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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第三章 『変わり行く世界』
82/242

 S14 再びコカトリス狩り with Ponkiti & Pelsia


■双華の月 土刻 8■

Real Time 4/23 7:33

 ソロ狩りのレポートをまとめて数日が過ぎた頃、エルツは草原の中で再びコカトリスと対峙していた。


Kueeee(クエェェェェ)!」


 獲物に向けて赤銅の剣と盾を構えるエルツ。今朝ポンキチから誘いのメールを受け、エルツは再び平原でのコカトリス狩りに戻ったのだった。久し振りという程の期間でもないが、濃密な時間を過ごしていたせいか、ポンキチとペルシアと組むのは随分懐かしく感じられた。相変わらずの華麗な立ち回りを見せる二人。経験値効率については、ソロ狩りを経験してしまった今となっては少し物足りないが、それでもやはりパーティーの楽しみはそれとはまた別のものだった。


「むうぁ、すいません、お兄様、リンク処理お願いします!」

「了解!」


 迫り来る二匹のコカトリスを迎え撃つエルツ。突き出してきた片方の嘴を盾で弾き返し、一方には剣撃を浴びせる。コカトリスのリンク処理も今となってはお手の物だ。挟まれて背後さえ取られなければ、決定的なダメージを受ける事は無い。リンクした際に重要な事はまず獲物達を一つの視界に収められるように位置取る事。あとはWAを駆使して、早期撃破を心懸ければいい。ターゲットに的確に一匹ずつダメージを重ね、そして撃破して行くエルツ。

 残る一匹の嘴攻撃を盾で弾きながら、後腰に剣を逆手に構えるエルツ。巧みに足を使い、獲物を攪乱し隙を窺う。そして、獲物が大きく振り下ろした首を弾き返したその時。


Bikerバイカー Slashスラッシュ!」


 止めの一撃。その崩れ落ちたコカトリスが粒子化を始めるのを確認すると、エルツは背後で既に獲物を倒し見学していたポンキチと笑みを交わす。


「流石というか頼もしいというか、隙が無いですね。加えて、移動しながらのバイカースラッシュ、お見事です!」

「バージョンアップの賜物かな。感謝しないと。でもそんなに難しくないよ」


 二人は体力回復のために低木の前の柔らかな草地へと腰を下ろす。その視界の片隅で光る閃光。ペルシアがSTRING'S SHOTを決めたのだった。その光景を微笑ましく見つめながら二人は言葉を交わしていた。


「移動しながらのストリングスショットか。ペルも今回のバージョンアップで恩恵受けてるみたいですね。でも、お兄様も動き鈍ってないとこ見ると、さてはバージョンアップの時もコカ狩りやってましたね、ずるい!」

「いや、コカ狩りではないんだけどね」


 冗談めかしたポンキチの責め句に笑いながらエルツが返答したその時、丁度ペルシアが狩りを終えて二人の元へと戻ってきた。


「なになに、なんですか?私もお話に交ぜて下さい」

「バージョンアップ中に何やってたかって今話してたんだ」


 笑顔を見せるペルシアに、エルツはパーソナルブックを開き指を走らせ始める。


「そうだ、折角だし一応二人にも渡しとこうかな」

「何をです?」


 キーボードを弾くエルツの指先を見つめながら疑問の表情を浮かべるポンキチとペルシア。


「実はさ、このレベル帯で有効って言われてるソロの狩場に偵察に行ってきたんだ。ちょっと書き方雑だけど、無いよりはマシという事で送るね」


 送信して数秒後、二人のパーソナルブックにメールが届く。二人はそのメールの内容に目を沿わせ始める。


「これって、もしかしてお兄様の体験レポートです!?」

「レポートなんてそんな大したもんじゃないけど、なんか自己満足みたいでごめん」


 エルツがそう言って苦笑いすると、ポンキチが声を張り上げた。


「そんな事ないですよ、お兄様!これ、メチャメチャ参考になりますよ。CITY BBSでもこんな具体的な情報ないですもん。前からこの狩場ちょっと興味あったんですよ。ただソロだからちょっと敬遠してたんですけど」


 メールの内容をじっと見つめていたペルシアが口を開く。


「ねぇ、ポン。ラクトン採掘場の経験値すごいよ」

「何ですか、この数値。新手のジョークですか」


 口をあんぐり開けて呟くポンキチ。その様子にエルツが思わず吹いた。


「いや、ジョークじゃないけど。確かにラクトン採掘場は凄かったな。ただ数狩らなくちゃいけない上に、狩場のキャパシティが狭いんだよね。自分行った時、独りだったから、狩場独占出来たんだけど。シトラス海岸の方は広いし獲物もたくさんいるから、人数多くても大丈夫だよ」

「何か……これ見るとまともにコカ狩ってたのがバカみたいだ」


 そう言って地面に膝と手をつき項垂れるポンキチ。そんなポンキチを慰めながらペルシアはエルツに礼をする。


「エルツさん、本当にありがとう」


 ペルシアに並んで何度も礼をするポンキチ。礼を言われるのは気分が悪いものではないが、そんな大した事はやっていないだけに恥ずかしいものだった。


「それじゃ、そろそろ再開しよう」


 エルツの言葉に一同は再び狩りへと戻る。澄み渡った青空の下、草原に響くはコカトリスの鳴き声。そこにあるのは、ただ狩るモノと狩られるモノの関係だけだ。

 立ち昇ってゆくLEライフエナジーを見つめながら、三人はただコカトリス達の冥福を祈り、その手に武器を握り締める。彼らのその悲痛な叫びがいつか天に届く日が来る事を願って。


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