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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第三章 『変わり行く世界』
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 S19 ツァーレンウッド森林地帯

 スティアルーフ東門を出発して、草原を進む事、四時間後。一同は目的地ツァーレンウッド森林地帯へと到着していた。

 一同の目の前に立ち並ぶは樹齢数百年という年月を重ねたであろうメタセコイアに似た大木群ツァーレンウッド。青々とした松の葉に似た針葉を生い茂らせたその巨木。現実に実在するメタセコイアの高さは成長すると最終的に三十から四十メートルと言われている。しかし、このツァーレンウッドは裕に百メートルを超えていた。

 あまりにその圧倒的な迫力に今回初めてここを訪れたメンバーが言葉を失っていると、ユミルとミサが笑顔で一同の先導を始めた。


「皆さん、口開いてないで、さぁ行きますよ」


 森の中は薄明るく、柔らかな青葉が敷き詰められていた。ツァーレンウッドの森中には低木も生えており、それでもその高さは十数メートルにも及ぶが、何とも目新しい樹葉の二重カーテンが頭上を覆っていた。低木の木の根元には、所々に全長一メートルはあろうかと思われるキノコの化け物<Mush Hopper>の姿が見受けられた。彼らが今回の自分達のターゲットとなるモンスターだ。キノコに生えた真っ白な手足を使って蛙のように、飛び跳ねるその姿はなんとも不気味な姿に映った。その上、胞子には毒まであるというのだから油断も隙も無い。だが、見た限りそこまで敏捷性の高いモンスターでは無さそうだ。遠距離から複数人で攪乱攻撃を行えば、何とか上手く狩れそうだと、エルツは考えていた。


「この辺りのキノコはまだレベル低いので、先に練習しておきましょうか」


 ユミルの提案に頷く一同。


「それじゃ実際に組むパーティーに分かれて練習してみましょう。エルツさん、ポンキチくん、ペルシアちゃんの三人はミサが、アリエスさん、トマさんチームは私がもしもの時は援護しますね」


 もしもの時は援護、その言葉は実に頼もしく感じられた。それから。基本的な立ち回りを説明し始めるユミル。今回の狩りにおいては弓が有効という事で、皆それぞれ購入出来る者は弓を仕入れてきたようだった。トマは慣れない武器を手に、弓の弦の感触を確かめながらアリエスとその立ち回りについて小声で話し合っているようだった。

 

「キノコ狩りで重要な事はとにかく近寄らない事です。キノコの胞子は全身から放出されるので、近寄るだけで毒に犯されてしまう可能性があります。一般的に有効とされている立ち回りは木の上からひたすら撃つ事です」


 ちょっとした笑みを含みながらそう語るユミル。だが、その内容は冗談ではないようだった。

 

「木に登ってしまえば、相手は何も出来ないので。定位置に誘き寄せるために一人がまず囮になります。誘き寄せたら木の上で構えていた人は、獲物に向かって集中的に撃って下さい。誘き寄せた人は近くの草むらに身を隠してもいいし、木に登ってもいいし。キノコは強い衝撃を受けた方向へ向く特性があるので、草むらへ身を隠した場合は、あまり強いダメージを与えないように注意して下さい」


 なるほど、立ち回りはよく分かった。間違えてもキノコのターゲット取って誘き寄せ、草むらへ身を隠した時にSTRING'S SHOTなど撃ってターゲットを自分に向けないように注意しなければ。


「強い衝撃か、STRING'S SHOTは安易に使うのは禁物ですね」


 そう呟くアリエス。アリエスもエルツと同じ事を考えていたのだろう。

 それから一同はそれぞれのパーティに分かれて早速狩りを始めた。そう遠く離れない位置に陣取った二組。

 ミサに引き連れられたエルツ達は、一本の木の根元で横になっていたMush Hopperをターゲットにそれぞれ位置取り始める。初めの囮役はポンキチの希望で彼が引き受ける事になった。

 エルツとペルシアはそれぞれ近場の登りやすそうな低木の幹枝の上で構える。その高さは五メートル程。幹には無数の窪みがあり、非常に登り易かったものの実際に登ってみると、その高さは少し眩暈を覚える程の高さだった。ここで、身体のバランスを取りながら獲物を打ち抜くというのはなかなかのボディバランスを要求される。


「それじゃ行っきまーす」


 ポンキチの合図にOKサインを返す。

 獲物に狙いを定めるポンキチの腕が強く弦を引いた。


「バシューン!」


 ポンキチの掛け声と共に今その矢が放たれる。

 突然の衝撃に、飛び起きたMush Hopperが一直線にポンキチ目掛けて飛び跳ねる。それはエルツが予想したより遥かに機敏な動きだった。

 

「うわ、速っ!?」


 ポンキチは全力で駆けながら、Mush Hopperと距離を取り近くの草むらに飛び込んで姿を消した。そんなポンキチの後を追って、駆けていく獲物に対して、エルツは木の上から必至に矢を放つが、なかなか捉える事が出来ない。このままでは、ターゲットがポンキチにそのまま向いてしまう、焦るエルツがありったけの矢を放ったその時、向かいの木の上で、じっと獲物に狙いを定めていたペルシアが見事に攻撃をヒットさせてターゲットを取った。Mush Hopperは予想しなかった衝撃にただその場で右往左往しながら、頭上のペルシアを見上げ始める。

 こうなってしまえば後は容易いものだった。たじろぐ的に対して、一同は三方向からその矢を浴びせ掛ける。獲物は最後まで何も出来ないまま、その場に崩れ粒子化を始めた。

 

「素晴らしい立ち回りですね」


 ミサの言葉に気を良くする三人。

 一方のアリエス・トマチームも狩りは順調のようだった。

 トロイの森でのキノコ狩りは好調な滑り出しを以って、こうして開始されたのだった。

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