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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第七章 『夢・絆』
222/242

 S9 Aブロック先鋒戦

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ■Aブロック先鋒戦


 ▼Alchemists

  Saloon<サルーン>Lv5 ソルジャー

  Hydric<ハイドリック>Lv5 ソルジャー

  Grace<グレイス>Lv5 マジシャン


  <<<VS>>>


 ▼White Garden

  Will<ウィル> Lv5 ソルジャー

  Shuraku<シュラク> Lv5 ハンター

  Chopper<チョッパー> Lv5 マジシャン


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 風刻 1 午前10:00。広場中央には向かい合うAlchemistsとWhite Gardenの団員の姿が在った。

 子供達は自分達の背丈よりも遥かに大きな大人の冒険者を前に何やら緊張した面持ちだった。開始前から対戦相手に挑発めいた変な顔を送るウィルをシュラクが諌めながら、チョッパーは周囲から寄せられる視線に当惑した様子でたじろいでいた。


「あの子緊張に弱いから」と心配そうに呟くユミル。

「大丈夫だよ。ウィルはともかくシュラクが付いてるから。あいつは器用だし上手く二人をサポートすると思うよ」


 フランクの言葉に不安気に微笑むユミル。

 広場中央ではリーシャンテが両者の間に立っていた。


「それではAブロック先鋒戦をこれより始めます。私Aブロックの審判を務めさせて頂きますリーシャンテと申します。本大会では予め大会規定としてお伝えしていた通り、ダメージのバランスを取るため物理防御力、又魔法防御力に0.5倍の補正が掛かります。両者、礼」


 リーシャンテの言葉に礼儀正しく礼をするAlchemistsの団員。それに対し子供達は変な顔を送り続けるウィルと揉め合いながら騒ぎ立てていた。そんな様子に観客から笑いが漏れる。


「こら、あなた達ちゃんと礼しなさい」


 微笑みながらリーシャンテが三人に注意を促すと、しぶしぶと頭を下げる子供達。


「こんな可愛い子達が相手じゃ俺達もやりにくいな」


 対戦相手のサルーンという名の男性ソルジャーの大人なコメントに思わず微笑む審判リーシャンテ。


「だが、俺達もAlchemistsの看板を背負っている以上手は抜けない。宜しく頼むよ」


 差し出された対戦者の手に子供達はそれぞれ手を伸ばし見上げ始める。

 相変わらずウィルは変な顔を浮かべたままだった。


「それでは、両者構えて」


 審判の言葉に一定の距離を取り構える両者。

 緊張の一瞬。それは会場全体がリーシャンテの掛け声に集中する一瞬。


「始め!」


 掛け声と同時に大きく動き始める両者。

 Alchemists組は開始と同時にソルジャー二人が広場の両翼に展開する。後方にはグレイスという名のマジシャンが既に魔法の詠唱を始めていた。

 その動きを警戒しウィルとチョッパーが距離を取って様子を見ていたその時だった。

 叫び声を上げながら一直線に敵のマジシャン目掛けて特攻するウィル。


「……あの馬鹿」


 場外でコミュニティメンバーが額に手を当て項垂れたその時、グレイスが詠唱していたエアカッターが一直線にウィル目掛けて放たれる。

 正面から放たれた目に見えない真空の刃をウィルは天性の勘で転がって避ける。


「ウィル、左右から来てるぞ! 戻って来い!」


 シュラクの掛け声も聞かず、ウィルは左右に視線を向けると剣を両手に構える。

 Alchemistsのソルジャー二人が容赦無くウィルを囲み、攻撃を仕掛けようとしたその時。

 真っ直ぐに突き出した剣をいきなり回転させ始めるウィル。


「必殺、回転のこぎり斬り!」


 場外から漏れる爆笑の渦。ぐるぐると回るウィルを攻撃していいものかと困った様子で眺めていたAlchemists勢に対して、後方から援護に駆けつけたシュラクとチョッパーが攻撃を加え始める。


「ったくお前何やってんだよ!」


 シュラクはそう叫び走り込みながら敵に向かって正確に矢を射撃する。

 その矢をハイドリックが赤銅の盾で回避するや否や、予めフロートしていた火炎球をチョッパーが重ねる。再び盾で回避するも魔法の衝撃は盾で完全に防ぐ事は出来ない。

 盾の上からポップアップするダメージ数値<D値:15>を場外に居た観客はアナライズゴーグル越しに確認していた。


「チョッパー、ナイス。だけどファイアボールは大切に使えよ。俺がチャンス作るから」

「うん」


 シュラクの言葉に緊張した面持ちに少し笑顔を浮かべるチョッパー。

 ウィルはというと回転のこぎり斬りと名付けた幼稚な技で相変わらず相手を寄せ付けず注意を引き付けていた。


「ハイド、大丈夫か」

「ああ、油断した。あのソルジャーはほっといて先にあのマジシャンの子を狙った方が良さそうだな」


 ハイドリックの言葉に頷きサルーンはチョッパーへと視線を向ける。


「二手に分かれて一気に潰すぞ。情は不要だ」


 サルーンの言葉と同時に走り出す二人のソルジャー。

 その二人の動きを見て、シュラクは冷静に状況を判断していた。


――こいつらの動き……チョッパーを狙ってるのか――


「チョッパー、狙われてるぞ。気をつけろ。俺が援護するから、絶対に捕まらないように逃げ回れ!」


 シュラクの言葉に不安そうに顔を上げ頷くチョッパー。


「気付かれたか。子供達の中に優秀な参謀が居るな」


 逃げ回るチョッパーの動きを見て、追う動きを止め戦況を見回すサルーン。

 チョッパーを追って攻撃を仕掛けているハイドリックに的確に射撃ダメージ<D値:4>を重ねているシュラクの動きを見てサルーンはふと呟く。


「あいつだな。ならばあいつから潰すか」


 敢えてハイドリックを泳がせる事でシュラクとチョッパーの注意を逆に引き付ける。

 背後からゆっくりとシュラクへと迂回していったサルーンは、片手に携えた剣を走り込みながら腰元に引き付ける。

 シュラクがサルーンの気配に気づいた時、その距離は既に回避をもはや許さないほどに接近していた。


「気づくのが遅かったな……行くぞ。バイカースラッシュ!」


 移動しながらのバイカースラッシュ。加えてそこにはパワーチャージの効果も上乗せされている。サルーンの強烈な剣撃がシュラクを直撃<D値:25>する。弾き飛ばされたシュラクは地面を転がりながら倒れ込み、すかさずそこへマジックチャージを使用したグレイスのエアカッターが追撃<D値:22>する。衝撃に翻弄されるシュラクの姿を見てチョッパーが恐怖の表情を見せた。


「……シュラク!」


 倒れ込んだシュラクは衝撃で動けない様子だった。そこへ歩き近寄りシュラクの首元を掴み引き起こすサルーン。


「上手く皆を引っ張っていたようだが裏目に出たな。今後は自分の背後にもよく注意する事だ」


 そんなサルーンの言葉を悔しそうに相手を睨み付けながら受け止めるシュラク。


「お前等シュラクに何やってんだ!!!」


 その光景に激怒したウィルがサルーン目掛けて一直線に走り込む。


「ハイドリック」


 サルーンの言葉にウィルの前に立ち塞がるハイドリック。片手斧を手にウィルの突進を軽く盾でいなしたハイドリックは斧で弾き返す<D値:6>。

 弾き返されたウィルはただ吊るされたシュラクの姿を見つめながら激怒して吠える。


「シュラクを離せ!」


 懸命に剣を振るいハイドリックに立ち向かうウィルだが、そこはやはり大人と子供。

 ウィルの刃は虚しくもハイドリックの確かな技術力の前に弾き返され、地面へと膝を着く事になる。


「勝負は見えたな。シュラクと言ったか。一つ忠告しておこう。ここは潔く引け。戦況を理解する能力に長けたお前ならこの状況が見えない訳ではないだろう。俺達としても、無益な攻撃は加えたくない」


 サルーンの言葉に瞳に涙を浮かべながら、首元を掴んだその腕を握り締め必死に抵抗するシュラク。そして抵抗していたシュラクの手から力が抜けたその時だった。

 突然の衝撃がサルーンの身体を襲い<D値:27>、シュラクの身体が解放される。


「……何だ!?」


 そこには怒りの表情を浮かべたチョッパーの姿が在った。


「背後に気をつけた方がいいのはお前も一緒だな」


 かつて見た事の無いチョッパーのその表情に仲間達も呆然とする。


「チョッパー……お前」


 シュラクは咄嗟に身を翻すと矢を放ちながらチョッパーの元へと身を寄せる。

 向かい合った二人はハイタッチを決めると、目前の敵へとその眼差しを向ける。


「子供だと侮っていたが……まだまだ楽しめそうだな」


 サルーンの言葉にハイドリックが向き直ったその瞬間、彼の背中に強烈な打撃が迸る。


「オレも居る事忘れんな、このバーカ!!」


 ウィルのその言葉に笑顔を見せるシュラクとチョッパー。

 そこからは、目も離せぬ乱戦となった。両者、大人と子供という境目も忘れて一歩も引かずのせめぎ合い。

 一人一人と脱落者が出て行く中、最後に残ったウィルとサルーンが剣を交える。

 サルーンの強烈な剣撃を前に、膝を着き倒れるウィル。

 息を切らし肩で呼吸するサルーンの前で、ウィルは涙を流しながらその場に倒れ込む。


「最高の闘いだった。お前達は誇っていい」と呟くサルーン。


 倒れたウィル達を送るものは広場を囲む観客からの盛大な拍手と歓声だった。

 傷付き戻った三人の子供達を、笑顔で迎え入れるWhite Gardenのメンバー達。

 メンバーのそんな優しさに触れて声を上げて泣き出す子供達。そんな子供達にメンバー一同、同じ感情を持って彼らにその眼差しを向けていた。

 勝負には負けたかもしれない。だけども紛れも無く彼らは白庭の誇りだった。


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