憧れ
初めての投稿です。
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古来からこの世界では、冒険者というのはモンスターを退治する勇者の様な扱いをうけてきた。
実際、勇者の様に活躍しているのは、一部の上級冒険者だけなのだが。
しかし、勇者という存在は面倒なもので、勇者たる者、市民を命をかけて守り、正々堂々戦わなくてはいけないそうだ。
そういう点からすれば、俺は冒険者失格なのだろう。
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ここは、とある洞窟の入り口。
ただの洞窟ではない。
野生のモンスター、つまり魔物が生息している洞窟だ。
普段は、誰も近づかないが、近頃、魔物の活動が活発になっていたので、大規模なパーティが急遽組まれたのである。
そんな訳で、今、ここには、大勢の冒険者が集結していた。
しかし、そのパーティが到着した時には、もうすでに魔物達は一人の冒険者によってほとんど狩られていた。
「おい、あれって…」
「ああ、傷無しのアーチャーだな」
その冒険者は有名人だった。
ただし、悪い意味で。
「おい、もっと正々堂々戦えよ!」
「お前、それでも冒険者かよ!」
数々の野次が飛ぶ。
今、魔物と戦っている冒険者の戦いに対するものだった。
その冒険者の戦い方は、短く言えば、安全第一だった。
もちろん、安全は大事だ。
しかし、その冒険者は安全第一しか頭にないのだろう。
逃げて、逃げて、逃げ続け、隙ができれば遠距離から矢を打ち込む。
冒険者という職業についている以上、そんな戦い方は外道だった。
しかし、周りの野次に臆することなく、淡々と魔物を処理していたその冒険者は、最後の魔物を仕留め、何も言わず去っていく。
「全く、冒険者の恥だぜありゃ」
「ああ、全くだ」
冒険者たちは、呆れたという風に話し始める。
そして、しばらくして気づく。
「おい、待てよ。俺たち何のためにここに来たんだっけ?」
「そりゃ、ここの魔物狩りだろ」
「だよな…」
「……」
「……」
「「あの野郎、絶対許さねえ!!」」
そして、獲物を横取りされて激怒する冒険者たちを他所に、一人の少女が呟く。
「かっこいい…」
その少女の目の奥に宿るのは、去っていった冒険者に向けた憧れの眼差しだけだった。
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