反撃
「セイッッ!」
流れる様な動きで剣を操る。
ヒュウンッ!
しなる剣が相手の腕を斬りつけた。
ドシュッッ!
切っ先は動脈を両断し、血飛沫が上がる。
斬られた相手は呻き声を上げながら後退する。
「ハァァ、ハァァ…」
肩口から胸にかけての刀傷から、絶えず血液が流れ出す。
多勢に無勢、黒田の周りには十人程の忍者が取り囲んでいた。
「もう諦めるが良かろう」
一団の後方から重々しい声が響く。
「貴方は…」
その方向に振り向いた黒田が声をあげる。
「奇十郎…!」
奇十郎が腕を組む。
「黒田の小僧…。この様な軍に荷担なぞせず、隠遁しておれば早死にする事も無かったろうに」
「貴方に言われたく無いッ!」
シュンッ!
唐刀を構える。
「愚か者は何処まで往っても愚か者か」
ス…。
組んでいた腕を解き、右手を上げる。
「ゆけ」
バッッ!
右手が振り下ろされると同時に、忍者達が一斉に襲いかかる!
…迫る十余の白刃。手負いの黒田には、最早回避する余力は無かった。
―――南条様…ッ!
そして、刃が黒田を―――
ドガアッッ!!
激しい激突音と共に、忍者達が吹き飛ぶ。
「…!」
「ヒーローは遅れて登場、ってね」
須藤だった。相変わらずの笑顔を浮かべている。
「大丈夫か、黒田」
「…南条様ッ!須藤様に、敷島様も!」
「遅れて済まない。後は私達でやる」
南条が起き上がりつつある忍者達を睨み付けながら言う。
「も、申し訳ありません…。私が居ながらこの様な…」
「言い訳は良い」
ピシャリと跳ね付ける。
「良く保ってくれた。今は下がれ」
「…はっ。ではせめてこれを」
ヒュンヒュンッ。
黒田が唐刀の刃を返し、南条に差し出す。
「レイピア程ではありませんが…使い易い筈です」
「それでは身を守る物が無くなるぞ」
「大丈夫や!」
何か言おうとした黒田を押しのけ、敷島が進み出る。
「クロ兄は、ウチが守るッ!」
「敷島様!無茶です!」
敷島が振り返り言う。
「大丈夫やって!ウチにはコレがある」
両腕を交差させる。そこには、鉄甲があった。
「し、しかし…」
「黒田。やらせてやれ。…侑子」
「ん?」
「頼むぞ」
敷島はその言葉に満面の笑みを浮かべ、大きく頷く。
「さて…待たせたな」
南条が奇十郎へと視線を移す。忍者達は既に体勢を整えていた。
「なに、三途の川の渡し賃と思えば安いものよ」
奇十郎がスラリと刀を抜く。
「おいオッサン!今度は手加減しないぞっ!」
パンッ、と須藤が拳を合わせる。
「また会ったな須藤…。今度は儂も甘くは無いぞ…?」
チャキッ。
奇十郎が刀を正眼に構える。
ザッ。
須藤が身構え、
「良い加減にけりを付けさせて貰う」
スッ…。
南条が片手に唐刀を構える。
「フッ。良かろう。…かかれぃ!」
奇十郎の号令に、忍者達が一斉に飛びかかる!
「せいやぁっっ!!」
斬撃をかわしながらの強烈なボディブロウ。狙いは能わず忍者の腹部を直撃。
「よっしゃあ!」
相手がうずくまるや否や、次の敵に備える。
「ハアッ!」
ヒュウンッ!カキィン!
首を狙った剣が防御される。しかし…。
ビュンッ!
防御された部位を支点にして、刀身がしなる!
ザシュッ!
しなる刀身は、忍者の顔面を直撃。鼻を削ぎ落とす。
ぎゃぁぁ、と悲鳴を上げながら忍者が後退する。
「余り時間をかけたくない。全員で来い」
ヒュンッ。
南条が再び唐刀を構えた。
―――やはり、数では適わぬか。
いつぞやの追撃を思い返しながら奇十郎は思う。
…既に戦況は不利な状況に追い込まれていた。半数がたった二人に戦闘不能にされ、残りの者の戦意も下がりつつあった。
「もう良い!ぬし等では相手にならぬわ!」
その声に部下達が一斉に後退する。
「…?怖じ気づいたのかよ?」
須藤が一歩進み出る。
「フン、貴様等に敬意を表しただけよ」
奇十郎はそう言い、部下達に納刀するよう命じる。
「須藤よ…。儂と決闘しろ」
「…はぁ?」
突然の申し出に、須藤が目を丸くする。
「拒否権は無い。…是が何か分かるか?」
懐から長方形の物体を取り出す。
「…リモコン?」
「そうだ。この施設の彼方此方に仕掛けられた爆弾の起爆スイッチだ」
「…!」
「バカなッ!自爆でもするつもりか!?」
南条が叫ぶ。
「それも大義の為…。さあ須藤、儂と勝負せい。ぬしが勝てば、これをくれてやろう」
奇十郎がリモコンを弄ぶ。
「止せ須藤!どうせブラフだ!」
「ほう…?ならば試してみるか?」
ス、とリモコンのスイッチに指を掛ける。
「待ちなよ。受けるさ」
「須藤ッ!」
南条を腕で制する。
「漢ってのはな、やるときゃやらなきゃならないのさ」
南条を振り向き、ニカッ、と笑う。
「それに…」
「…何だ」
「みんな、死に急ぎ過ぎなんだよ」




