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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第七章 『夢・絆』
220/242

 S7 コミュニティ対抗試合前夜

 コミュニティ対抗試合の前夜、その日コミュニティルームには大会参加メンバーが勢揃いしていた。

 前日の最後の話し合いを終えてエルツが戻ってくると皆は笑顔で迎え入れる。


「お疲れ。話まとまったか?」


 ケヴィンの言葉に疲れた笑みを浮かべるエルツ。


「うん、いや今日決める事ってのは特に無かったから。今日は明日の最後の打ち合わせ。皆協力的だからすごい助かるよ」

「ここ来る時ちらっと見たけど、何か本当に企画会議って感じだったな。何かTIFFANYにすごい参謀が居るって聞いたけど」


 ケヴィンの言葉に一瞬思考を巡らせたエルツが顔を上げる。


「ああ、リーシャンテさんか」

「階段から遠めに見たけど可愛いよなその子」


 ケヴィンの言葉にユミルが正面から睨みつける。ミサにしてもリーシャンテにしても、そう言えばケヴィンが以前どちらかというと髪の短い子の方が好きだという話を思い出し苦笑いするエルツ。だが、まあ確かにシャンテに関しては凛としていて、それでいて可愛らしい女性だというのは、そこは同感だった。

 疲れ切ったエルツがソファーに座り込むと向かいのフランクが心配そうに呟く。


「エルツさん大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫。ごめん気遣わせて。明日から本番なのに。なんかやる事やったらちょっと今身体から力抜けちゃってさ」


 エルツの言葉に笑みを零す一同。


「今、皆で人選について話し合っていたんです」


 リーベルトの言葉に頷き「どんな具合?」と尋ね返すエルツ。


「とりあえずエルツさんとドナテロさんの枠は固定ですけど、その他のポジションは複数希望者が居るんで。その振り分けについて」とフランク。

「先鋒についてはウィルがソルジャー、シュラクがハンター、チョッパーがマジシャン。次鋒についてはケヴィンさんがソルジャー、ユミルがハンター。副将についてはフランクがソルジャーで俺がハンターと、結構相手の出方によって職種的には戦術の幅があります。ただ相手の情報が少な過ぎるんで。次鋒についてはユミルから恐らく企画関係者であるアリエス、ポンキチ、ペルシアのこの三人が出てくるという事は固いだろうという話で進めていますが、中でも好戦的で危険だと言われているポンキチが出て来たらケヴィンさんに当たって貰う予定です。トーナメント一戦目でその他のコミュニティと当たった時はユミルに対戦して貰います」


 リーベルトの言葉に頷くエルツ。確かにポンキチが出てくる可能性を考えると、ケヴィンは控えて置いた方が良いだろう。


「それ以外についてですが、Alchemistsに関してはLv20台のプレイヤーが居ないという話を聞いています。なので、Alchemistsと当たった場合は大将戦を暫定的に俺かフランクが受け持つ可能性もあります」


 リーベルトの言葉に頷くエルツ。


「現状の情報からシミューレート出来るのはこのくらいしか無いんですが、エルツさん側から何か情報提供出来る事ってありませんか?」

「そうだな」


 皆の視線に考え込むエルツ。皆の予想以上の意気込みにエルツは正直驚きを隠せなかった。

 皆真剣にこの闘いに懸けて臨んでいる。その強い気持ちを感じたエルツは疲れに甘えていた自らを奮い立たせるように顔を上げた。


「現状、自分が分かっている限りまずTIFFANYの人選について。企画関係者が出てくる可能性を考えるなら、あそこの副将はリーシャンテが出てくる可能性がある。彼女はLv17、用意周到に企画会議に来る時はフリークラスでいつも来ていたから、正直クラスは何で来るかは予想が付かない。ただ人選についても一切彼女は情報を出さなかったけど、ただ漏らしていた言葉の雰囲気から一つ言える事は」


 そうして間を置いたエルツの言葉に皆がその先を促す。


「ヴァニラさんが出てくる可能性が高い」


 その言葉に顔を上げるドナテロ。


「ヴァニラさんて、あの元ヴァルキュリアの?」


 ユミルの言葉に頷くエルツ。


「出てくるとしたら間違いなく大将ですよね」


 皆がドナテロに視線を集める。そんな視線の中ドナテロはグラスを口に運ぶ。

 それはドナテロの無言の意志の表れなのだろうか。グラスの液体は無色に透き通り、アルコールの香りも感じられない。


「それからBLOODY MARYについて。こっちはポンキチが口を滑らせまくってる御蔭で大分情報がある。まず、ポンキチが言うに今大会連中はすごい隠し球を持ってるらしい。何でも天才天才ってポンキチは言ってたけど、あの口振りからしてポンキチやジュダさんとは別にその隠し球が存在するんだろうな。そのプレーヤーがどのタイミングで出されるのか、正直ちょっと脅威だね。それからBLOODY MARYと当たった場合先鋒戦は成立しない。あそこにはLv5以下のプレーヤーが居ないんだ。だから条件を別条件に合わせる事になる。その場合、うちの人選を考えると、成立するのは次鋒と副将のどちらの条件に合わせる事。向こうはどっちでも構わないといったような言葉を漏らしてたけど、その場合どうする? ポンキチが言う隠し球ていうのもそのどちらかで出てくる可能性が高いか」


 エルツの言葉に微笑するリーベルト。


「余裕な発言ですね。大した自信だな。その場合、うちらは全然構いませんよ。なぁフランク」

「ああ、勿論」


 そうしてエルツはユミルとケヴィンに視線を向ける。


「二人はどう?」

「俺も構わないぜ。っていうか俺はポンキチとやる事確定してるんだからこの場合ユミルだろ?」


 ケヴィンの言葉に一瞬動揺を見せるユミル。


「私も大丈夫です」


 そんなユミルの様子にその先の言葉を促すように視線を彼女に投げるエルツ。


「ただ……勝率を上げるなら。副将のお二人に任せた方が良い結果が出ると思います」


 ユミルの言葉にすかさずケヴィンが切り返す。


「自信持てよユミル。組み合わせはどうなるかわからねぇんだぞ」


 その言葉に頷くユミル。


「BLOODY MARYの大将はジュダという方です。Lv20、クラスはマジシャン。彼はBLOODY MARYの副団長を務めている方でこれは確定情報です」

「副団長か……こっちも手強そうだな」とケヴィン。


 だが、エルツは心配はしていなかった。同Lvのプレーヤーにドナテロが負ける姿など想像もつかないからだ。

 ドナテロならば必ず何とかしてくれる。彼にはそう思わせる何かがある。


「何が出たってやる事は変わらないさ」


 ドナテロの言葉に頷く一同。


「ウィル、シュラク、チョッパー。折角だ、お前等もこっちこい」


 ドナテロの言葉に駆け寄ってくる三人。


「全員手出せ」


 ドナテロの言葉に机周りで円陣を組みその手を差し出す一同。


「勝つ事は勿論重要だが、大切な事は自分に恥じない闘い方をする事だ。そうすりゃ結果は自ずとついてくる」


 普段ならこんな妙なテンションはスポ根だと笑い飛ばしそうなものだが、この時ばかりは皆真剣にそれぞれ想いを胸に手を重ねていた。


「White Gardenの名に恥じぬよう明日はそれぞれ最善を尽くす。いいな」


 ドナテロの言葉に全員が「はい!」と渾身の力を込めてそれに応える。

 決戦の日に備えてドナテロの導きによって一同の士気は最高潮に高まりつつあった。


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