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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第七章 『夢・絆』
237/242

 S24 閉会挨拶

▼お知らせ


 約一年という歳月にお付き合い下さり読者の皆様には心から感謝致します。本作品につきまして本日更新を持ちまして最終更新とさせて頂きます。

 表彰台で笑顔を浮かべる仲間達。その中央で顔の向ける先に困っていたエルツはケヴィンに脇腹をつつかれ俯いていた顔を上げる。

 エルツの名を呼び掛ける声に顔を上げると、そこにはたくさんの冒険者がその言葉を待ち望んでいた。このイベントに全力で望んでくれた各コミュニティの仲間達、それからこのイベントのために足を運んでくれたフレンド、そしてこのイベントに興味を持ち足を止め観戦してくれたたくさんの冒険者達。

 彼らに対する感謝の気持ちがエルツの中では上手く言葉にならなかった。

 そんな感極まったエルツの様子に会場ではピエロ姿のポンキチが観客を煽り始める。


「結局、主催チームがいいところ全部持ってくなんて。インチキだ! はい、せーの!」


 ポンキチの誘導に「インチキだ!」と多重に声が重なる。


「せめて優勝賞金の十万ELKだけでもこっちに渡しなさい! はい、せーの!」


 ポンキチが語る十万ELKとはこの大会の優勝賞金である。この金額は運営委員達の大反対を押し切り、エルツが自らのポケットマネーから用意したものだった。

 ポンキチの煽り文句に「渡しなさい!」と声が重唱したところでケヴィンが躍り出る。


「はん? 所詮は負け犬共の遠吠えなんざ聞こえねーな」


 ケヴィンの挑発にポンキチがふっと微笑する。


「流石は負け犬の代表。説得力が違いますわ。皆、せーの!」


「ケヴィンのバーカ!」と誘導されるまでも無く重唱されたその言葉にケヴィンがポンキチに向かって飛び出したところで会場は笑いに包まれる。

 形は不器用だが全てはポンキチとケヴィンが感極まったエルツを気遣っての行動だった。

 エルツはその微笑に包まれた会場の中で静かに言葉を紡ぎ始める。


「この大会は僕一人の力では到底為し得ないものでした。皆さんの協力があったからこそ素晴らしい形で大会を終える事が出来ました」


 エルツの言葉に聞き入る観客一同。

 日の暮れた中央広場には、夕闇がその影を落としていた。


「ここに立っているのは本来僕達だけじゃない。この大会に協力してくれた全ての皆が立つべきだと思います。こんな事を言っては本末転倒ですけどね。でも、僕がこの大会で本当に手に入れたかったものは優勝なんていう称号じゃない。その意味で、僕はこの大会で本当に手に入れたかったものを手にする事が出来ました。恥ずかしくて、それが何とは口に出せないけども、勝者の優越感のように聞こえてしまっていたらすいません。ただ、本当に皆さんには心から感謝しているんです。本当に楽しかった。この世界でこんなに有意義に過ごせたのも、全ては皆さんのお陰です」


 エルツの言葉に静まり返っていた会場にパラパラと拍手が巻き起こる。

 疎らだった拍手は次第に大きな波となり会場中を包み込む。


「それじゃまるで引退宣言ですよ!」


 会場から飛んだ野次に微笑するWhite Gardenメンバー達。


「そうですよ、エルツさん。これからまたこんな素敵な大会を開いて下さい。二回三回と大切な歴史を築いていきましょう」


 ユミルの言葉にエルツは彼女に振り返ると静かに微笑んだ。

 その微笑にこの時、僅かな引っ掛かりを感じたのは彼女だけだったのだろうか。

 会場に向き直ったエルツは凛とした面持ちで、大会最後の言葉を告げる。


「短いですが、これを以って本大会を締めさせて頂きたいと思います。この後は、中央広場は通常通りフリー対戦が可能となります。この機会に是非、会場に集まって下さった皆さんで親睦の機会として頂けたらとても嬉しく思います。最後になりますが本コミュニティ対抗試合に参加して下さいました全ての皆様、本当にありがとうございました。なお、大会後に打ち上げを予定していますので参加希望の方は是非ご参加下さい。ただし今回大会に参加して下さったコミュニティメンバーの方達は強制ですので、あしからず」


 そうしてエルツの言葉が終わると同時に、会場では一斉に腕が突き上げられる。


「皆、打ち上げだー! 用意しろ!」


 ポンキチの掛け声と同時に一斉に精力的に動き始めるBLOODY MARYのコミュニティメンバー達。満面の笑みを浮かべて動く彼らの中にはキューブリックの姿もあった。


「打ち上げってここでやるの?」と問い掛けるキューブリック。

「うんにゃ、西エイビス平原寄りのスティアルーフ郊外だって。外壁あるところ」とポンキチ。


 そんな率先して動くBLOODY MARYの様子にTIFFANYのリーシャンテも皆に言葉を掛け始める。


「私達も協力しましょう。さあ、皆片付け手伝って」

「はいですー♪」と陽気に跳ねるキャロル。


 一斉に動きを帯びる会場全体。

 片付けのためにやってきたAlchemistsのフォーカスとレオが表彰台を見つめながら呟く。


「とりあえず、こいつを何とかしないとな」とフォーカス。

「表彰台、リアライズしたの誰だろう。とりあえず邪魔になるから会場の端まで運んじゃいましょうか?」とレオ。


 そこへ話し込んでいたエルツが慌てて駆け寄る。


「あ、それ自分だ。ちょっと待って。今マテリアライズするから」


 そうして、エルツの「Materialize」というボイスコマンドと共にカード化されるステージセット。


「それじゃここは大丈夫かな。じゃ自分達は打ち上げの方の準備に向かいますね」

「ありがとう、よろしくお願いするよ。こっち片付けたら自分もすぐ向うから」


 レオの言葉に笑顔で礼を述べるエルツ。


 皆が献身的に動き一つの目的に向かう。大会を終えた今もなお会場の一体感は続いていた。そんな会場の片隅ではWhite Gardenのメンバーが驚きの声を上げていた。会場で片付けをしていたドナテロとケヴィンの前に現れたのは紛れも無くWhite Gardenのコミュニティリーダーであるシンだった。


「シンさん!? いつから居たんですか」とケヴィン。

「いや、予選の初めから」


 White Gardenのコミュニティリーダー。それはメンバー一同が最もこの大会を見て貰いたかった人物でもある。シンだけでは無く、そこにはリーダーグループの他のメンバー達も勢揃いしていた。その中には久しく姿を見なかったあの人物の姿も在った。


「久し振りだねドナテロ。随分こっ酷くやられたみたいだけど」


 そう微笑むのはスニーピィだった。


「ほっとけよ。お前こそ調子はどうなんだ? シンさん達の足引っ張ってないだろうな」


 冗談めくドナテロ。そんな二人の様子に微笑みかけるレイラ。


「留守中ありがとう。素晴らしい試合だったわね」

「いやぁ、ほんとに素晴らしい大会だったわな。不覚にも感動した。うちのコミュニティもこりゃ安泰だ」


 そう腕を組んで微笑むのはコッペルだった。

 彼らの話によると大会の最初からこっそり影で見守っていたらしい。大会前のモチベーションに影響しないようにと敢えて影を潜めていたらしい。あいにくロゼに限っては現在ログアウト中との事だった。


「それにしても随分と規模のでかい大会になったもんだな」とナインツの感想にシンが言葉を重ねる。

「片付け手伝おう。このくらいしか出来ないからな」


 そうして、片付けに献身的に協力し始めるシン達。


「シンさん折角戻ってきたんだから打ち上げ参加して下さいよ。皆喜びますから」

「いいのか? 折角の大会の打ち上げに俺達が参加しても」


 シンの言葉に頷くWhite Garden一同。

 そうして、会場の残骸は瞬く間に姿を消して行く。

 皆が輝きを放った瞬間、それはまるで線香花火のように儚い時間だったが、だがその思い出は皆の心に深く刻まれていた。

 この世界に存在する限りのそれは永遠の記憶。きっと誰もが忘れる事が無い大切な記憶となった。


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