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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第二章 『星々の輝き』
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 S2 ユミル観光案内

 港から街並みへ石畳を抜けると、そこは繁華街だった。そこには透光板フェラメルの張られたドーム型のアーケードが天井高く張られ、天井から差し込む光の下には、様々なショップが軒並み連ねていた。


「ここには、色んなお店があるんですよ。高級レストランもあるし、BARバーもあるし、武器防具屋に、それから日常品を売ってる雑貨屋さんまでありますよ」


 ユミルの案内に辺りに視線を振り回す一行。


「ほんとだ、雑貨屋がある。チョッパーの水筒ってもしかしてここで買ったの?」

「そうですよ」


 ユミルは笑顔で頷いた。


「何かさ、あんまりキョロキョロしてると田舎者いなかもんだと思われそうじゃない」

「いや、実際、否定できないって」


 スウィフトの言葉にそう言葉を返すエルツ。視界ではちょうど剣が描かれた武器屋の看板がちょうど通り過ぎて行くところだった。エルツはパーソナルブックを開き、この街の地図を確認しながら歩いていた。


「この通りには武器屋だけでも、何件もお店ありますからね。きっと一日じゃ見て回りきれないと思いますよ」

「そんなに広いのか……」とエルツ。

「道は単純なんです。広場までここは一本道だから」


 冒険者で溢れる繁華街を見つめながらユミルは思索する。


「どうしようかな。色々案内したいところはあるけど、先に行こうかな」


 そんな呟きをユミルは残し、一同は二百五十メートル以上にも及ぶ、その長い繁華街を通り抜ける。途中魅惑的な店がエルツ達を誘惑したが、今は素直にユミルに従う事にした。

 そして、繁華街を抜けた一同の視界に描かれる景色は一変した。繁華街を抜けたそこには石畳に囲まれた円形状の緑の芝地が広がっていた。


「ここがスティアルーフ中央広場です」

「芝地か。こんなとこがあるんだ」


 ユミルは広場の方へ一同の注目を集める。

 広場に周りに置かれた白いベンチには、骨を休めゆっくりとくつろぐ冒険者達の姿が多く見られた。


「ここでは、よくPvP[対人戦]が行われてるんですよ」

「え、PvP 出来るの!?」


 エルツの質問にユミルは笑顔で頷く。


「ええ、この広場内だけ特殊な設定になっていて、通常時はこの直径百メートルの広場の中でいくらダメージを受けてもHPは減らないんです」


 ユミルは口元に指を当てた。


「あとはこの広場貸切る事が出来て、貸し切った場合、この広場にPvP用の色々な条件を付加する事が出来るんです。たとえば、HPが0になったものから広場の外へ強制排除とか。そうする事でサバイバルゲームができるわけです」

「へぇ、面白そうだな」とエルツ。


 ユミルはそれに笑みを浮かべて付け足した。


「ただ使ってる人って、皆熟練者の人達ばかりで、エルツさん達みたいなルーキーの方はあんまり居ませんけどね」


 その言葉に肩を落とすエルツ。


「それでは向かって正面の建物を見て下さい」


 ユミルが示すは芝地の向こうにそびえた大きな建造物。

 黒硝石によって作られたその艶のある外観は、この広場の中でも異質の存在だった。この街の中心に構えたその位置取りからも、この建物が持つその役割の重要さが垣間見えた。


「あの建物がこの街のギルドですよ。エルムとは大分違うでしょ」

「あれがギルド……?」


 聳え立つギルドを改めて視界に収める一行。

 ふと、エルツはエルムの村で出会ったあの奇妙なNPC達の事を思い出した。


――クリケット達、相変わらずだろうか――


 なんだかたった二週間前の出来事が随分昔の事のように感じられる。

 そんな気がした。


「それから今度は右側の建物を見て下さい」


 ギルドを正面に見据えて、一行が右側を向く。そこには三階建ての木造の建築が建っていた。


「あそこが宿屋です〜!」


 しっかりとした基盤の上に立ったその木造建築はエルムの藁小屋とは比較にならない。その規模の大きさに思わずエルツは感嘆の声を上げる。


「何から何までエルムとは別世界だな」


 そんなエルツ達の様子を満足そうに眺めながらユミルは次の説明へと移る。


「はい、それでは最後に左を見て下さい」


 一同は反対側の方向へと振り向くと、そこには宿屋と同じくらいの大きさの三階建ての木造建築が建っていた。


「あそこは……何?」

「内緒ですよ。さあ行きましょう」


 具体的な説明をせずに、歩き出すユミル。残された一同はただただその後を追う。


「ちょっと待ってユミル、あそこ何なの?」

「行けば、わかりますよ」


 思わせぶりにユミルはそう言って微笑んだ。


 『悪戯いたずらな微笑み』


 その微笑みの意味を、その時は誰も理解出来ずにいた。


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