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TLS外伝 ~a crying soldier~  作者: 黒田純能介
24/50

来るべき時


ダダダダダダダダ!


一人の兵士が、廊下を駆け抜ける。


「来たぞぉぉぉッ!」


間もなくして、サイレンが館内に響き渡った。



「…!」


兵舎で手帳を睨んでいた南条が顔を上げた。


「来やがったな!」


ガチャッ!


側で銃の手入れをしていた加藤が吠える。




―――間に合わんか…。




南条は内心舌打ちをすると、近くにいた兵士に指示を出す。


「各隊の隊長に伝令を。『ケースB』だ」


「了解!」


隠語での指示を終えると、若い兵士が兵舎外へと駆けていく。


それを見届け、南条が加藤を振り返る。


「…加藤、往くぞ。第一陣を蹴散らす」


「おうっ!行くぜ皆ッ!」


オオオオッッ!


その場に居る兵士達が呼応する。


ガチャガチャチャチャッ。


思い思いの武器を手にすると、我先にと飛び出していく。


「総隊長、お先に!」


ザッ、と敬礼をすると加藤も外へと躍り出た。


「………」


手帳をサイドバッグに押し込み、腰の剣―――レイピアに手を掛ける。




―――行こう。これで終わる…。




南条も後を追い、駆け出した。





ガシャンッ。


「さてと」


大剣を背に負い、呟くと部屋を後にした。



スタスタスタ…。


廊下を歩きながら思案する。




―――まだ敵の位置は分かってない。ってコトは、まだみんなこっちに居るって事か。




タッ。


一息に駆け出す。




―――まずは前線でひと暴れして、それからかな。




あっという間に廊下を駆け抜ける。


背なの大剣は物言わず付いていくのだった。





「来た…」


未だにサイレンが鳴り響く中、大勢の非戦闘員が詰める部屋に一人、敷島が窓際へと近付く。


…遠く、彼方に見える黒い集団。それが森の中から続々と現れる。まるで巣穴から這い出る蟻の様に。


「……ッ」


その異様な雰囲気に気圧される。数、見て取れる士気。それは恐怖を煽るのに十分だった。




―――あんなヤツラをねぇちゃん達は相手にするんか…ッ。




不気味な軍団をひたすら凝視する。以前追われた敵とは明らかに違う。




―――恐い。




正直な思考だった。現に、他の非戦闘員達は既に恐怖を感じ、部屋の隅で固まっている有り様だった。




―――やっぱりアカン…!




ドアへと駆け寄り、鍵を開け飛び出す。


背後から呼び止める様な声が聞こえた気がしたが、敷島の耳に届く事は無かった。



--------------------------------------------------------------------------------



「黒田」


拠点の眼前、急遽拵えられた陣に立つ黒田に声を掛けた。


「…南条様。お早いご到着で」


黒田が振り返り恭しく礼をする。


「挨拶はよい。状況は?」


「はい…。現在二時の方角より敵の大軍を確認。数はおよそ五千」


「五千か。自軍はどれだけ集まった?」


遠くに集結している敵軍を睨みながら問う。


「本部からの応援合わせ二千です」


「二千か。それだけあれば十分だな。…作戦は全軍に行き届いているか?」


「ぬかり無く。各隊長に無線も装備させています。」


「分かった。…開戦の指揮は私が執る」


「畏まりました」


ス…、と黒田が後方に下がる。


スウゥ…。


大きく息を吸い込む。


「皆の者ッ!良く此処まで頑張ってくれた!」


周囲に、良く通る凛とした声が響く。


ザザザザザザザザッ!


集まった兵士達が一斉に南条へと敬礼する。


「この闘いにて、長く続いた紛争に終止符を打つッ!どうか私に、君達の最後の力を貸してくれ!」


オオオオオオオオッッ!!


集まった兵士から歓声を上がった。


バッ、と手を上げそれを止める。


「諸君の健闘を祈るッ!配置に付け!」


ザッザッザッザッ!


その号令を受け、一斉に兵士達が散らばっていく。




―――さて、初戦から上手く行けばよいが…。ん?




散らばっていく兵士達の中、二人の人間が目に留まる。


一人は、眼鏡を掛け、軍属服をやや着崩した格好の男。もう一人は、全身黒尽くめのコート…、いや、傍目では気付き辛いが、拘束具を着けた人物が立っていた。顔は何故か被せられているフルフェイスヘルメットで見る事は出来なかった。


二人共、腰に刀を差している。


「黒田。あれは本部からの志願者か?」


配置に付こうと歩き始めた二人の人物を指差す。黒田も直ぐに気付く。


「…あれは。私も気付きませんでしたが…。少なくとも眼鏡の方は見覚えが」


「誰だ?」


「…本部、特務機関の方です。最前線にいらっしゃるとは…」


「ふむ…」


顎に手をやる。しばらく思案していたが、やがてまた口を開く。


「…自軍である事は変わりあるまい。まさか監査だと言うことも無かろう」




―――それよりも隣の人間の方が気に掛かるがな…。




出掛かった言葉を呑み込み、拘束具の男を凝視する。



…クルリ



「…!」


一瞬、フルフェイスヘルメットが此方を向いた。




―――何だ、この男は…?




突如感じた寒気と、奇妙な感覚に身震いする。


「南条様?」


黒田の声に、我に帰る。


「ん…何だ」


「間もなくお時間です」


「…分かった」


再び視線を敵軍に戻した。


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