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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第七章 『夢・絆』
238/242

 S25 コミュニティ対抗試合【打ち上げ】

 スティアルーフ郊外、夕暮れの城壁前に灯る無数の明りの前で、そこにはバーベキュー台やブルーシートを広げ、酒や料理を囲む多くの冒険者の姿が在った。

 バッファローや白羊、それからウーピィの肉を串に刺し鉄板の上で炙るケヴィン。足元の炭袋を片手でまさぐりながら顔をしかめるケヴィンの前で、台の上で程よく焼けた肉串に手を伸ばすチョッパー。


「火力足んねぇけど炭切れちったか。チョッパー悪い。炭持ってきてくんねぇ?」

「炭? うん、わかった」


 ケヴィンの言葉に頷き肉串を片手に走り出すチョッパー。その姿に気付いた近場で話し込んでいたシュラクが声を掛ける。隣にはあのキャロルの姿があった。


「どしたチョッパー?」とシュラク。

「炭持ってきてって言われちゃった。でもどこ行ったらいいか分からなくて」


 そんなチョッパーの呟きを聞きキャロルが微笑み掛ける。


「それならリーシャンテさんに聞くといいです。案内しますよ」

「ほんと? ありがと」


 話し込む三人を他所に外壁近くで上がる悲鳴。

 外壁近くでレイラと話し込んでいたコッペルに向かってウィルがウォータースフィアをぶちかましたのだった。

 そんな二人を余所目にシュラクは辺りをキョロキョロと見渡す。


「炭か。どっかのバーベキュー台で余ってないかな。一応回ってみようぜ」


 そうして走り出す三人の子供達は人込みの中へと消えて行く。

 そんな後姿を見ていたケヴィンが声を上げる。


「な、あいつらどこ行った。炭取りに行ってくれたのか」

「子供パシリに使わないで自分で取りに行ったら。私が焼いといてあげるから。ほら」


 そう声を掛けるのはミサだった。そんな彼女の言葉に苦い顔で持ち場から立ち上がるケヴィン。

 そんな様子をにこやかに見つめてやってきたのはユミルとペルシア、それからジュリアの三人だった。


「ミサ、野菜串ある? 隣の台お肉ばっかりなんだもん」

「あるわよ」


 そんなユミルの言葉に笑顔で焼けた野菜串を差し出すミサ。


「あ、わたしも〜、おねがいします〜」


 そう間延びした声を出すのはジュリアだった。その声に思わず隣で突っ込むケヴィン。


「な、お前それってわざとなの? 試合の時ちゃんと喋ってただろ」


 ケヴィンの言葉に野菜串を手渡されたジュリアは笑顔で首を傾げる。


「え、あの〜、どうも。私は〜感情が高ぶった時だけ〜、普通に喋れるみたいなんです〜」

「嘘つけ!」


 ケヴィンの突っ込みにジュリアが当惑していると、横からユミルが反撃に出る。


「何言ってるの。ジュリアさんがそう言ってるからそうなんだよ。そんな事より早くケヴィンさんは炭取ってきたらどうですか」


 ケヴィンに突きつけられる視線。四対一の構図にケヴィンは渋々とその場から離れるのだった。

 そこから少し離れた台ではエルツがバーベキュー台でケヴィンと同様に肉や野菜串を焼いていた。台の周りにはAlchemistsのレオやフォーカス。それからポンキチとキューブリックの姿があった。


「お兄様、これ焼けてますか?」

「うん、多分焼けてるよ。ほい」


 ポンキチに肉串を差し出すとポンキチは息を吹き掛けながら焼けた厚切りのバッファローの肉を頬張る。


「キューブリックにも、はい」


 隣でそれを無言で見つめていたキューブリックにエルツが肉を差し出すと彼は丁寧に辞儀をしてそれを受け取った。意外な礼儀正しさに微笑するエルツ。

 人というのはちゃんと付き合ってみるまでつくづく分からないものだ。


「それにしても決勝戦のあのハンターの女性の動き凄かったな。よく勝ちましたねエルツさん」


 笑顔で語りかけるレオにエルツは微笑み返す。


「ああ、エクスイさんね。正直最初負けるかと思った。あんな動き初めてみたからさ。最初全く対応出来なくて。ああ、これ負けたなって」


 そう語るエルツにフォーカスが笑みを零す。


「ハンターで殴り掛かるなんざ、正気じゃねぇよ」

「それ、リーベルトも言ってましたよ。何でもあのエクスイさんてシャンテさんからあの短剣での立ち回り教えて貰ったみたいで。ああ、シャンテってTIFFANYのリーシャンテさんの事です」


 エルツの言葉に驚きを隠さない一同。

 そんな矢先だった。丁度会話をしていたリーシャンテがエクスイとミゾットの二人と共にエルツのところに挨拶にやって来た。


「随分と賑やかな台ね。お邪魔していいかしら」

「あ、シャンテさん。お疲れ様です」


 エルツの言葉に笑顔で「お疲れ様」と言葉を返すリーシャンテ。


「何か食べますか?」

「ううん、もう十分に頂いてきたから」


 そんな会話に華を咲かせ始める一同。

 また別の台ではドナテロがシン達を集め、そこにはジュダやローズ、シルビノ、それからヴァニラの姿も見られた。

 傍から見るとその錚々たる顔ぶれに近づき難い程、神々しいグループであった。


「へぇ、それじゃTIFFANYの中から優秀なプレイヤーをVALKYRIAに輩出してるんですか」


 ローズの言葉に頷くヴァニラ。


「それで、どうなんですか。今のところ推薦出来そうなメンバーは居るんです?」


 肉を焼くドナテロの言葉に微笑するヴァニラ。


「今のところはどうだろうな。だが、充分に推薦するに値する素質を持ったメンバー達が揃っているとは思っている。いずれはうちから巣立っていく者も少なくないだろうな」


 ヴァニラの言葉を頷いて聞く一同。


「でも、まあうちも現状似たようなもんだよね。素質がある奴はリーダーグループに入れてくれるんですよねシンさん」


 スニーピィの言葉に肉を口にしながら頷くシン。


「ドナテロ。お前もいつでも入ってきてもいいんだぞ。あとはお前次第だからな」


 シンの言葉に串を返しながら微笑むドナテロ。

 そんな様子をジュダもまた微笑んで見つめていた。


「お守りもあんたにとっちゃそんなに悪くないみたいだな。で、あんたから見ていずれそのグループに上がってきそうなメンバーは誰か居るのか」


 ジュダのその言葉に微笑するドナテロ。


「……居たんだけどな」


 ドナテロのその呟きに尋ね返したのはシルビノだった。


「居た……というのは?」


 その後の言葉はドナテロは語らなかった。

 その様子に一同もまた深くを聞かずにまた団欒へと戻る。

 そこではそれが全てだった。楽しい一時はあっという間に過ぎて行く。楽しい宴が終わり全てが終わる時、そこである人物がその口を開く事になる。

 その瞬間までは、今この最高の一時を誰もが噛み締めていた。

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