殴り合いが向いてるんじゃない?」
須藤と奇十郎。拳のぶつかり合いは続いていた。
…既に双方武器は使わず、ただ己の肉体のみを行使した闘いを繰り広げていた。
「さあて、もう終わりにしようぜ!」
ボキボキと指を鳴らしながら須藤が再び構えをとる。
「よく言いおるわ!貴様の敗北で幕を引いてやろう!」
次いで奇十郎も構えた。
…再び音が消える。
………ダンッッ!
「オラァァァァッ!」
「シェェェェイッ!」
同時に突撃し、拳と手刀が交錯する!
「ヌウンッ!」
「クッッ!」
お互い半身を引き、攻撃が躰を掠める。
須藤の拳は奇十郎の頬に赤い線を作り、奇十郎の手刀は須藤の左肩を切り裂く。
パラッ…。
「!」
あまりにも鋭い一撃は、その肩に巻かれた包帯を切断していた。
それを見た瞬間、一瞬奇十郎の動きが止まる。
「オラァァァァッ!」
ガゴンッッッ!!
間合いはゼロ。両手は出ない。蹴りなどもってのほか。
と、考える前に須藤はヘッドバッドを繰り出していた。
「…っぐ!?むお…」
たまらず奇十郎が数歩後退する。
ヒュンッ。
…最初は、羽が舞う様に。
ズンッッ!
二歩目は、魔神が地に降り立つ様に。
「…ハッ!?」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
千を超える拳の嵐が奇十郎を襲う!
「ぐうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!!?」
全身を駆け巡る衝撃。成す術も無く、ダメージが蓄積されていく。
「ッッッッオラアッ!!」
ドゴンッッッ!!!
振り上げるボディブロウ。いとも簡単に、舞い上げられた木の葉の様に奇十郎の身が宙を舞う。
「ごふぁ…っ」
奇十郎が血を吹く。
ズシャアッ。
そして、無様に床へと叩き付けられた。
「………」
しばらく須藤は構えを解かなかった。
「ぐ…ガハッ!?ゲホッ!!」
一瞬意識の飛んでいた奇十郎が、込み上げるものにむせ返る。
「…オッサンも頑丈だな」
やっと構えを解いた須藤が歩み寄る。
「ゲホッ…。ま、まさか、貴様…ッ…。お陰で、不覚を取ったわ…」
口元から鮮血を零しながら奇十郎が苦しげに呟く。
「わりぃね。流石に今のオッサン相手に、手加減は出来なかったよ」
無表情に奇十郎を見下ろす。
「…フ、フ…。道理で勝てぬ訳だ…」
ガキッ。ガシャンッ。
…スタスタスタ。
大剣を床から抜き、須藤が倒れる奇十郎の脇を抜けていく。
「そのままジッとしてりゃ、じき起き上がれるハズさ」
歩みを止める事無く語る。
「…見事だ。お前ならば、或いは…」
聞こえるか聞こえないかの言葉を吐く。
「………」
反応は見せず、須藤は先の闇へと溶け込んでいった。
―――勝てぬ訳だ。儂は人で無い者を相手にしておったのだからな…。
奇十郎は独り、微笑を浮かべたのだった。
スタスタスタ。
左手を意識しながら早足で先に進む。
ゴソゴソ…。
ふと気が付き、懐に手を入れた。
…取り出したのは包帯。
左肩に目をやる。
…そこは既に、先日受けた筈の傷は無かった。只の傷痕一つも、である。
「………」
須藤は苦笑いを浮かべると、片手で器用に包帯を巻き始める。
シュルルッ…。キュッ。
ものの数秒で巻き終わると、前方に顔を向ける。
―――遅くなっちまった…。レイ、ユーコ、早まるなよ…。
タンッ。
軽やかに床を蹴り、須藤は駆け出していった。




