S13 白亜の門と広がる世界
■双華の月 氷刻 4■
>> Real Time 4/22 3:26
昨夜は楽しい宴だった。歓迎会は夜明けまで続いた。明け方五時頃まで続いた飲み会ではエルツ達はメンバーから様々なゲームの情報を聞く事が出来た。
B&Bへと明け方戻ったエルツ達は、10:00のチェックアウトぎりぎりまでぐっすりと眠りについていた。おかげで朝食は食べ損なったが、それもしょうがない。食べ損なった朝食代はまた今日の稼ぎで取り戻せばいい。エルツ達は少し眠たい目を擦りながら、B&Bから明るい日差しの下に身体を晒した。
「気持ちいい天気だな」
伸びをしたエルツは辺りを見渡しながらふとした疑問を口にする。
「あれ、チョッパーは?」
「なんか、今朝早くウィル君に連れられてったみたい」
エルツの疑問にリンスはそう答えた。
「そっか、大丈夫かなチョッパー」
昨日のウィルというあの過激な性格の少年がふと一同の脳裏を過ぎる。
「まあ、なんとかなるか。多分……」
一抹の不安を残しながら、一同はそうして広場を後にする。
広場の西から延びた道幅十二メートルの直線の石畳の舗道。蒼い海水に両端を包まれた、冒険者が行き交い、釣り人の姿も見受けられるその舗道の先には、エイビス平原と呼ばれる壮大な草原と街とを隔てる白壁の門がある。通称『西門』と冒険者の間で呼ばれるこの白門は、この街の象徴的な建築物であり、待ち合わせの場所としてもよく用いられるスポットの一つだった。
街の西側から伸びる舗道を歩きながら門を目指し、三人はこの大陸での戦闘に想いを馳せていた。
「どんなモンスターが居るんだろ。楽しみだな」
「見て、綺麗」
リンスが舗道端の石柵に身を乗り出して声を上げた。
透き通った海水に漂う遊魚たち。
リンスの隣では丁度釣り人が竿を振り上げ、掛かった魚を引き上げるところだった。
「へぇ、こんなところまで海があるんだ」
それもそのはず、このスティアルーフという街は海上に作られた街なのである。
さしずめ、その姿は[水上街]といったところである。
エルツ達がそんな周囲の景色を楽しみながら歩いていると、前方にはいつの間にか白壁の門がはっきりと見てとれる距離まで近づいていた。
緩やかなアーチを描いたその白壁の周りには多くの冒険者達が壁に背凭れ、待合人を待つ姿が見られた。
「ここは待ち合わせ場所には確かにもってこいだな」
白壁は思ったよりも高く、十メートル近い高さがあるように思えた。
真白なその外壁が太陽光を反射して輝くその姿は、『美しい』という言葉以外の形容が思いつかない。
そして、一同は門の外に広がるその世界の姿を見て立ち尽くす。
「圧巻だな」
門の向こうに広がるは緑の草原。それは圧倒的な迫力を持ってエルツ達にその姿を現していた。その光景を前にすれば、誰もが自分がいかに小さき存在かを思い知らされる。
広がる大自然と狩りの香り、それはまさにエルツが夢に描いていた世界の姿そのものだった。
踏み止まる自らの脚を奮い立たすように、エルツは声を掛ける。
「行こうか」
いざ、未知の原野へ。
白亜の門の向こうに広がる世界を求めて、今エルツ達は門をくぐった。