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TLS外伝 ~a crying soldier~  作者: 黒田純能介
20/50

死合


「大丈夫さ。みんな、死なせやしない」


南条から視線を外し、奇十郎に向き直る。




―――…。




一瞬、須藤が何時もとは違う、寂しげな笑みを見せた。


「さあオッサン、勝負だ!」


ザッッ!


須藤が身構える。


「フ、その意気や良し!誰も手を出すでは無いぞ!」


チャキッ!


奇十郎が刀を八双に構える。



奇十郎の部下達は後方に下がり、刀を置く。


南条もこれ以上口を出す事を止めた。


更に後方では、敷島と黒田が行方を見守っていた。



「………」


「………」


しばし睨み合う。


互いに間合いを測る。


「…キェェェィ!」


気合の声と共に、奇十郎が先制する。


ヒュオンッ!


袈裟斬りに斬りつける。


「ハッッ!」


スウェイで斬撃を回避する。しかし第二波が下段から襲い来る!


「ヌウンッ!」


「くッ!」


ヒュンッ!


斬り上げが須藤の身を掠めた。


パッッ!


ノースリーブの前面が裂ける。


「…ひゅう。危ねぇ…」


「フハハ。よくぞかわしたな。ではこれはどう…だッ!」


ヒュヒュヒュンッ!


息も吐かせぬ連撃。斬撃に加え、突きと体術も織り交ぜ襲いかかる!


「うおわっっ!」


必死に回避し続けるが、いつまでもそういうわけにもいかなかった。


ザシュッ!


「うぐっ!?」


一突きが須藤の右脇腹を掠める。


ザッ…、タタッ。


奇十郎が飛び退き間合いを取る。


「どうした須藤…。お前はその程度か?」


「へ…へっ!掠りキズ位じゃ何とも無いぜ…」



平気そうに振る舞うが、傍目にはやはりダメージが見て取れた。




―――須藤…。




南条は手を出せなかった。須藤の、『覚悟』と言うものが見えていたからだ。


かつて自分が須藤に語った様に。



その間にも二人は死闘を繰り広げていた。


「ヌウンッ!」


「おりゃぁあ!」


仕掛けて回避し反撃。その応酬がいつまでも続くように思えた。だが…。



「ハァ、ハァ…」


「ゼェ、ゼェ…」


両者とも、ほぼ体力の限界が近付いていた。


「ゼェ…そろそろ、ゼェ…決着を付けさせて貰う…」


「ハァ…奇遇だな、ハァ…オレもそう思ってた…」


両者が、息を整えながら間合いを取る。


「………」


「………」




―――これで決まる…。須藤、死ぬなよ…。




祈る様に二人を見守る。


そして。


ダンッッ!


「「ウオオオォ!!」」


須藤と奇十郎、同時に地を蹴った。


「シェェェイッ!!」


気合と共に刀を振り下ろす。




―――袈裟斬り……ッ!?




ニヤリ。


奇十郎の唇が歪む。


地を向いていた切っ先が、天を仰ぐ。




―――フェイク!



--------------------------------------------------------------------------------



「須藤ッッッッ!」


南条の叫び声が響く。


「う…ぐ…ぁッ」


奇十郎の刀は、須藤の左肩を深々と刺し貫いていた。



「フ、フハハ…」


奇十郎が刀を手放す。


「見事」


ゴフッ。


直後、奇十郎が血を吐く。


…その胸には、須藤の掌底が食い込んでいた。


グラッ…。ドサッ。


ザザザザ…。


奇十郎が大の字に倒れると、部下達が一斉に集まってくる。


「くっ!」


南条が駆け出そうとする。


「レイ!ストップ!」


いつの間にか振り向いていた須藤が叫ぶ。


「痛てて…。…コイツらは大丈夫さ。ついでにオッサンも、な」


肩口を押さえながら、ニカッと笑う。


「う…」


地に伏せた奇十郎が呻く。


「お?復活早いな」


覗き込む様にして奇十郎を見る。


「ぐ…。何故、殺さない?」


「ん?意味無いだろ?つーかオッサン」


「…何だ」


ずい、と手を出す。


「勝ったんだからリモコンくれよ」


「フ、ハハハ…。面白い男よ」


奇十郎は懐からリモコンを取り出すと、須藤に投げ渡す。


「あ痛たた…。サンキュ~。ついでに」


未だに左肩へと突き刺さる刀身を掴むと、


「フゥ~…。んぎぃッ!」


一気に引き抜いた。


ブシュウッッ!


ガシャンッ。


刀を落とすや否や、血液が迸る肩を押さえる。


「ぐぅぅ~痛いてぇ~……それ返す……」


涙目で顎をしゃくると、背を向ける。


「良いのか?後ろから斬られても」


「そりゃ無いさ」


肩越しに振り返り言う。


「アンタの性格から言って、そりゃあ無い。それより早く医者に行きなよ」


痛みを堪えながらとぼとぼ、と歩きだす。


「フ…」


部下に支えられながら、よろよろと立ち上がる。


「須藤よ」


「何だよ。しつこいな…」


面倒そうに振り返る。


「数日後、儂等は大規模な攻勢に出る。死にたくなければ、今直ぐこの地から立ち去れい」


「………」


須藤は一寸目を丸くしたが、やがて口を開く。


「おいおい、そんな事喋って良いのかよ?」


「ぬしの事は敵ながら気に入っておる。易々と命を落として貰いたくない」


ジッと奇十郎の目を見る。…嘘であるとは思えなかった。


「分かったよ。ありがとな。さ、帰った帰った」


ひらひらと手を振り、再度踵を返す。


「…さらばだ」


部下に肩を借りつつ、奇十郎も踵を返した。



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