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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第三章 『変わり行く世界』
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 S20 森の異変

 一度パターンを作ってしまえば狩りは大分楽になる。何回か立ち回り、それぞれの働きを身体で理解してからは狩りの速度は次第に上がっていった。

 ポンキチが獲物を誘き寄せ草むらに身を隠すや否や、樹上のエルツとペルシアがターゲットを取る。時折、地上のポンキチがクリーンヒットによってターゲットをとってしまった場合についても、樹上の二人がSTRING'S SHOTによってターゲットを取り返す。その流れは実にスムーズなものだった。


「これならばLv9のMush Hopperでも大丈夫そうですね」


 ミサの言葉にエルツ達は笑顔で顔を見合わせる。

 それからユミルチームと合流し、そろそろ奥の狩場へと移動しようという話になった。

 だがその前に。


「いったん昼休憩しない?そろそろお腹が……」


 エルツの言葉にはっとした表情を見せるユミル。


「すっかり忘れてました。そうですね、そろそろお昼にしましょうか。ここからちょっと歩いたところに休めるポイントがあるので、そこでお昼にしましょう」


 そうして、一同は七人で輪を囲み、それぞれ持参した食事を広げ楽しく団欒だんらんを始めるのだった。

 

「え、ポンキチくんていくつなの?」とサンドウィッチを口に運びながらユミル。

「ボクですか?永遠の十六歳ですよ」

「何それ」と笑みを零す女性陣。


 そうか、ポンキチ十六歳だったのか。ちょっとしたジェネレーションギャップを感じながら食事を進めるエルツ。


「ああ、でも私の一つ下だ」とユミル。


 という事はユミルが十七歳か。


「ミサは私の一つ上。ペルシアちゃんがさっき聞いたらポンキチくんと同い年で十六。エルツさんとアリエスさんが二十三でしょ。え、じゃあトマさんは?」


 ユミルの質問にトマは恥ずかしそうに笑う。


「僕かい?今年で三十四だよ」

「え、若ーい!」


 女性の「可愛い」だとか「若い」だとか、そんな褒め言葉ほど当てにならないものはないが、少なくともトマさんは悪い気はしてないようだった。


「そうかい?そう言ってもらえると嬉しいな」


 照れるトマさんに笑顔を向ける女性陣。

 会話がどこぞの合コンと化す前に、エルツとアリエスが二人連携して上手く狩りの話を折り交ぜながら、昼食も終始、和やかな雰囲気に包まれながら過ごすと、いよいよ一同は森の奥へと向けて立ち上がる。


「さて、いよいよ本番か」とエルツ。

「少し緊張しますね」とアリエスがそれに続く。


 引き続き、ユミルとミサの先導の元、一同は森の奥へと歩を進めてゆく。

 パーソナルブックで周囲のモンスターのLvを確認しながら進むエルツ。成る程、確かに森の奥へ進むにつれてMush HopperのLvも上がって行くようだった。だが、練習通り動ければ問題は無いだろう。Lvが上がってもこちらの立ち回りには特に変更は無い。連携を上手く保てればここでも効率化を計れる筈だ。

 そうして、森の中を歩く事二十分、ふと先導していた者達の足取りが止まり、後続もその足を止める。


「狩場って……ここ?なんかモンスター見当たらないけど」


 エルツの言葉通り、周囲にモンスターの姿は見当たらない。一同が当惑する中、ユミルが一言呟いた。


「あれ……なんかおかしくないミサ?」


 無言で頷くミサの姿にエルツが咄嗟に尋ねる。


「どういう事?」


 エルツの言葉にユミルとミサは辺りを見渡しながら呟く。辺りにはモンスターらしき姿は見えず、代わりに小さな蜂が辺りを飛び回っていた。


「本当なら、ここが狩場のはずなんですけど」


 どういう事なのだろう。ここが狩場ならモンスターの姿はどこに?高レベルの冒険者プレイヤーが乱獲でもしていったのだろうか。だが、そんな冒険者の姿はどこにも見当たらない。


「もしかして、バージョンアップでモンスターの位置が変更になったんじゃない?ん、蜂が多いな」

「あ……そうかもしれないです」


 エルツの言葉に、ユミルが俯いたその時だった。

 突然、ペルシアが悲鳴を上げた。その異常な事態に一同が慌てて彼女の方を振り向く。


「どうしたんだい!?」


 トマの隣でペルシアは真っ直ぐ頭上を指差していた。突然の事態に当惑する一同。


「ペルシアちゃん落ち着いて。どうしたの?」


 ペルシアはユミルの問い掛けにも変わらず、ただ青褪めた表情で頭上の一点を指差していた。そのあまりの様子にふと頭上を見上げる一同。

 そして、その指先が示す先に存在する巨影に一同は閉口した。ツァーレンウッドの大木に登り、低木に掛かる蜂の巣をその腕に抱える巨人。その影を見つめながらユミルは静かに呟いた。


「ちょっと待って……ちょっと待ってよ! おかしいよ、なんでこんなところに!?」


 明らかに動揺したユミルに続けてアリエスが口を開く。


「そう言えば……この森の守護者は蜂の巣が掛かる低木の周りに出現するって話を聞いた事があります」


 この森で守護者と呼ばれる存在は、ある一種のモンスターを除いて他に居ない。

 ふとエルツは、攻略掲示板で読んだある情報を思い出していた。


――もし、低レベル者が森の中で遭遇してしまった場合、その生存確率は極めて低い――


 エルツ達を遥か頭上から見下ろすそのモンスターの青白の大きな瞳。


Toroi(トロイ)です!皆逃げて!!」


 ミサの叫び声。一同が事態の深刻さに気づいたその時、頭上から巨影が舞い降りた。


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