第3話 エンカウンター
見切り発車小説
「…はぁ」
祐太はその場でため息をついた。
転生したことや魔法の事でいっぱいになり重要な話をするのを忘れていたのだ。
「ま、やらかした事を言っても仕方ないか…さて、これからどうするかな?」
――…グルルルゥ
ふと、背後から聞こえる獣の唸り声。祐太は背中に冷や汗が流れるのを感じながらも、後ろを肩越しに振り向いた――その目線の先には…
「グルォォォォォオン!!!」
――真っ赤な眼をした巨大な大狼がいた。
大狼は前脚を挙げ大きな爪で祐太に攻撃を仕掛けた。
「…っ、くっ!」
紙一重で大狼の攻撃を躱し後ろに下がる。逃げるにしてもこの大狼から逃げ切れる気がしない、立ち向かうにしても武器もなければ戦う気にもなれない。
どうしたら、と祐太は焦りながらもじっと大狼に目を合わせる。唯一何とかなりそうなのは自分の中に眠ってるユニーク魔法だが、使い方もわからない。逡巡している内に大狼は再び祐太に攻撃を仕掛ける。
「ガルルォア!!」
「ぬおっ!」
大狼の行動を見てたおかげか祐太は攻撃を躱す。またも避けられたせいか大狼は大きく雄叫びをあげ祐太に突進してきた。
「ぐああっ!?」
流石に突進攻撃は避けれず正面から受けてしまい吹き飛ばされてしまう。そして、地面に叩きつけられ肺の空気を吐き出してしまう。
「…かはっ、げほ…ぐぅ…」
身体中に強い痛みを感じながらも何とか立ち上がろうとする。しかし、大狼はそのスキを逃さず再び突進攻撃を行う。
「グルォォオ!!」
「っ、来るな…!」
祐太は殺されそうになる恐怖でこっちに来るなと大狼に振るった。
そして、驚く事が起こった。――振るった腕から風の刃とでもいうように豪風が吹き突進してきた大狼を引き裂いたのだ。
「…は?」
目の前には引き裂かれ血肉を噴き出しながら地面に崩れる大狼の姿があった。
その様子に祐太は夢でも見てるのかと、唖然としてしまう。
「…腕を振ったらあの、化け物狼が…切れたのか?」
自身の腕を見ながらそう呟く祐太。ピンチになりながらも何とか耐えてその上魔法らしきものを使う事に成功したのだ。
身体の痛みに耐えながら立ち上がり大狼に近寄るとその時、身体中を力が巡るような感覚に陥る。そして、その感覚が終わったあと身体の痛みが無くなってるのに気がついた。
「身体が痛くない…どうなってんだ?…まさか、レベルアップして全回復したとかか?」
よく分からない感覚のまま身体の様子をみる。問題もないようで改めて大狼が死んでるのか確認する事に。
「…やっぱ、死んでるな…グロい…」
大狼はちゃんと死んでいた、やはり腕を振るった時に何が出てそれが死に至る攻撃となったのか。と祐太は考えた。
その考えが正しいのかあの時の感覚を思い出しながら的に良い樹を選ぶ。そして――
「…確か、こんな感じで…ていっ」
軽い掛け声とともに腕を振る。そして先程の事が正しいかのように狙った樹に切れ込みが入った。
「やっぱり、腕を振ったら出たな…見るところ風の刃ってところか…」
祐太は自分のユニーク魔法を改めて確認しながらその場から離れたのであった。
誤字脱字などございましたら教えて頂けたら幸いです。
感想など待ってます。