【エピソード】出会い Player:Swift
膝を付き、柔らかい草地に座り込む。粒子化してゆくマンドラゴラを見つめながら、隣に佇む美しい金色の髪を携えた彼女にふと微笑み掛ける。
この世界で初めて彼女と出会ったのは、そう。あの初心者ギルドでの出会いが始まりだった。美しい容姿を持ちながらも、無口な彼女に対して、正直初めはおとなしいといった雰囲気を越して変な子だな、なんて印象を持っていたのを覚えている。
「隣座っていいかな?僕はスウィフト。君は?」
僕の言葉に動揺しながら顔を伏せる彼女。
「リンス……です」
恐らくはあまり異性と話した事もないんだろう。内気そうな彼女の性格はその一言で感じ取れた。他愛も無い話題を振りながら彼女の緊張をほぐしていると、次第に彼女は微笑みを見せてくれるようになった。
――なんだ、笑顔は可愛いじゃないか――
それから暫く彼女と話していると、一人の黒髪の青年がギルドへとやってきた。
目鼻立ちの整った爽やかな顔立ちの青年、完全に見た目からの印象だが、どこか親しみやすそうな雰囲気を感じた。
青年はキョロキョロとギルド内を見渡しながら一人呟き声を上げた。
「困ったな……ここでいいのかな」
立ち往生している青年。見た感じ旅人装備を着ている事からも自分と同じ初心者の冒険者のように見受けられた。
「どうしたの」
気づけば思わず僕は声を掛けていた。
そう、それがエルツとの初めての出会いだった。
クリケットの初心者講習を受けて、意気投合した僕らはそれから三人で一緒に行動するようになった。あれから三人で様々な出来事を体験した。エルムの村での団欒。シャメロットとの格闘。チョッパーやユミルとの出会い、そしてコミュニティーへの参加。それからシムルーの討伐、青の洞窟の美しい光景を前に共に感動を覚えたのも彼らだ。
この世界での出来事は、その一つ一つが本当に大切な思い出だ。
「どうしたの、スウィフトくん」
覗き込むリンスにふっと微笑する。
「いや、何でもないんだ。ただ色々振り返っちゃってさ。本当に楽しかったなと思って」
その言葉にリンスもまた微笑を浮かべた。
「私も、ここへ来れて本当に良かった」
その言葉に頷く。
「あいつ、今頃何やってんだろな」
木立の中に静かに響く声。その声は彼の元へ届いているだろうか。