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TLS外伝 ~a crying soldier~  作者: 黒田純能介
18/50

襲撃


「急ぐんや!追っ手が来よる!」


薄暗い廊下で、敷島が悲鳴に近い声を上げる。


「う…。敷島様、私の事は捨て置いて下さい…」


息も絶え絶えに黒田が囁く。


「アホか!ケガ人を放って行けるわけ無いやろ!」



不意の襲撃を受け、咄嗟に敷島を庇った黒田は深手を負っていた。



「ほら、歩きぃ!」


肩を貸しながら必死に叱咤激励をする。


「う…すみません。私の不覚です」


「いや、ウチがぼーっとしとったからいけなかったんや…」


敷島が苦々しい顔をする。


カツカツカツ…。


「…!誰か来よる!隠れや!」


咄嗟に側にあった部屋へと転がり込む。


カツカツカツ…。


『そっちは居たか?』


『いや、まだ見つかっていない』


カツカツカツ…。


足音が遠ざかっていくと、ほぅ、と胸を撫で下ろす。


「敷島様…」


黒田が苦しそうに声を掛ける。


「どした?痛いんか?」


ゆっくりとかぶりを振る。


「こ、このままでは二人共捕まってしまいます。…私が囮になります。敷島様はその内に…」


「だーから、アカン言うとるやないか!」


黒田がフ、と笑みを浮かべる。


「いえ…。南条様と合流していただきたいのです。恐らくは彼も一緒。…くっ、あの方々が居れば、まず負けはありません…」


傷を庇いながら、痛々しい言葉を吐く。


「でも…」


ガシッッ!


怪我人とは思えない力で敷島の両腕を掴む。


「貴女しか今は居ないのです…ッ!」


絞り出す様な声に、最早頷くしかなかった。


「…しゃーない」


スッ、と立ち上がる。


「パッとねぇちゃんとツンツン見つけて、直ぐ戻るわ。エエか?死んだらアカンで?」


よろよろと立ち上がろうとする黒田に手を貸す。


「…心得ました…。手負いの流とは言え、これしきで命は落としません」


ス…、と腰の剣に手をやる。




―――唐刀。古代中国から伝わる剣である。その身は蛇の様にしなり、変幻自在の攻撃を繰り出す。




黒田はその使い手であった。


「死ぬなや、クロ兄ぃ」


ドアノブを掴み、目配せをすると頷く。


カチャ…。


そっと外の様子を窺う。…誰も居ない。


「今の内に…。恐らくお二人は中庭に居る筈。お急ぎ下さい…。」


苦痛に脂汗を流しながら語る。


「ああ…。頼むで」


音も無く、猫の様な俊敏さで敷島が駆け出す。


「お任せを…」


黒田は一礼すると、唐刀を抜いた。



--------------------------------------------------------------------------------



カンカンカンッ!


非常階段を一気に駆け上がる。


南条と須藤は拠点内部に敵兵が居ると見るや、やや迂回したルートを採っていた。


目標は、副官黒田と敷島の保護、更に味方の把握だった。


途中見つけた何人かは既に攻撃を受け、息絶えてしまっていた。


それでも生存者は居り、手分けして他の仲間の確保に向かわせた所である。




―――手際が良すぎる。内通者でも居るのか…?




考えても答えは出ない事をつらつらと思う。




―――今はあの二人が優先、か。




南条は考えを振り払うと、内部への鉄扉を開ける。


ギィィィー…。


「………」


顔だけを出してみるが、誰も居なかった。


良いぞ、と身振りで須藤に合図する。


「………」


須藤が周囲を見回しながら侵入。


コツ、コツ…。


極力足音を消しながら歩みを進める。




―――確か侑子は三階に居た筈…。




現在二階。非常階段は二箇所あり、南条達が使った階段は二階までしか繋がっておらず、その為内部から進まざるを得なかった。



…角に差し掛かった所で、不意に足音。



「…!」


隠れる場所は無い。瞬時に思考を制圧に切り替え、須藤にはフォローを頼み身構える。


タタッ…!


飛びかかろうと身を乗り出す。


「…ッ!」


「あっ!」


現れたのは敷島だった。


「ねぇちゃんッ!」


「侑子ッ!無事だったか」


敷島が南条にしがみつく。


「クロ兄が…」


「黒田か?一緒なのか?」


敷島が首を振る。


「ウチをねぇちゃん達呼ばせに…ケガしとって…」


安堵の為か、敷島が涙声で語る。


「…分かった。良くやった。後は任せろ」


コクリと頷く。


「…道案内出来るか?」


南条は敷島の目を覗き込む。


「うん…。すぐ戻る約束したんや…!」


南条がニコリとする。


「分かった。頼む」


そこで須藤を振り返り、


「須藤。侑子のフォローを頼む」


「おう!ガッチリフォローしてやるぜ!」


腕をブンブンッ、と振り回し親指を立て、ニカッと笑う。



…かくして三人は黒田の元へと急ぎ向かったのだった。


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