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TLS外伝 ~a crying soldier~  作者: 黒田純能介
29/50

突入


ブロロロロ…。


何事も無く検問を突破した南条達のトラックが、山中の悪路を走行していく。


既に道は一本道となっており、迷う事は無くなっていた。


「この分ならスンナリ着けそうですぜ」


鼻歌交じりに加藤が言う。


「そうだな」


それに対し、素っ気なく返す南条。




―――妙だな…。罠すら仕掛けられている気配が無い。一体どういう事だ…?




「おっ!?」


不意に加藤が声を上げた。即座に反応する。


「どうしたっ!?」


背後の荷台からも緊張が伝わってくる。


「見て下さいよ。連中のトラックが停まってる」


加藤が指差す前方を振り返る。


…確かに、一台のトラックが停車していた。傍らには小さな小屋。


「様子が変だ。…誰も居ない様に見えるな」


「着けますか」


その言葉に頷く。



ブロロロロ…。キキッ。


軋みを上げ、トラックの後ろに停まる。


ガチャガチャッ。


「仲村。お前達はバックアップを頼む」


「あいよっ」


荷台に声を掛けると、加藤と共に前方に停まるトラックへと近付く。


ザッ、ザッ…。


「………」


「………」


慎重に近付く。加藤は懐の拳銃に手を掛け、南条は腰のレイピアに手を置く。


スッ…。


運転席を覗く。



誰も居ない。それどころか、荷台からも気配はしない。


「誰もいねぇな…」


「荷台もだ。負傷者一人居ない」


後方を調べていた南条が戻ってくるなり言った。


「そーなると…」


「この小屋が怪しいな。調べるぞ」


「了解ィ!」


加藤は大仰に敬礼をすると、拳銃を抜き小屋に近付く。



ザッ…。


加藤がドアノブに手を掛ける。


「………」


「………」


二人は目を見合わせると頷く。


バアンッ!ジャキッ!


一気にドアを開け、内部に銃口を向ける。


…動くものは無い。


加藤が先頭に立ち、足音を立てぬ様一歩、一歩と歩を進める。


「………」


「………」


耳が痛くなる程の静寂。…やはり何も無い。


「…妙だな」


ぽつりと漏らす。


「変ですねぇ」


辺りを警戒しながら加藤が相槌を打つ。


「もう少し調べてみよう。加藤。お前は皆を連れてきてくれ」


「イエッサ!ボス!」


「ボスは止めろ。早く行け」


了解ィ!と加藤が飛び出していく。その背を追うのも程々に、周囲を見渡す。


…ガランとした暗い小屋。どこにも隠れる場所など無い。だが南条の勘は怪しいと告げていた。


「………」


壁、床、天井。くまなく視線を這わせる。


…やがて、床の一角に目が留まる。


「…?」


巧妙にカモフラージュされているが、南条の目は誤魔化しきれなかった。




―――タイルが浮いているな。これか。




シャラッ…。


レイピアを抜く。


「ハッッッ!」


スタンッッ!


タイルの隙間に、レイピアの切っ先を滑り込ませる。


バキキ…バキッ。


梃子の要領でタイルを剥がす。


果たしてその先には、小さなパネルが在った。


蓋に手を掛け、開く。…中にはボタンが二つ。『開』と『閉』。迷わず『開』を押した。


ゴゴゴウンッッ!


「!」


地鳴りの様な音に顔を上げる。


…今まで壁しかなかった場所に、ポッカリと洞窟の様に口を開けた地下への階段が現れていた。


中を覗き込む。数十段降りた先に、薄暗い照明に浮き上がるドアが見えた。


ザザザザザ…!


足音に振り向くと、加藤を始め部下達が集まってきていた。


「総隊長ッ!何かスゲー音しましたが大丈夫ですかぃ?」


「問題無い。それより見てみろ」


身振りで現れた階段を示す。


「隠し階段か~。通りで見つからなかった訳だ~」


間延びした声で上原が言う。


「上原ぁ、オメーはもうちっと緊張感持てよ!」


僅かな苛立ちと、笑顔を隠さず加藤が上原にがなり立てる。


「まぁまぁ~。焦ってもしょうがないでしょ~」


ツツツ…、と階段に近寄りながら返す。


「上原。トラップの類は在るか?」


「ん~…。見た限りは無さそうですねぇ~」


細い目を更に細めて内部を窺いながら答える。


「そうか。ならば突入するぞ。先頭は私と二番隊、殿は九番隊に任せる」


「了解…」


嶋田がぼそりと答える。


「行くぞ」


レイピアを鞘に収め、階段に足を掛けた。



…そのドアは、ろくに整備されていないように見受けられた。全体的に錆びが浮き、ノブを固定していたであろうネジは半数が外れ、今にも落ちそうだった。


カチャ…。


ノブを捻る。見た目とは裏腹に、すんなりと回った。

そっと押すと、鍵は掛かっておらず、嫌な軋みを立てその口を開く。


「………」


様子を見る、と後続に合図し、不気味な程静まり返った廊下に、一歩踏み出す。


数メートル進んだ所で『来い』と合図をした。


カチャカチャカチャ。


小走りに移動する部隊の装備が僅かな音を立てる。


「居ますかい?」


流石に声のトーンを落とした加藤が、南条に問い掛ける。


「いや…。周辺には居ない様だ」


後方を振り返り、全員が揃ったのを確認する。


「よし、作戦を確認する…」



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