追跡
第2話です。
1話から読んでくださっている方ありがとうございます。
「はぁ…今日も散々な言われ様だったな」
今日も俺は無傷の体で魔物狩りから帰還する途中である。
本当は、俺だって正々堂々戦いたいのだ。
ただ、そんな勇気は無い。
そもそも俺のモットーは安全第一である。
わざわざ危険をおかしてまで正々堂々戦う理由はない。
ただ、安全に1日が終わればいいのである。
それでも、冒険者という職業を選んでしまったのは、憧れてしまったから。
あの、勇者たちの姿に。
まあ、今の自分はその姿からは遠く掛け離れているのだが。
他の冒険者からは傷無しのアーチャーなどと呼ばれているが(それも皮肉だろうが)いつも無傷で帰還するのは、俺が強いからではなく、魔物の攻撃を避け続けているだけなのだ。つまり、ただチキンプレイしているだけだ。
ああ、強くなりたい。
…精神的に
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私は憧れてしまったのだ。
あの、傷無しの冒険者の姿に。
先ほどの洞窟での戦闘。普通ならば私もそうした様に、大規模なパーティを組んで討伐に向かわなくてはならない。
でも、あの冒険者は無傷で魔物たちを蹴散らして去っていった。
私も強くなりたい。あの傷無しの冒険者のように。
「決めました!」
あの人についていきたい。
そう決心を固めた。
そうと、決めれば後を追おう。
「【同族探知】」
探知系のスキルである。
同族を探知するのでエルフならエルフ。ドワーフならドワーフを探知できる。
私はヒューマンなのでヒューマンを探知できる。
あの冒険者は体格からしてエルフかヒューマンなのだが、耳は長く無かったし、エルフは人里から離れて暮らしているのでまず違う。
だから、おそらくあの冒険者はヒューマンだろう。
スキルを発動すると5人ほど探知に反応がでた。
このスキルは発動すると探知したものの影のようなものが見える。
つまり、探知したものの体格や装備、距離が近ければ顔立ちまでもが分かる便利なスキルなのだ。
5人のうち2人は子供だ。
あとの3人はどうだろうか?
一番近くにいる人は、体格こそあの冒険者に似ているが剣を装備している。私が目指すは傷無しのアーチャー。剣を装備している訳はない。
残り2人は少し遠い所に並んで歩いている。
1人は歩き方からして女の人だろう。
もう1人は遠いので顔立ちまではわからないが、背中に矢筒を背負っている。
さっきは1人だったがあの2人だ。間違いない。
傷無しのアーチャーを見つけた少女は全力で後を追いかけるのであった。
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