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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第七章 『夢・絆』
227/242

 S14 ブレイクタイム<PM0:30〜1:30>

 White Gardenの陣営に戻ったリーベルトとフランク。二人はお咎め覚悟の上だったが、コミュニティ内に彼等を責める者は居なかった。

 皆ただ優しい表情で二人を迎え入れ、本大会での敗北を共に分かち合い受け入れていた。


「残念だけど、仕方ないな」とケヴィン。

「だけど、内容として後悔はしてないよ。ケヴィンやドナテロさんには悪い事したけど、自分達は全力を尽くした。その結果だから」


 エルツの言葉に頷く一同。

 会場ではちょうどリーシャンテが昼休憩の案内を始めるところだった。


「それではこれよりお昼の休憩へと入らせて頂きたいと思います。休憩時間は今から約一時間程。午後の部、BLOODY MARY VS TIFFANYの試合はPM1:30より開始とさせて頂きます。なお、開催の挨拶の際も確認させて頂きましたが、広場内で他のプレーヤーの方々の迷惑になるような行為はくれぐれもお控え下さい」


 そんな彼女の案内を聞きながら少し力の抜けた様子のWhite Gardenメンバー達。

 子供達は既に昼休憩と聞いた瞬間に広場から飛び出して行った。


「後は観戦と行くか。これから昼休憩か。エルツ、昼どうすんの。仕事とかあったりするのか?」と、そう首後ろに腕を回しながら語りかけるケヴィン。

「ん、いや。一応会場周りの巡回と午後の審判の打ち合わせはあるけど、お昼は少し食事取りながらゆっくりしようかな。ただ食事の前にAlchemistsの人達に挨拶に行こうかなと思って」と、そう立ち上がるエルツにユミルも腰を上げる。


「私も一緒に行っていいですか? アリエスさんに、あと皆さんにも挨拶しておきたいので」


 そんなユミルの言葉にエルツは「勿論」と微笑みを返す。


「そっか。じゃやっぱり時間無さそうだな。フランクとリーベルト、お前達は?」


 フランクとリーベルトは座り込みながら少し沈んだ面持ちで顔を見合わせると、ケヴィンを見上げるように視線を上げた。


「俺等はちょっと遠慮しておきます。二人で話し合いたい事もあるんで。と、エルツさん。Alchemistsに挨拶に行くなら俺も行っていいですか」


 リーベルトの言葉に頷くエルツ。

 頭を下げ立ち上がるリーベルトを見てフランクもまた立ち上がった。


「俺も挨拶行かせて下さい」

「ああ、二人ともおいでよ」


 正直、二人はやはり責任を重く感じてしまっているのかもしれない。だが、そんな二人の気持ちをエルツは優しい微笑みで促した。

 そんな一同の様子にケヴィンはふっと微笑を漏らすと、リーベルトの肩をポンポンと叩いて広場の屋台に群がる人込みの中へと消えて行く。


「それじゃ行こうか」


 それからエルツが先導しAlchemistsの陣営へと足を運んだ一同は、対戦者達にまずは深々と頭を下げて礼をした。


「色々と御迷惑をお掛けしてすみませんでした。今日は本当にありがとうございました」


 そんなエルツ達を迎え入れたのは優しいAlchemists陣営の眼差しだった。


「御迷惑だなんてとんでもない。こちらこそ試合中に無礼が有り申し訳無い。とても充実した内容になったのも皆さんの御蔭です。本当に感謝しています」


 そう語るシルビノを前にリーベルトは一歩出ると、その場に膝を着き深く頭を下げた。


「あの……すいませんでした。俺、頭に血が昇るとちょっと自分でも訳が分からなくなる時があって。言い訳する気は無いんですけど、本当にすみません」


 そんなリーベルトの謝罪を見てシルビノはすぐにリーベルトの肩に手を掛けた。


「顔を上げて下さい。そんな事をする必要は無いです。君は正々堂々と私と戦ったのですから。私が倒れたのは、私の力が君に及ばなかった。ただそれだけですよ。素晴らしい潜在能力ポテンシャルをお持ちですね」


 シルビノの言葉に顔を伏せたままのリーベルト。


「今も言いましたが私の事で気にする必要は何一つありません。君は強い。ただその力のコントロールの仕方を今はまだ知らないだけです。あとは時間とあなたを取り巻くその素敵な環境の中で自然と身に付くでしょう」


 そう語るとシルビノはエルツ達に優しく微笑み掛けた。

 エルツ達が再び一礼すると、シルビノの傍らでフォーカスがふっと微笑した。


「フランクの言ってた同レベルで俺より強い奴ってのはお前の事か」


 フォーカスのその言葉に顔を上げるリーベルト。


「確かにお前みたいのといつも一緒に居るんじゃそりゃ勝てない訳だ。正直お前と当たらなくてほっとしたぜ。お前のあの矢筋、見た瞬間ぞっとしたからな。射撃の技術には自信あったんだけどな。上空に打ち上げて、なおかつ相手の動きを先読みしたポイントに合わせるなんて人間技じゃねぇだろ」


 フォーカスのその言葉に苦笑するフランク。

 そんな様子を見ていたAlchemistsのレオが笑顔で割り込む。


「その内、手合わせしたらいいじゃないですかフォーカスさん」

「おい、冗談止せよ。今言った話聞いてたか」


 そんなフォーカスの反応に一同が笑いを零す。


「エルツさん、試合ありがとうございました」と笑顔のレオ。

「いや、こちらこそありがとう。本当に楽しかった」


 エルツの言葉に悔しそうな、だが実に爽やかな笑みを浮かべて口を開くレオ。


「今回はいい勉強になりましたよ。上には上が居るって。危うく大海を知らない蛙になるところでしたよ」

「いやいや、戦ってみて感じたけどレオは蛙なんて言葉じゃくくれれないよ。なんか獅子って感じだった」


 そんなエルツの言葉にまた一同から笑いが零れる。


「確かに。お前獅子っぽいよな。髪金髪でたてがみみたいだしな」


 フォーカスの呟きに周囲の笑いが増長する。


「ちょっとフォーカスさんまで何言ってるんだよ。まぁ、でも蛙はともかく獅子なら悪い気はしないけど」

 

 一同がそんな談話を楽しむ中、ユミルはアリエスの元へ歩み寄り語り掛ける。


「アリエスさん、今日はありがとうございました。悔しいけど完敗でした」


 ユミルの言葉に向き直り、首を振るアリエス。


「私が勝てたのは運が良かっただけですよ。勝つ事に執着していた私にとって後半のユミルさんのあの追い上げは脅威でした。最後は私自身、恥ずかしい話よく覚えていませんから。無我夢中でユミルさんに駆け出して、今考えれば文字通りあれは捨て身でしたね」


 試合を振り返りながら溜息交じりにそう語るアリエスの言葉にユミルが微笑みを浮かべる。


「また良かったら勝負して下さいね」


 その言葉に不意を突かれたかのように表情を見せたアリエスはやがて微笑みを浮かべる。


「ええ……勿論です。私で良ければ」


 そうして微笑み合う二人。ユミルのその言葉でアリエスの心はいくらか救われていた。

 試合内容からして、もしかしたら彼女は二度と自分に微笑んでくれる事は無いかもしれない。心のどこかでそんな可能性を危惧していたからだ。

 そんな中、エルツは笑顔でAlchemists勢に語り掛ける。

 

「決勝戦、頑張って。応援してるから」


 そんなエルツの言葉に顔を見合わせるAlchemists陣営達。


「それなんですけど、エルツさん」


 そうアリエスが口を開いたその時だった。

 一同の元に広場を横切るように駆け寄ってくる一人のプレーヤー。

 ピエロの被り物をしたそのふざけた格好をしたのはポンキチだった。


「あ、お兄様やっと見つけましたよ」

「お前何だよその格好。で、どうしたの。何か問題?」


 尋ね返すエルツにポンキチは周囲の視線を集めながらコサックダンスを踊りだす。


――絶対につっこまないからな――


 エルツがそう心に堅く誓う中つっこみを待つような目で用件を伝え始めるポンキチ。

 

「いや、午後の対戦方式の詳細が決まったんでリーシャンテさんが打ち合わせしたいって探してましたよ」

「ああ、了解。すぐ行くよ。連絡サンキュ」


 エルツの言葉に「お安い御用で」とコサックダンスを踊りながら広場をバックしていくポンキチはふと足を止める。


「そうそう、Bブロックのうちの先鋒戦は必見ですぜ。決勝の前に皆さん是非見ておく事をお勧めしやす」

「もしかして、前に隠し球って言ってた人?」


 エルツの問い返しにポンキチは不敵な笑みを浮かべると、そのまま無言でコサックバックをしながら会場の人込みへと消えて行く。


「本当に行動が読めないな奴は。これから闘うだろうにあんなんで大丈夫か」


 エルツの呟きに失笑する一同。


「それじゃ、すいません。僕はちょっとここで失礼します。皆さん頑張って下さい」


 そうして皆に挨拶をしたエルツはユミル達にも目で合図をしてその場を離れ、TIFFANY陣営へと駆け去って行く。

 残されたユミル達も挨拶をしてその場を離れようとしたその時だった。


「ユミルさん達良かったら、昼食一緒にどうですか。ちょっとお話したい事もあるので」


 アリエスの言葉に顔を見合わせるユミルとフランク、そしてリーベルトの三人。


「ええ、俺は構わないですけど。話って?」とリーベルト。

「良かった。お話については食事を取りながらゆっくりと。それじゃDIFOREへ移動しましょう」


 アリエスの言葉に一斉に立ち上がる一同。

 それからWhite Gardenの三人は彼等に引き連れられ、繁華街へと消えて行った。

 各コミュニティのメンバー達は思い思いにそれぞれの時を過ごす。

 来るべき午後の部に向けて時は刻々と動いていた。


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