S11 月夜の舞闘祭 月下乱舞編
振り上げられた槍が今下ろされる。
「はじめ!」
月夜の舞闘祭の開幕の合図。そして試合開始、直後。一同はその場で硬直する事になる。
開始直後に鳴り響いた爆音。爆発による爆風を全身に浴びながら一同はただ現状の把握に必死に努めていた。
「あの童顔、やりやがったな」
ドナテロが呟くその対角線上でスニーピィは微笑する。
一方動揺するエルツ組では、フランクが冷静に指揮を執っていた。
「エルツさん、ウィル。落ち着いて。開幕『Explosion』。スニーピィさんがよくやる手口なんですよ。普段なら本気で当てに来るんですけど。今回は敢えて外してますね。煙幕からの攻撃に気をつけて下さい」
フランクがそう呟いたその時だった。
爆発の煙幕の中から一筋の影が。
「リーベルトの奴、早速仕掛けて来たか」
フランクは飛んできた矢を盾で払い除けるとエルツ達に振り向いた。
「三メートルくらいの間隔を保ちながら、お互いフォローできるように……ってウィル!」
そこには「あぁぁぁぁ」と叫びながら煙幕に向かって全力疾走するウィルの姿が。
「あいつ……くそ」
フランクは肩を落としながらエルツに振り向く。
「僕らは固まっていきましょう。高Lv者が来た場合俺が引き受けるんで。エルツさんはその他の人の相手お願いします」
「うん、わかった」
並々ならぬ緊張感にエルツは息を呑む。
「リーベルト達の立ち回りは大体予測できるけど、その他二組が予想つかないな。特にドナテロさんは好戦的だし要注意です」
晴れてきた煙幕。その先では激しい戦いが繰り広げられていた。
『Tricker』チームと『3S』チームに挟まれ、猛攻を受ける『Striker』チーム。
リーベルト、リンス、ユミルの弓に依る一斉射撃。雨のように降り注ぐその矢を、ドナテロは一身に受けて、仲間達を守っていた。
槍を頭上で回転させるその姿はエルツにとっては見覚えがあった。
「あれって……風車」
コーザ戦で見た風車というあの技。それをドナテロは巧みに防御技として扱っていた。
しかし、不運な事は、その背後に迫るもう一つの攻め手。そこにはスニーピィによって放たれた大きな炎球が迫っていた。
「伏せろ!」
ドナテロの言葉に、その場に倒れこむように身を伏せるケヴィンとチョッパー。
炎球はそのまま『Striker』チームを過ぎ去り、直線状の『Tricker』チームへと飛んでゆく。
「クソ……!」
咄嗟の判断が遅れ、間に合わないと判断したリーベルトは、ユミルとリンスの身体を突き飛ばす。
そう振り向くユミルとリンスの眼前に爆風が巻き起こる。
「リーベルトさん!」
炎球の直撃を受けて、そのまま場外へ弾き飛ばされるリーベルトの姿。
地表に叩きつけられフラフラと立ち上がるリーベルトは残された二人に向かって声を張り上げる。
「悪い油断した……後は任せた!」
リーベルトの言葉に頷くユミルとリンス。
一方その頃、フィールドでは集団戦闘から分散戦闘へと姿を変えていた。
事の始めはドナテロ組が拡散したことから始まった。
伏せてエクスプロージョンをかわしたドナテロ達は、ドナテロの一声で拡散する事になる。
ドナテロは単身『3S』チームへ、ケヴィンは、主核を失った『Tricker』チームへ。そして、チョッパーは一人叫びながら乗り込んできたウィルの相手を。
そんな戦況を見つめ、動きに悩むエルツ達に、場外したリーベルトが声を掛ける。
「傍観か、フランク? お前らしいな」
そんな皮肉めいた発言にフランクは「ほっといてくれよ」と言いつつ、内心ショックを隠せないようだった。
「フランクさん、僕らも『3S』チームに攻撃仕掛けませんか。ドナテロさんと挟み込めば、人数的にも三対三ですし」
エルツの言葉にフランクは頷き、そして二人は駆け出した。
その頃、『3S』チーム周りでは。
「ドナテロ、一人で三人相手にする気か」とスニーピィ。
「いや、そうでもないみたいだぜ」
ドナテロの言葉に振り返る『3S』チーム。そこには走り込んでくるエルツとフランクの姿があった。
「スウィフト、シュラク。二人を!」
「はい!」
スニーピィの指示にまずシュラクが前に出る。シュラクの前に作り出される水球。その水球には見覚えがあった。
「Water Sphere [ウォーター・スフィア] か。直線軌道ですよね」
「へぇ、わかってますね。話が早いな」
エルツの言葉にフランクがすっと進行軌道を変える。
二人が分散してシュラクにターゲットを混乱させる。シュラクが狙いをフランクに絞ったその時、すかさずエルツがシュラクへ詰め寄る。
「させるか」
詰め寄ろうとエルツが身を攻めたその時、進行方向に槍が振り下ろされた。
「スウィフト……」
エルツ VS スウィフト。
「は!」
スウィフトの掛け声と共に容赦のない槍による攻め。
それをエルツは紙一重でかわしながら、攻撃を流していた。
そして、スウィフトが槍を大きく振りかぶり一閃する。
確実にエルツを捉える筈だった。その間合いはエルツのバックステップによって届かぬ間合いへと変わる。
コーザ戦の闘いの時にも見せたエルツの『見切り』。それは同じ銅の槍という武器を使用している限り、スウィフトもまた見切り対象の例外では無かった。
「エルツ、お前」
そして、次に槍を振り上げた時、勝負はついた。槍が振り下ろされるよりも早く、エルツの剣先がスウィフトの首先に突きつけられる。
隣では同時に、シュラクがフランクによって地面に膝をつけさせられていた。
この闘いでの負けとは気力の勝負、故に自分が心が折れた時、負けとなる。
スウィフトはエルツとのこの短い闘いの中で、現時点での埋めようの無い差を感じ取っていた。一緒に闘っていた時は、感じるの事の出来ない、相対して初めてわかるエルツのその戦闘センス。それを肌で感じとったスウィフトは今この場で負けを認めざるを得なかった。
「参ったよ、エルツ」
その言葉にエルツの剣が下ろされる。隣では、スウィフトの降参を見たシュラクが、迫るフランクを前に、彼もまた降参を宣言した。
そして、ドナテロとスニーピィとの闘いでは。仲間が二人離脱し、孤高の闘いとなったスニーピィにとってこの闘いが厳しいものとなった。小さな炎の玉『Fire Ball[ファイア・ボール]を身体周りに漂わせながら、迫りくるドナテロの猛攻に対し続けるスニーピィ。
元より術士とはソロでの戦闘能力はそこまで高くない。仲間と連携する事で初めてその能力を発揮するタイプなのだ。大きな溜めと距離を必要とする術士にとって、ドナテロに間合いを詰められた今スニーピィの勝機は限りなく薄かった。さらに、そこへ詰め寄るエルツ達の影。
しかし、三つの小さな炎の玉を身体周りに漂わせながら、様子を窺がうスニーピィの目は死んではいなかった。
「一対三か……流石にこれはキツイね」
スニーピィへとじわじわと間合いを詰める三人。
そして、三人が一斉にスニーピィに飛びかかろうとしたその時、スニーピィの周りを漂っていた炎の玉が、拡散して放たれた。
距離を詰めていたため、あらかじめ回避体勢に入っていたドナテロ以外、それを避ける術は無かった。小さな爆発と共に弾き飛ばされるエルツとフランクの二人。間一髪でかわしたドナテロはそのまま、スニーピィの元へ詰め寄り、そしてその槍を首に突きつける。もはや身を守る炎球を失った今、スニーピィのとれる策は何一つ無い。
残された『3S』の最後の一人、スニーピィはあっさりと負けを宣言する。
その頃、ケヴィンと対峙していたユミルとリンスは遠距離から、短剣に武器を切り替えたユミルがケヴィンと相対する中、リンスが弓で後方援護する。そんな二対一の戦闘に不利を覚え、咄嗟にケヴィンはターゲットをリンスへと変更し、駆け寄った。近距離戦において、弓が剣に勝てる道理は無い。あっという間に攻め手をとられたリンスの首元にケヴィンが剣を突き当てる。
「武器を捨ててもらおうか」
「ケヴィンさん、卑怯ですよ!」とユミル。
「卑怯も何も、こうでもしなきゃ闘いは終わらないからな。むしろ正当な闘い方と言ってもらいたいね」
動いたらリンスを攻撃する、その脅し文句にユミルは動けない。
そんな状況にリンスが口を開く。
「足枷になってごめんね。私が居なくなれば。後はお願いユミル」
そして、負けを宣言するリンス。
残されたユミル VS ケヴィンの構図。しかし、それはケヴィンにとって計算のうちだった。
どちらが残っても、一対一になれば、ケヴィンにとって負ける要素は無い。
それから、数分後、健闘空しくユミルもケヴィンの前に膝をつき降参する事になる。
こうして、残る『Tricker』チームもフィールドから姿を消した。
一方、フィールド中央のウィルとチョッパーは、初めは武器でまともに闘っていた二人だが、途中ウィルの股間への金的から、二人は武器を投げ出して掴みあい叩き合うことになる。そうなってはもはや子供の喧嘩だった。フィールドをゴロゴロと転がりながら、ゴロゴロゴロゴロ、そのままフィールドの外へ。
そうして、フィールドに残るは後四人となった。
『Sword Man』チーム、エルツ・フランク組VS『Striker』チーム、ドナテロ・ケヴィン組。
戦線離脱したメンバーはただその四人の対峙を見つめていた。
「意外な四人が残ったな。だけど、この闘いはフランク達には分が悪い」とリーベルト。
「たしかに、でも面白い闘いだよ。二人がどこまで頑張れるか興味あるな。特にエルツには頑張ってもらいたいよ」とスニーピィ。
そんな中、相対する四人のメンバーは、言葉を交わす間もなく早くも剣を交えていた。
ケヴィンのバロックソードを銅の剣でかろうじて受け止めるエルツ。
「お手柔らかに」そう言って微笑するケヴィン。
たった数度手を合わせただけだが、スピード、剣撃の重さ。どれをとってもエルツはケヴィンには及ばない事を感じ取っていた。
それから、凄まじいケヴィンの猛攻が始まる。まるで飢えた獣のような、ケヴィンのその戦闘スタイル。防御を無視した戦闘に特化したその嵐のような攻撃の前にエルツは幾度と無く剣撃を身に浴びていた。それでも地に膝着く事無く、ケヴィンの攻撃に耐えていたのは気力以外の何物でもなかった。
そして、猛攻が一瞬ピタリと止まる。その間にエルツは硬直する。
「エルツ避けろ!」
場外からそんなスニーピィの声が聞こえた時には遅かった。
「Biker Slash[バイカー・スラッシュ]」
ケヴィンの掛け声と共に、大きく捻られたその身体から横一閃の強烈な横払いがエルツの腰元にめり込む。
「ぐっ……!」
数メートルの距離を弾き飛ばされ、エルツはその場に沈んだ。
そんなエルツに対してゆっくりと距離を詰め寄るケヴィン。
――立ち上がらなければやられる――
衝撃でまだ痺れている体を奮い起こして、エルツは立ち上がった。
そのエルツの姿に場外から歓声がある。
「大した気力だ、エルツさん。だけど悪いけど手は抜かないぜ」
再び剣を構えるケヴィンに、エルツも呼吸を整える。
この短い攻防で得た全ての情報を必死にフル回転させる。
そして、ケヴィンが動いた。
――落ち着け。初撃は必ず脛骨狙いの袈裟斬りが来る――
硬い金属音が響き。ケヴィンの剣閃が弾かれる。
――第二撃は左腰骨を狙った薙ぎ払い――
再び鳴る金属音。
――そして三撃目は右腰から首に掛けての逆袈裟斬り――
そう、そしてその時が最大のチャンス!
三撃全ての剣閃を弾き返されたその明らかなエルツの剣質の違いにケヴィンが気づいた時、振り上げたケヴィンの体勢目掛けて素早くエルツの剣閃が突き刺さる。
咄嗟のその出来事にケヴィンは一瞬怯みながらも、反撃の手は緩めない。だが、その剣筋も全て空を斬った。次々とエルツの剣がケヴィンを捉える中、ケヴィンの攻撃は逆に完全に空に浮き始める。
そして、ケヴィンが力任せに大きく斬り上げたその時、エルツの姿がケヴィンの視界から消えた。
焦りで我を失ったケヴィンの首元に背後から当てられる剣。
「そんなバカな……」
ケヴィンは茫然自失としていた。仮にも自分はLv8。相手はLv3。その力の差は歴然としている。自分が負けるはずは無い。
現状が飲み込めず、理解に苦しむケヴィン。だが、周囲からその闘いを見ていた者にとってエルツのその動きに起こった急激な変化は、明らかにケヴィンのそれを上回っていた。
「俺の負け……です」
項垂れるケヴィンの前でエルツはすっと剣を降ろす。
場外で声を上げる者は誰も居なかった。ただただその起こる筈の無い番狂わせに誰もが息を呑んでいた。健闘する事はあってもケヴィン相手にエルツが勝利する事など誰が予測できたであろうか。
「ありがとうございました」
そうして、エルツは次の戦場へと向う。
ドナテロとフランクの闘いは予想通り、フランクにとって厳しいモノとなった。圧倒的なドナテロの手数に加えて、天才的な読みを見せるドナテロに対し、明らかに疲労の色を隠せないフランク。
「どうした、フランク。この闘い、全てはお前に掛かってるんだぜ」
「わかってますよ」
そう言って、剣を振り下ろしたフランクのその剣閃をドナテロは柄で受け止めると、そのまま槍を回転させ、強烈な打撃を浴びせる。
ただの通常攻撃がクリティカル級のダメージとなってフランクに襲い掛かる。
槍という武器に遠心力を自由自在にのせて放つドナテロのそのスタイル。遠心力が加わる事によってその攻撃力は、通常以上の威力へと跳ね上がる。
「フランクさん、助太刀します!」
そこへ駆けてきたのはエルツだった。
「エルツさん……?」
驚きの表情を見せるフランク。
「何やってんだケヴィンの馬鹿。ってあれ。あいつ何で場外に?」
そして、ドナテロの顔が笑みで歪む。
「あいつもしかして負けたの?」
頷くエルツに大爆笑するドナテロ。
「幾ら酒が入ってるとはいえ、Lv差いくつあると思ってんだあいつ」
――だが、あいつが負けた以上、油断は出来ないか――
ドナテロはふと槍を相対する二人に向かって構える。
ドナテロ VS フランク&エルツ。
「ニ対一か、数じゃ有利だな。だが油断すんなよ。俺は強いぜ?」
ドナテロの言葉に場外から「自分で言うなアホ」と笑いが漏れる。
だが、それはただの冗談でない事をエルツは知っていた。今までの立ち回りから見て、最も油断出来ない相手はこの人だと、直感的に悟っていた。
「エルツさん、ドナテロさんの間合いに気をつけて」
その言葉にフランクの顔色を窺がうエルツ。
「剣士と槍士が戦う場合、むしろ間合いを取るより近づく方が有効な場合があります。特にドナテロさんみたいに槍に遠心力を加えて放つような特殊なスタイルの人には、近づく方がダメージを軽減できます」
「なるほど」と頷くエルツ。
「まあ、言われてすぐに実践できるような事じゃないと思いますが一応。間合い内には俺が入りますんで。エルツさんは背後から攻撃して下さい」
「わかりました」
そうして、エルツはフランクの指示通りドナテロの背後へ回ろうとする。
ドナテロは常に二人が視界に収められるように、二人が結ぶ直線に対して水平になるように身体を構えていた。
「確かに、こうなるとキツイか」とドナテロ。
「行きますよ」
その言葉と共にフランクが飛び出す。フランクの剣撃に対して、ドナテロが応対すると同時に出来た死角にエルツが飛び込む。
「上手いコンビネーションだな。とても即席とは思えないが。フランク一つ忘れてないか?」
「なにが……まずい エルツさん引いて!」
槍をクルクルと回転させるその動き。
フランクがそう声を上げた時には、エルツとフランクの身体は後方へ大きく弾き飛ばされていた。
「風車か……そうかドナテロさんには零距離からでも瞬時に出せるこの技が」
よろよろと立ち上がるフランク。
エルツは身体に受けた凄まじいその衝撃に未だ立てずに居た。コーザ戦で受けたそれとは威力の比が違う。
「エルツさん……!」
必死の声を掛けるフランクにエルツは懸命に身体を起こす。ダメージは受けないとは言え、その威力は一瞬、気が遠くなる程凄まじいモノだった。
二人は身体を起こし、再びドナテロへと刃を向ける。だが、そのまま二人は動けなかった。間合いも取れない、近づく事も出来ない。これではどうしようも出来ない。まさに八方塞がりだった。
落ち着け、落ち着くんだ、エルツはそう必死に自分に言い聞かせていた。数で言えば絶対的に自分達が有利なのは変わりない。だけど何だこのプレッシャーは。今まで冒険者達から受けたそれとは全く別格の質だった。
「さて、そろそろ決着をつけようか」とドナテロ。
そんなドナテロの意志表示に、二人は意を決したかのように剣を構える。
「エルツさん、こうなったら行くしかない。玉砕覚悟でやりましょう!」
フランクの言葉にエルツは頷く。そして、フランクが勢いよく飛び出した。
エルツもその後に続く。
「いいチームだな。だけど勝ちは貰うぜ」
ドナテロの槍が回転を始める。風車だ。勢いよく飛び込んで行ったフランク目掛けて、ドナテロの目が月の光を受けて鋭く光った。
回転軌道の変化、それに気づいた時、フランクの危惧は絶望へと変わる。
「これは、風車じゃない……」
ドナテロが不敵に笑う。それは風車からの派生技。回転により最高速度まで高めたその遠心力を槍に込めるその一撃はこう呼ばれる。
――Stera Flitz [ステラ・フリッツ]<貫く至高の一撃>――
「うわぁぁぁ!」
フランクがそう声を上げると同時に、強烈な一撃がフランクへと突き刺さる。
一瞬時が止まったかのようだった。フランクの身体は裕に十メートルを超える距離を弾き飛ばされ、そのまま場外へ。
倒れたフランクへ、場外の仲間達が駆け寄る。
そして、フィールドに残されたのは二人。
「ちゃんと、風車の射程内に捉えたつもりだったんだけどな」
ドナテロの首元に当てられる銅の剣。
エルツはその手をしっかりと握り締めドナテロに突きつけていた。
ドナテロが風車を発動する瞬間、エルツはコーザ戦でも見せた一度射程内に入り、バックステップで風車を回避したのだった。攻撃を一身に受けたフランクの姿を見つめながら、エルツはドナテロに背後から刃を突きつけたのだ。
ふっと微笑するドナテロ。
「俺の負けだ」
それは、この闘いでの勝者を決定づける最後の一言だった。
立ち尽くすエルツの肩をポンポンと叩き、その剣を持った右手を突き上げる。
場外から上がる歓声。
それはこの闘いでの勝利者の健闘と功績を祝った最大の賛辞だった。
こうして、華やかな舞闘祭は幕を閉じる。
月の煌びやかな祝福を受けて、いつまでもエルツは翳したその剣先を見つめていた。
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月夜の舞闘祭
勝利チーム 『Sword Man』
メンバー Elz,Franc,Will
チーム優勝賞金 2400ELK
個人獲得金額 800ELK
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