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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第二章 『星々の輝き』
40/242

 S16 VS Mandragora<マンドラゴラ>

 スティアルーフの広場から北東、北西に存在する二つの門。エルツ達が北西で見たその西門と同様に、その逆位置には東門と呼ばれる白亜の門がある。

 これらの対となる双門は二つで一つ。この街のシンボルなのである。


 エルツ達は東の白亜の門をくぐると、東エイビス平原と繰り出した。

 東エイビス平原は西エイビス平原と比べてその総面積は約七分の一の大きさである。西エイビス平原に広がる広大な原野に対し、東エイビス平原では、小さな森が散開して見られる。そこには当然生態系の差異も生じ、プレイヤーは目的に応じてエリアを行き来する事になる。


 エルツ達が目指したのは街からそう遠くない森の一角だった。森というよりは林に近い。林の中は、背の高い広葉樹によって光が遮断され、若干薄暗かった。

 一同は林の中をアクティブモンスターの出現を警戒しながら注意深く進み、目的のモンスターを探し歩いていた。

 そして、林の中の舞い落ちた葉が積もる柔らかい足場で、ピョコピョコと不可思議な動きをする生物を発見する。


「見つけた……」


 スウィフトはそう呟くと、音を出さないよう、手を振り上げて皆に無言で合図を送る。

 集まってきた一同の前で依然、こちらに気づいているのか居ないのか、体長六十センチメートル程、巨大な木の根に蔓がゆらゆらと舞うその奇怪な生物は、ただその場でクルクルと舞い続けていた。

 じっとパーソナルブックを見つめるスウィフト。


Mandragoraマンドラゴラ)、Lv5か、どうする?」


 スウィフトの言葉にエルツはふとした疑問を口にした。


「あいつってさ。あそこに生えてるんじゃないの?」


 その疑問を確かめるべく、エルツはPBで装備を弓へと変更する。


「確かめてみるか」


 弓で遠距離から攻撃できるならそれに越した事は無い。

 一同は息を呑む中、エルツは今、銅の矢を撃ち込んだ。

 矢は確実にマンドラゴラの身体を捉え、そしてマンドラゴラの動きがピタっと止まった。


「ん……動かないな……どうしたんだ?」


 そうして、エルツ達が不信に思って一歩踏み出したその時だった。

 突然まるで地を這う様に、蔓の手を振り回しながら、エルツ達目掛けて襲い掛かるマンドラゴラ。その世にも恐ろしい姿にエルツ達は悲鳴を上げる。


「ぎゃぁぁぁ!」


 咄嗟に背を向け逃げ出すエルツ達。散開するエルツ達に対して、マンドラゴラはターゲットを絞れずクルクル回り出し、そして不可思議な挙動を始める。その場でピョコピョコと踊りだすようなその動き。そして、マンドラゴラが小さなその口を開いた次の瞬間。


Piiiiiiiiiピィィィィィィィ


 マンドラゴラから突然発せられたその強烈な鳴き声に思わず尻餅をつく一同。

 身体が痺れるようなその感覚に一同が戸惑う中、マンドラゴラは一人の冒険者にターゲットを絞ったようだった。

 鞭のようにしなる蔓を振り上げて、エルツ目掛けて襲い掛かるマンドラゴラ。

 パァンという乾いたスラップ音と共にエルツの顔が苦痛の顔に歪む。


「エルツ! クソ、身体が動かない……」


 必死に身体を奮い起こそうとする眼前でエルツがいち早く麻痺状態から回復し、マンドラゴラから駆け去り距離を取る。ターゲットを見失ったマンドラゴラは再び林の中で、徘徊を始める。


「Change Weapon 銅の斧ブロンズアクス


 スピードはそんなに機敏では無い。ならば攻撃力に特化した武器で、一気に勝負を決める。エルツはそう考えていた。マンドラゴラ目掛けて手持ちの銅の斧ブロンズアクスを思い切り振り翳す。

 マンドラゴラの彫刻のような垂れた瞳がエルツが捉えた時には、エルツの斧がその頭を捉えていた。溢れ出るライフエナジーの光。衝撃にジタバタともがくマンドラゴラを見てスウィフトとリンスが遅れて、攻撃に加勢する。

 再びエルツが銅の斧を振り抜くと、それは空を切った。地を這うように逃げ出すマンドラゴラに慌てて追いかける一同。そして、突然マンドラゴラがその動きを止めて振り向いた。モゴモゴとするその奇怪な動き、今ゆっくりとマンドラゴラの口が開く。


「皆、耳を塞ぐんだ!」


 エルツの言葉に一同は一斉に耳を塞ぐ。

 その鳴き声は耳を塞いでいても、肌を通してビリビリと伝わってきた。

 マンドラゴラの固有技 Scream[スクリーム]である。


 自らの身を守るために懸命に鳴き声を上げたマンドラゴラもやがては力尽きる。

 最後は、スウィフトの槍によって突かれ、マンドラゴラは粒子となって消えた。


「ふぅ、これがマンドラゴラか。あの鳴き声は厄介だけど、あんまり耐久力も無いし狩りやすいかも。ムーキャットよりは慣れれば落ち着いて闘えそうだね」


 片手斧を下ろしエルツはそう語る。


「確かに、あの鳴き声の前に予備動作もあるし。狩りやすいかも」とスウィフト。


 残念ながらドロップは無かったが、狩り易い獲物である事は認識できた。


「スニーピィさんはドロップ率三割って言ってたし、信じてここで狩りを続けようか」とエルツ。


 こうしてターゲットは絞られた。

 小さな林の中へ響く掛け声。

 そこには日が落ちるまでマンドラゴラ狩りに精を尽くす三人の姿があった。



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