決意
少し経ち、会議室。
未だにそこには五人の姿があった。
「…黒田。斥候から報告はあったか?」
南条の問いに微妙な表情を返す。
「現在の所、敵拠点の発見には至っておりません。ただだいぶ範囲は狭まっている模様です。もう少しお時間を戴ければ、と」
「分かった。その件はギリギリまで保留とする」
視線を黒田から手帳に戻し、メモを取る。
サラサラサラ。
書き終わると、顔を上げた。
「…では確認する。戦闘開始後、私と加藤達二番隊を筆頭に囲いを突破しつつ敵拠点へと潜入、頭を制圧する」
「ヘイッ!了解っ!」
いかにもやる気、という風に加藤がポーズを取る。
「五番隊上原達は潜入後、爆薬による破壊工作を頼む。敵の戦力を削るだけで良い」
「はい、了解」
やや脱力して敬礼を返す。
「最後に、九番隊嶋田達は撹乱を頼む。メインは敵拠点管制室の制圧だ。恐らく監視カメラや無線も有るはず。それを無効化してくれ」
「了解…」
低い声で返事をする。
「後は…」
黒田を再度見る。
「本隊だな。…無理はするな。囮と悟られぬ様に相手しつつ、被害を最小限に抑えてくれ」
「…畏まりました」
黒田が目礼をする。
「…こんな所か。何か質問はあるか?」
「はい」
手を上げたのは上原だ。
「何だ?」
「もし敵陣を捕捉出来なかった場合は?」
「その時は、時間差で我々が出撃する。敗走兵の尾行だ」
…あまりにも自信に満ちた発言だったが、この場に居る全員がそうそう敗北を喫するとは思っていなかった。
「はい、了解」
微笑を浮かべながら上原が返事をする。
「他、何かあるか?」
「装備の制限はあるんですかい?」
加藤が腕を組み、身を乗り出す。
「特には無いが…。室内戦の想定で組んでくれ。いつぞやの様にバズーカなど持ってこられても困るのでな」
「タハハ…了解!」
苦笑しながら加藤が答える。
「二人は何かあるか?」
向き直ると、嶋田と黒田を見る。
「特に在らず」
「…大丈夫です」
「分かった。では各自別命あるまで待機。黒田。斥候からの報告は逐一私に回すように。以上、解散」
ガタガタガタ…。
五人がそれぞれ席を立つ。
「南条様」
出入口へと向かおうとした時、黒田が声を掛ける。
「どうした」
「どうしても、往かれるのですね」
「ああ」
南条と黒田以外の三人は既に姿が無かった。
「…分かりました。なれば」
ザッ。
「私も命を賭しましょう」
跪き、語る。
「全ては、あなたの為に」
「………」
跪く黒田を見下ろす。その表情の下にある感情は読めなかった。
「………」
「…黒田」
「はい」
顔を上げずに答える。
「賭けても全ては使うな。皆が戻った時の居所が無くなっては困る」
「………」
「頼むぞ。作戦が成功しても、誰も居なくなっては意味がない」
踵を返す。
「皆で、帰ってこよう」
スタスタスタ…。
カタン、と扉が閉まる。
―――南条様…。私は…。
ス、と立ち上がる。
「あなたを、死なせはしない」
一人呟いたのだった。
一方、拠点に割り当てられた須藤の自室。
ガシャ。
布の巻かれた長大な物体が音を立てる。
「…上手くいくさ」
露出している柄を掴み、語り掛ける。
シュルル…。
布をほどく。
…キラリ。
中から現れたのは、鈍い輝きを放つ、大剣。
ガシャ…。
刃先を天井へと向ける。ギリギリ掠めるか掠めないか位の位置に留めた。
『ねぇちゃんを助けてやってや』
『南条様を御護りして戴きたいのです』
二人の言葉が蘇る。
『お前は残って、皆を守ってくれ』
そして、南条の言葉も。
―――折角、見つけたんだ。
大剣を見上げる。
―――力を貸してくれ。
「………」
しばらく見上げていたが、勿論返事は無い。
ガシャ。
大剣を下ろす。
キラリッ。
返事の代わりか、鈍い輝きが返る。
「………」
須藤は微笑すると、再び布を巻き付けていった。




