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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第二章 『星々の輝き』
56/242

 S32 理想形

 原野に舞う三人の影。影達の見事な個人演戯の前に、次々と撃破されていくコカトリスの群れ。


「次釣ってきまー! 休んでて下さいー」


 意気揚々と駆けていくポンキチ、パーティーメンバー全員が釣りを出来るこのパーティー。三人は釣りと休息を交互に回しながら、狩りを効率化していた。そして何よりこのパーティの真価は。


「どっち向いてんだっての」


 まるでコカトリスを翻弄するかのように死角から突きつけられる短剣。その怒涛の攻撃の前にコカトリスが怯んだその一瞬をポンキチは見逃さない。


「Stinger Bite[スティンガー・バイト]」


 脇に構えた位置から一直線に獲物の急所目掛けて突き出される短剣。

 コカトリスの心臓部に突き立てられた短剣から大量のライフエナジーが漏れ、そして粒子化を始める。


 また一方、ペルシアは巧みにコカトリスと距離を取りながら的確に、矢によるダメージを与えていく。走りながら矢を打つその姿は、まるで古芸の流鏑馬を見ているようなそんな錯覚にさえ陥る程、優雅で華麗な動き。止めの閃光、STRINGS'S SHOTがコカトリスの眉間に突き刺さるとコカトリスは粒子化を始める。


 そして、残るはエルツ。剣を右手に盾を左手に構えた攻防一体のスタイル。

 だが、そんなエルツのスタイルにも、このコカトリス狩りにおいてはある変化が現れていた。


「Kueee!!!(クェェェ)」


 悲鳴を上げるコカトリスに対しての圧倒的な攻め。そして、それを可能にしたのが、昨日のオルガによる指南の賜物だった。剣の振り方一つで、その戦闘は劇的な変化を遂げる。そして、何より大きいのが、オルガに伝授された新しい剣技の存在。

 エルツは剣を今コカトリスにゆっくりと向ける。


三散華さざんか


 一斬。右肩から肢体の左下の向けての一閃。

 二斬。相対する左肩から肢体の右下へ向けての一閃。


 そして……、今エルツの刃が光に包まれる。


 三斬。頭から肢体下に向けて振り下ろしの一閃。 


「Kueee!!!(クェェェ)」


 鳴き声を上げながら、今粒子化を始めるコカトリス。

 同時にエルツの身体から立ち昇る真白なレベルアップの光。


――これで、Lv6か――


 三人の歯車が組み合わさった今、一同にとってコカトリス狩りなど容易い。

 異様な高揚感に包まれながら、一時間に六匹というペースでたっぷり三時間の狩りを終えた一同は口々に互いを褒め称える。


「おめでとうエルツお兄様、いや〜それにしても、聞きしに劣らないすんごい立ち回りでした。リンク処理も一人で二匹普通に倒してたし。自分もそれなりに自信あったんですけど、正直、完敗でし」

「ね、だから言ったでしょ」とペルシア。


 二人の言葉にほっと一息つくエルツ。どうやら満足してもらえる立ち回りが出来たようだった。自分的にも納得のいく内容の狩りだったと思う。そして、そんな充実した狩りが出来たのも、他ならぬポンキチとペルシアの二人のおかげだった。


「いいパーティをありがとう。本当に二人のおかげだよ」


 エルツの言葉に嬉しそうに微笑む二人。

 

「また是非パーティやりましょう。明日とかまたどうですか?」とポンキチ。

「ごめん、明日から刻末にかけてはちょっとコミュニティの方で大切な用事があるんだ。来刻からはまた良ければ是非お願いするよ」


 エルツはそう言って申し訳なさそうに頭を下げる。


「残念でし」とポンキチ。


 クリケットの物真似なのか、微妙に挟んでくるポンキチのネタを笑いを堪えながら敢えてスルーするエルツ。


「そうですかー、わかりました! じゃ、またその後でお誘いしますね。エルツお兄様フレンド登録いいですか?」

「勿論」


 そうして、一同は街へと帰り、また再会を約束してパーティを解散する。

 なんとも後味の良いパーティだった。効率に拘る気は無いが、今日は今まで最高の効率を弾き出した。会話も多く、本当に理想系のパーティだった。

 だが、なんだろう。どこか、エルツの心には物寂しさがあった。この世界のこのシステム上、Lvの上下には個人差がある。となれば、当然パーティを組む相手も変わってゆくのだ。Lvを上げてしまった今、かつてのように、またスウィフトやリンスとLv上げを楽しむ事は出来なくなった。そして、それは今回のパーティでも言えるだろう。レベル上げにおいては色々な冒険者とパーティと組める反面、同じ冒険者とずっとパーティを組む事、いわゆる固定パーティは難しいのだ。だが、それもまた一つのこの世界の形。


――今はこの時を享受して受け入れよう――


 そうして、エルツは一人B&Bへと足を向けた。


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