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TLS外伝 ~a crying soldier~  作者: 黒田純能介
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初戦


ヒュオオォ…。


草原を挟み、両軍が睨み合っている。


かたや五千。かたや二千。数の上では大きく敵軍が上回っていた。



…南条には策があった。


「全軍、陣形を維持しそのまま待機。敵軍が痺れを切らすのを待て」


無線で各隊長へと告げる。


「…例の物は抜かりないな?」


脇に控える黒田を見る。


「はい。指示通りに用意は済んでいます」


「うむ。…狙撃隊、照準合わせ。私の指示で発砲せよ」


黒田に頷くと、拠点に設えられた塔の狙撃兵に指示を出した。


ガシャガシャガシャガシャコッ。


一斉に狙撃兵達がスナイパーライフルに弾を装填する。



「そろそろ来るな」


南条が双眼鏡を手に取り、一人呟く。


敵陣では、整然と兵達が並んでいる。先頭には部隊長らしき姿。しかし聞いている総大将の姿では無かった。




―――頭目は高みの見物か…。




南条が双眼鏡から目を離そうとした時だった。


「…!」


敵部隊長が号令を掛けるのが見えた。


ガシッッ!


無線をひっ掴む。


「来るぞ!目を離すな!」



かくして敵部隊、五千が一斉に突撃を始めた。


ドドドドドド…!


地響きが段々と近付いてくる。




―――まだだ…。




相手との距離を慎重に読む。そして―――




―――ここだッ!




「撃てっっっ!」


パァァァンッッ!!


数十の銃声が、周囲に木霊する。


そして、放たれた銃弾は迫り来る敵部隊の直前で地を抉る。


次の瞬間。


カッ!ドガァァァンッッッ!!


仕掛けられた爆薬の激しい閃光と轟音、そして炎。それは先陣を切り突撃してくる敵部隊を薙払うのに十分だった。


…かつて作戦会議の折、罠を仕掛けるとの意見は却下したのだが、迎え撃つ際引き金をいつでも引けるのならと南条が一部採用したのだった。


「良しッ!狙撃隊はそのまま援護に回れ!前線は二番隊を中心に敵後続を討て!」


ワァァァァ…!


その号令を受け、二番隊を筆頭に全軍が突撃を始める。



「よっしゃあ!蹴散らしてやるぜぇ!」


加藤が嬉々として突撃する。


「隊長~?作戦忘れて無いよね~?」


呆れたように側を走る女兵士が加藤に声を掛ける。


「分かってらぁ!お前こそ下手打つんじゃあねぇぞ!仲村!」


「はいはい、っと」


カチッ。


仲村と呼ばれた女兵士が、手にしたマシンピストルのセイフティを外す。



------------------------------------------------------------------------------

ワァァァァ…!


戦闘開始から三十分。策が成功したお陰か、自軍の優勢に戦況は推移していた。


「…問題は無さそうだな」


「…はい」


南条が黒田に振り返る。


「そろそろ敵兵が撤退を始めるはずだ。…後は任せたぞ」


「畏まりました。三番ガレージにトラックを用意してあります。それを使って下さい」


「…済まない」


そう言って、南条が頭を下げる。


「いえ。頭を上げて下さい。…御武運を」


「…ああ」


南条が無線を取る。



『南条より各隊へ。間も無く作戦を開始する。対象の隊長は予定の人員と共に三番ガレージへ集合せよ』


無線から聞こえた声に上原が反応する。


「了解~。…んじゃあ行きますか」


側で敵を伺っていた部下三人に声を掛ける。


「ほいほい」


「あいよっ」


「へーい」


キンっ。ヒュッ。


部下達が一斉に円筒形の物体を投げる。


ドパンッッ!


物体は地面に落ちるや否や破裂、煙を発生させた。




―――スモークグレネード。戦場では主に煙での目眩ましとして使用される。また、狼煙の代わりとして使われる事もある代物である。




「よーし、んじゃ各自ズラかるぞー。拠点の三番ガレージ集合な」


シュタ、と右手を上げ走り去る上原。


『『『へーい』』』


それに対し、やる気が有るのか無いのかユルい返事を部下達が返す。


タタタタタ…。


こうして五番隊は撤退していったのだった。



「九番隊、撤退…」


ス、と手を上げ部下達に指示する。


三人の男達がものも言わず手を上げ答えた。


九番隊嶋田と、選出した隊員は混戦の真っ只中、残りの隊員を残し後退する。


「…後は任せた」


隊の副長を見つけると、そう声を掛ける。


副長もまた、部下と同じく一言も発さず手だけを上げた。


その答えを見るや否や、一目散に走り去る。




…初戦は、南条達の勝利で終わりを迎えようとしていた。


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