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TLS外伝 ~a crying soldier~  作者: 黒田純能介
30/50

作戦開始


タタタタタ…。


十三人の影が、薄暗い廊下を駆けていく。


先頭には南条と加藤。続いて二番隊隊員、五番隊、九番隊だ。



『…作戦はこうだ。先ず全員で行軍を開始、敵拠点内部の管制室を発見次第占拠。その後九番隊によるシステムの掌握。更にその間、五番隊は破壊活動の為各所に爆薬を設置。残りの私と二番隊は囮役として派手に暴れ回る』


『おっしゃあ!腕が鳴るぜぇ!』


加藤が大きく腕を回し、


『アンタ、状況もわきまえなさいよ?』


仲村がそれを窘める。


『OK~』


上原が親指を立て、


『了解した…』


嶋田がこくりと頷く。



タタタタタ…。




―――早々に管制室を見つけねば…。




南条は先程のやりとりを思い返しながら思考する。




―――あの小屋は山の中腹に据えられていた。ということは山自体が敵施設とみて、今は中層階だろうか。




タタタタタ…ザザッ。


「階段か…」


足を止め、不意に現れた上下に繋がる階段を睨む。


「二手に別れますかい?」


加藤の提案にしばし逡巡し、首を横に振った。


「いや、それは危険だ。五番隊、九番隊の火力が低い。敵と遭遇した場合捌ききれん」


加藤達二番隊は皆一様に肩から下げたマシンガンを携帯していたが、残りの二隊は必要装備以外近接戦装備と拳銃程度しか所持していなかった。


「了解ィ!じゃあ俺達がガッチリガードですねぃ?」


「うむ…。では下に行こう。ここまでは何事も無かったが、ここからは正念場だ」


「おうっ!」


「はい~」


「了解…」


三者三様の返事を聞くと、南条は階段を下り始める。




―――出来れば管制室までは敵と遭遇したくないものだ…。




だが、そんな南条の期待は裏切られる事となる。



--------------------------------------------------------------------------------



タタッ。一層階段を降りきる。


周囲を見回すと、やや広めのホールである事が窺えた。左右に通路。


パチ、パチ、パチ。


「!」


十三人が体を強ばらせる。


「良く来たな。歓迎するぜ」


ホールの奥、柱の影から人影が拍手しながら現れた。


「…早々に登場か」


南条が呟く。


「待ってたぜ、南条。最上級のもてなしをしてやるよ」


「蒼琉…ッ!」


シャラッ。


レイピアを抜く。


「おっと」


現れた男、伊達 蒼琉は蒼の羽織袴を身に纏っていた。


…その袖からバッ、と片手を突き出す。


「まぁだメインディッシュには早いぜ?」


パチンッッ!


蒼琉が指を鳴らすと、あちらこちらの物陰から武装した兵士達が現れた。


「…ッ」


「ゲームは楽しまなきゃダメだぜ?」


ニヤリと嗤うと、おもむろに腕を上げる。


「ゲームだと?貴様ッ」


「…お前らの探してる管制室は、あっちだ」


南条の言葉を無視し、己から向かって右の通路を指差す。


「…何だと?」


眉を顰める。


「二度も言わねえ。言葉の通りだ」


フフン、と鼻を鳴らす。


「…そこを押さえられたらお前らの勝ち、出来なきゃオレの勝ち」


「何の事だ!」


やれやれ、とでも言うように肩を竦める。


「だからゲームっつっただろ?ゲ・エ・ム」


「…」


南条は相手の真意を計りかねているのか、押し黙り答えない。


「まぁ信じる信じないは勝手だぜ?フラグは立てた。後はお前ら次第。じゃな」


ひらひらと手を振りながら踵を返す。


「待てッ!」


ガチャガチャガチャガチャッ!


蒼琉の兵士達が一斉に武器を構える。


「くッ!」


「あぁ…そういや」


既に歩き始めていた蒼琉が振り返る。


「そいつらは別のフラグを立てれば退くようにしてある。…まぁ、せいぜい頑張るこった」


再び背を向け、その先にある階段へと向かう。


「蒼琉…ッ!」


しかし呼びかけには応えず、姿が消える。


「おのれ…」


レイピアを握る手が、真っ白になるほど力を籠める。


「総隊長ぉ、ありゃ明らかに誘ってますぜ?」


「分かっているッ!」


珍しく声を荒げる南条に、加藤が冷や汗を浮かべる。




―――全ては奴の手の内か…。歯痒いが仕方あるまい…。




前方で小銃を構える兵士達は、別段攻撃をしてくるわけでもなく、ただこちらに銃口を向けているだけだった。




―――フラグ、か。




「そ、総隊長?」


恐る恐る加藤が声を掛ける。ふと気が付き、振り向くと部下達は皆一様に戦々恐々とした表情をしていた。


ハッと気付き、真顔に戻る。自分でも気付かぬ内に余程険しい表情をしていたようだった。


「あぁ…済まんな」


言って、敵兵達を振り返る。


「どうやら手を出さなければ攻撃する気配は無いようだ。…ここは誘いに乗るしかあるまい」


確かに、銃口をこちらに向ける兵士達は、それだけでそれ以上の事をしようとしないままだった。尤も、近付けば手にした獲物が火を噴くのは目に見えていたが。


「行くぞ。今はそれしかあるまい」


「…了解っす」


加藤は敵兵達を一瞥すると、歩き出した南条の後に続く。残りのメンバーも同様だった。




スタスタスタ…パタン。


九番隊最後のメンバーが扉を潜ると、音を立てて扉が閉まる。


その場には蒼琉の兵士達だけが残された。




コツコツコツ。


足早に、かつ注意深く通路を進む。先程のホールでは照明が隅々まで照らしていたが、ここでは非常灯程度の灯りしか見受けられなかった。


「ちょっと」


仲村が加藤の袖を引っ張る。


「あン?」


南条のやや後方から少し下がり、仲村と加藤が横に並ぶ。


「総隊長って、さっきのヤツと知り合いなの?」


小声で感じていた疑問を加藤に問う。


「ん?…あぁ…」


その質問にやや口ごもり、後頭部を掻く。


「まぁ、因縁ってヤツさ」


遠い目で南条の後姿を見る。


「…あっそ」


何かを察したのか、仲村もそれ以上は追及しようとしなかった。


「…む」


南条が立ち止まる。


「どうしました?」


聞かれていたかと、加藤が緊張する。


「あれを見ろ」


指差す方を見ると、頭上に案内板。


右を指すそれには、『管制室』。


左を指すそれには、『武器庫』。


「どんだけ間抜けなんだ」


思わず加藤が突っ込みを入れる程、出来過ぎていた。


「ヤツらしいな。…馬鹿にしおって」


「…どうします?」


「………」




―――時間が掛かり過ぎている…。仕方あるまい。




「部隊を分けよう。右には九番隊と私、左には残りの部隊を割り当てる」


「ありゃ?思い切りますね?」


「時間の節約だ」


唇の端を歪める。


「了解っ!ンじゃあ…」


加藤が肩から提げたマシンガンを差出す。


「せめてコイツを持ってって下さいよ。火力足らないだろーし」


「…良いのか?」


「ええ!心配いらねぇっす!俺たちゃ無敵ですから!」


ガッハッハ、と大口を開けて笑う。


「分かった。有り難く使わせてもらう」


南条は加藤からマシンガンを受け取ると、たすき掛けに提げる。


「ソイツの使い方ぁご存知ですよね?」


「あぁ。大丈夫だ」




―――『M10』か。久々に持つな…。




…『M10』。サブマシンガンの一種。その小型さから、マシンピストルとも呼ばれる。使用弾薬は9ミリパラベラム弾。装弾数三十二発。




ガチッ。ガシャ。


マガジンを引き抜き、弾を確認すると元に戻す。


「あとコイツも持ってって下さい」


言って、予備マガジンの入ったバッグを差し出す。


「助かる」


「あ。重いんで…。オイ嶋田ぁ、お前が持ちやがれ」


バッグを嶋田に向ける。


「…貴様に指図されるのは気に食わんが…」


スッと手を出す。


「素直じゃねぇなぁ?ハッハッ!」


豪快に笑うと、なかば投げる様に嶋田へバッグを渡す。


ズシッッ。


「………」


あまりの重さに、嶋田がよろける。


「おいおい。大袈裟だな」


「…積み過ぎだ」


バッグを開け、中身を取り出す。


「…総隊長、予備を持っていろ」


「あぁ。済まんな」


南条は嶋田からロングマガジンを受け取ると、ズボンのアウターポケットへと仕舞い込む。


「良し。…そちらは任せたぞ。武器庫を破壊出来れば奴等を弱体化できる。二番隊は五番隊のフォローを頼む」


「了解ィ!ガッチリフォローしてやるぜ!」


バンバンッ、と加藤が上原の背を叩く。


「痛い、痛いって~」


上原が迷惑そうに背を丸める。


「フッ。幸運を祈る。何かあれば無線を飛ばせ。では行くぞ!」


その号令と共に、部隊が左右に散る。


タタタタタ…。




―――…皆、死ぬなよ…。




南条は速力を上げ、薄暗い通路を駆ける。その後に嶋田達九番隊が続く。


…だがそれは、最悪な行軍になる事を後で知る事となる。


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