管制室制圧戦
…須藤達が到着する少し前。
「チィッ!」
タパパパパ!
手にしたサブマシンガンが火を噴く。
「…」
ドン!ドンッ!
拳銃を合間に相手方へと撃ち込み、リロードの援護をする。
ガシャコッ!
「この…ッ!」
タパパパパパパパパパ!!
六十発ある弾倉が、約二秒で空になる。
南条が加藤から受け取ったサブマシンガン、『M10』は連射力に優れているが、その特性により命中率が大幅に下がってしまうという欠点があった。
「ええいっ」
直ぐさま後退する。
現在南条達は管制室手前で敵兵士達と交戦状態にあった。
幸い、障害物の多い場所であった為、出会い頭に銃撃される事は無かった。しかし、武装の差に不利があった。南条達は少ない火力で押し返されるのを辛うじて踏み止まっていた。
「…総隊長」
拳銃を発砲しながら嶋田が声を掛ける。
「どうしたっ?弾切れか?」
弾倉を交換しながら南条が返す。
「違う。このままでは負ける」
「…分かっている」
物陰から半身を翻すと、敵兵に弾丸の雨を浴びせた。
…ようやく命中したのか、敵兵二人が悲鳴を上げうずくまる。
ズガガガガッ!
勿論、相手も撃たれるだけではなく撃ち返す。
ガガガガンッ!チュイィン!
「くっ!」
即座に反応し、物陰に身を隠す。
「…総隊長、援護を」
弾倉を入れ替えながら嶋田が言う。
「…どうする気だ」
敵兵の様子を窺いながら問い掛けた。
「…私の隊全員で突入する。総隊長は我々の成否に関わらず後退してくれ」
「バカな。死ぬぞ」
「…構わん」
ガシャッ。
手にした拳銃をスライドさせ、銃身に弾を送り込む。
「待て…」
「…アンタは生きて、この地を平定しろ」
南条を遮りそこまで言うと、側で応戦する部下達に目配せをする。
ザザッ。
直ぐさま三人の部下が嶋田の元へと集合した。
「…行くぞ。総隊長、後は頼んだ」
「嶋田ッ!」
制止の声も聞かず、嶋田達が立ち上がる。部下達が前に立ち、嶋田が最後方の格好となった。
ザザザザッ!
直ぐに駆け出す。
「止めろぉッッッ!」
しかし南条の制止など耳に入らないのか、嶋田達の足は止まらなかった。
ズガガガガッ!
それを見た敵兵が、一斉に射撃を始める。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
嶋田の部下達が銃弾に晒されながらも、拳銃で応戦しながら突き進む。
「止せぇぇぇッ!」
少しでも敵兵の攻撃を止めようと、サブマシンガンを乱射する。
タパパパパッ!チュイィン!
数人の敵兵が後退するが、攻撃は止まらない。
ズガガガガッ!
嶋田の部下達を銃弾が襲う。
ブシュッ!ドシュッ!
肉を抉り、骨を穿ち、血液を噴出させる。
だが四人の歩みは止まらない。
「早く行けッ!」
嶋田がチラと南条を見ると、初めて怒鳴った。
…後にも先にもこれが最後の怒声だった。
その気迫に圧されたのか、それともその心中を察してか、苦い表情を浮かべながら南条がその場に背を向ける。
「………」
南条が走り去るのを見届け、再び歩みを進める。
ズガガガガッ!
ドンッドンッドンッ!
嶋田の部下が銃弾を受け、一人また一人と倒れていく。
ドンッ!ドンッ!!
嶋田と残った部下が更に応戦し、とうとう管制室の扉へと辿り着く。
ズガガガガッ!
バスッッッ!
最後に残った部下が、顔面から鮮血を噴き出し絶命する。
「ぐぅっ…!」
嶋田も無事では済まなかった。
横薙に放たれた弾丸は、嶋田の右胸から肩口までを一直線に抉っていた。
ガチャッッ!ガタンッッ!
鉄扉を強引に開け、ロックを掛ける。
ドンドンドンッ!
外から乱暴に叩く音が聞こえるが相手にしない。
「…ハァ、ハァ…」
少しでも気を抜くと意識が飛びそうな躰に鞭をうち、奥にあるコンソールパネルを目指す。
ザッ、ザッ…。
おぼつかない脚を踏み出す毎に、血液が床へと零れ落ちていく。
ガタッッ。
短い距離をようやく辿り着くと、崩れる様に椅子へともたれかかる。
カタ…、カタカタカタ。
休む間も無く、まだ動く左手でパネルを操作する。
眼前のモニターに表示が浮かぶ。
『全セキュリティ解除』
『全階層ロック解除』
『非常用脱出路解放』
『管制室、全機能停止します』
ヒュゥゥゥン…。
システムがダウンしたのを確認すると、ようやく嶋田が手を止めた。
「…俺が出来るのはここまでだ…」
ゆっくりとコンソールから手を下ろす。
「…総隊長、アンタが拾ってくれた命も、ここまで、だ」
…それきり、機能を停止した管制室に動くものは無くなった。




