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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第二章 『星々の輝き』
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 S21 Solo Play<ソロプレイ>

 ソロ狩りを始めて数日が経過した。馴れない魔法や武器を使用して余計な事さえしなければ狩りは順調に進む。


「ドロップしたか、よし」


 手に入れたカードを手にパーソナルブックに仕舞い込むエルツ。

 特に問題も無く、経験値とドロップ品を稼ぐ日々。そんな日々の中、ちょっとした孤独感にエルツは苛まれていた。

 ゲームをしていて孤独感を感じた事は無い。何故なら現存するオフのRPGのほとんどは一人で遊ぶ事を想定して作られたゲームがほとんどなのだ。一人で遊ぶ事を目的としたゲームに対して、孤独感を感じるようなユーザーはゲームなどしないだろう。エルツ自身、そんなオフRPGをしていて孤独感を感じた事は無い。単調なLv上げでさえも、自分なりの攻略方法ルーティーンを開拓していく事を楽しんでいた。

 だが人間とは実に欲深い生き物というべきか、一度この世界で仲間との狩りの楽しさを覚えた今、エルツにとって少し物足りないというのが正直な感想と変わった。ソロで敵を倒し、経験値を稼ぐこの行為は、現実のオフラインゲームと性質自体はそう変わるものではない。ただ変わるのは圧倒的に具現化されたこの世界。初めてこの世界にやってきた時は、その圧倒的な世界の存在に、魅了されるばかりだったが、人間とは恐ろしい生き物で、慣れれば次々と次の新しい満足度を要求するものなのだ。だが、勿論、この世界に依然魅了されている事に変わりは無い。ただ、一人になった今、自分なりにこの世界をより楽しむ方法を見つけようとエルツはそんな想いでいた。


 完全に見切ったマンドラゴラの動きに対して的確なダメージを重ねていくエルツ。鞭のような蔓の両腕を左右に振り回すときは、直径一メートルちょっとの円状のその攻撃範囲から身をかわし、攻撃後、決まって生じるクルクルと蔓を身体に巻き取るその動作の際に切り込む。そしてダメージを受けた際に、一定確率で発生する『悲鳴スクリーム』の予備動作が確認できたら耳を塞ぐ。つまる話、マンドラゴラには「腕を振り回す」「踊る」「叫ぶ」の三つの動作しかないのだ。


 マンドラゴラのスクリームの予備動作を確認したエルツは、耳を塞ぎやり過ごす。それぞれの動作に対して一つ一つ対策を考えれば、狩るなど造作もない事だ。対策を練れば余計なダメージも減り狩りの効率も上がる。その効率はエルツ一人で狩っているにも関わらず、三人で狩っていた時とそう劣らない成果を上げていた。

 一時間に約三匹というペースで一日六時間、平均狩数は二十匹弱。Lv4〜5のマンドラゴラを対象としているため一日二十五前後の経験値を、またドロップ品としてはマンドラゴラの根を平均五枚(換金額:285ELK)というのが一日の成果であった。


 手に入れた資金は生活費を差し引いてもお釣りがくる。そのお金を持って、先日の舞闘祭の賞金も合わせ、エルツはショッピングを楽しむのだった。当面は丈夫そうな、鉄を革で覆った水筒を購入し、狩りの長期戦に備える。街の武器防具屋では銅製品を扱う『Beginner's Shop<ビギナーズ・ショップ>』にてLv1〜装備可能な防具(銅兜、銅鎧、銅足具)を発見したが、エルツは敢えて購入を控えた。値段の問題もあるが当面マンドラゴラ狩りの生活を考えると、軽装備の方が狩り易い。それに、銅装備を購入するくらいなら、Lv5からのバロック装備を購入する方が今後のためには無駄が無い。エルツはそう考えたのだった。


 アルカディアで流れる緩やかな時を感じながら、エルツは一人街の雑踏の中に姿を消していく。

 誰にも邪魔されない一人の時間。


――今は、ただ与えられた時間を楽しもう――


 そうして、また今日も一日という時間が流れ去って行く。


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