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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第二章 『星々の輝き』
28/242

 S4 PvP<対人戦>

 建物を出た一同は、ユミルに言われた通り、まずはギルド前にあるという女神像でホームポイントの設定を済ませる事にした。


「歓迎会か。楽しみだな」


 明るい日差しを浴びながらスウィフトが呟く。

 リンスに手を引かれたチョッパーは嬉しそうに、ぴょんぴょんと飛び跳ねていた。


「あれ、何かやってる」


 ふと芝地に目を向けたエルツは、そこに散らばる幾人の冒険者達の存在に気づいた。


「対戦だ。対戦やってるんだ」

本当マジ!?」


 一、二、三と数えるとその数は五名。五名は互いに距離を取りながら、それぞれの武器を構え振りかざしていた。

 互いに均衡を保つ冒険者達、動かないのでは無く、動けない。それは熟練した者達が見せる間合いのせめぎ合いだった。だが、そんな均衡は唐突に崩れ去る。

 先制は一人の冒険者の攻撃から始まった。一人の法衣を纏った冒険者が杖を振りかざしたその時、巨大な炎の玉が五人の冒険者の中心で爆発する。その熱風に煽られながら一斉に、動き始める冒険者達。


「すげぇ、爆発した……!?」


 芝地の外からただただその様子を見守るエルツ達。

 対戦者達は、到底観客達の及ばぬスピードで剣を振るい、槍を翳し、斧を振るう。そして、弓を持った冒険者が、大きく撓らせた弓から十数本の矢を放つ。頭上から雨霰のように降り注ぐアローレインに狙われた剣士はその弓の一本一本の軌道から軽やかに身をかわし、そして弓士の元へ向って走り込む。しかし、流石にその全てをかわしきれなかった剣士が体勢を崩すと、その隙に真正面から弓士が追撃の矢を引く。咄嗟に抜刀した剣士が牽制に真空の刃を放ち、倒れ際の一歩で踏み止まる。窮地を脱したかのように見えた剣士は脇目に苦い表情を見せると、持っていた盾を掲げ身構える。そこには側面から距離を詰めていたまた一人の冒険者が槍をくるくると回転させながら近づいていた。


Stera(ステラ Flitzフリッツだ」


 観客の中の誰かがそう呟いた。その呟き声と共に槍士の手から強烈な一撃が繰り出され、直撃を受けた剣士はその勢いで芝地の外へと弾き飛ばされた。弾き飛ばされた剣士はよろよろと起き上がると悔しそうに、その場で剣を鞘に収めた。


「……すごい威力だ、なんだあの技」


 エルツ達が見つめる芝地ではさらなる壮絶な光景が。重装備を纏った冒険者が今度は先程の炎を放った術者からの集中砲火を浴びていた。術士の周囲にふわふわと生み出される無数の炎球が次々と怒涛の勢いで繰り出される。雨のように降り注ぐ熱風。そんな状況下、全身鎧を纏った重戦士は術士目掛けてゆっくりと前進を続ける。そして、再び術者の手から一際巨大な炎が生み出される。生み出された炎は、今度は確実に重戦士の身体を捉え、大爆発を引き起こす。再び巻き起こる熱風と黒煙。


「やったのか……?」


 息を飲むエルツ。


 やったか、と術士が微笑を見せるや否やその表情を凍りつかせる。

 両手斧を裕に片手で掲げたその重戦士は、まるで身体に纏わり付いた埃を払うかのように平然と立ち尽くしていた。

 ここで法衣を纏った冒険者が弓士へとアイサインを送る。互いに意志を確認した二人は一時的に手を組み波状攻撃を仕掛け始め、辺りには熱風と黒煙が立ち昇り始める。

 力の限りを尽くして、全力で攻撃を重ねた二人が確かな手応えに息を荒げていたその時だった。

 黒煙の中から伸びた巨大な斧が、二人の身体をまとめて薙ぎ払う。

 まるで綿埃のように大きく弾き飛ばされた術士と弓士の身体からは大量のライフエナジーが漏れ、一人は場外へ弾き飛ばされ、そしてもう一人そのままPvPエリアから粒子となって姿を消した。

 斧を両手に構えた重戦士が残る最後の獲物へと目を走らせたその時、鈍い衝撃音と共にその膝が崩れる。

 背中に突きつけられた槍。槍士が微笑を携えて、勝利を確信したその時、渾身の力を持って背面に薙ぎ払った両手斧が、槍士の身体にめり込んだ。

 数メートルの空中遊泳の後、地面に倒れこむ槍士。

 すぐに体勢を立て直すため、身体を起こそうとする槍士だが、今の一撃で身体が思うように動かないようだった。

 じわじわとにじり寄る重戦士の影。

 その影を見つめながら槍士が手を上げ、降参の合図を送る。

 一人立ち尽くす重戦士。それが勝利者の姿だった。


 その凄まじい光景にエルツ達が茫然と見つめ立ち尽くす中、周囲の人々はさもそれが当たり前の光景のように、素通りし、中には立ち止まり微笑ましくその様子を眺めていた。


「これがPvP……」


 熟練者のその立ち回りはさることながらその圧倒的な迫力に、エルツは声を振り絞ってそう呟いた。

 いずれは自分もあんな戦闘が出来るようになるんだろうか。

 それは、期待でもありちょっとした恐怖でもあった。


 そんな新鮮な刺激を受けて、一同はギルド前の噴水へと向う。

 噴水前では、エルムの村と同様に、優しい女神の微笑みが一同を癒してくれた。

 ほっと胸を撫で下ろす一同。


 刺激的な光景を目にしたエルツ達にとって、その微笑みは優しく温かいものだった。


「これから頑張らなくちゃな」


 気持ち新たに、エルツは女神像に新たな決意を誓うのだった。


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