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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第七章 『夢・絆』
213/242

 S1 コミュニティ会議

 広場の雑踏を越えた先に聳えるコミュニティセンター。だが向かう先は訪れ慣れたWhite Gardenでは無かった。旅人装備の平装を纏ったエルツはセンターに入ると身嗜みを整えて、一人ホールの席へと着く。


「二時間前か……早過ぎたかな。まぁいいや、資料確認しとくか」


 エルツが円席についてから乾いた喉をアイスティーで潤しながら約一時間半後、そこには同じく平装に身を包んだアリエスとそれから初対面の男性が一人佇んでいた。年は三十台後半に見えるその人物を見るなり立ち上がったエルツは深々と頭を下げる。

 

「どうも初めまして、私White GardenのElz(エルツと申します」

「これはご丁寧に。私Alchemistsの引率を務めていますリーダーのSilvinoシルビノと申します」


 互いに差し出した手で堅い握手を交わす二人。

 握手を交わした際にこの企画の責任を今更ながらに感じたエルツの僅かな震えを感じ取ったシルビノは優しい笑顔をエルツに向けた。

 

「お気持ちはお察し致しますよ。四つのコミュニティをまとめられるのですから大変でしょう。ですが、そう堅くならずに今日は肩の力を抜いた話し合いを致しましょう」


 シルビノのその気遣いの言葉に改めて深く礼をするエルツ。

 それから三人は暫くコミュニティ談義に華を咲かせ始める。緊張したエルツの心情を察したシルビノが敢えて砕けた言葉を使ってくれたおかげでエルツは落ち着きを取り戻す事が出来た。


「TIFFANYからはどなたがいらっしゃるんでしょうね。仮に団長であるヴァニラさんがいらっしゃったら流石に緊張しますね」


 アリエスの言葉に苦笑いするエルツ。


「そんなにプレッシャー掛けるなよアリエス」と苦笑いしながらエルツ。

「あ、すみません。そんなつもりでは無かったのですが私も舞い上がってしまって」


 そんな二人の会話に穏やかな笑顔を見せるシルビノ。


「たとえ誰がいらっしゃっても緊張する事はありませんよエルツ君。君は君に出来る事をしっかり果たせばそれでいいんですから。かく言う私も緊張しているんですから、困った話です」


 シルビノのそんな言葉にエルツが安堵したその時だった。コミュニティセンターの二階から降りてくる見慣れた影達にエルツが手を振る。

 そう、ポンキチとその隣にいるのはジュダだ。エルツの手招きに円席へやってきた彼等はまずはシルビノの丁寧な挨拶に一礼した。


「どうも、初めまして」


 Alchemistsの引率者の前でも臆する事無く堂々と手を差し出すポンキチ。


「この度はうちの不出来な副将がお世話になりますがよろしくお願いします」

「そこの大将気取りの小僧、ぶっとばしてやるからこっち来い」とジュダ。


 登場からコントを始めてくれた二人のおかげで場の雰囲気はまた和やかなものへと為って行く。


「ペルはまだですか?」

「うん、まだみたい。今誰連れて来るんだろうねって三人で話してたんだ」


 エルツの言葉にポンキチは片手を顎に当てて何やら神妙な顔を見せる。


「TIFFANYといやぁ、やっぱあの人が有名でしょうが。今回出て来ますかね」

「出てきたとしたらこの上無い機会だな。ローズが出ない以上、大将戦の権利は俺にある」


 ジュダの言葉にほくそ笑むポンキチ。


「生き恥晒さなけりゃいいですがね」


 その言葉にジュダがポンキチの首根っこを吊り上げたその時だった。

 コミュニティセンターに現れたまた二人の人影。


「お、ペルだ」


 一人はペルシア。皆の姿に気づいたペルシアは笑顔を見せる。

 そして、もう一人。ペルシアを先導する人物の姿。年はエルツと同年代くらいだろうか。艶やかなブロンドのショートヘア、蒼海を感じさせる爽やかなマリンブルーの瞳を携えたその人物。


――ヴァニラさんじゃない――


 凛然とした表情で一同の前に姿を現した彼女は円席の前で立ち止まると、皆に向かって愛くるしい笑顔を見せる。


「初めまして皆さん、私TIFFANYのLeeshante(リーシャンテと言います。この度は素敵な企画にお招き頂き感謝します。今後、本企画に関するTIFFANYサイドのマネージメントについては私が担当させて頂きます。私の事はシャンテとお呼び下さい」


 彼女の挨拶に席から一斉に立ち上がり礼をする一同。


「どうも、初めまして。私AlchemistsのSilvinoと申します」


 シルビノの挨拶に美しい微笑みを浮かべる。


「AlchmistsのSilvinoさんですね。この度はお会いできて光栄です」


 年上のシルビノに対しても礼儀を尽くしながら、凛とした立ち回りを見せる彼女。丁寧な挨拶を交わすそんな二人の前でアリエスが自己紹介のタイミングにあぐねていると、リーシャンテは笑顔をアリエスに向ける。


「という事はお隣の方がAries(アリエス)さんかしら?」


 彼女のその言葉に不意を打たれた表情で視線を泳がせるアリエス。


「ペルシアの方からお話は聞いています。いつも大変お世話になってるそうでありがとう。同い年と聞いてますけどよろしくね」

「あ、よろしくお願いします」


 そう戸惑いながら答えるアリエスの姿は普段見慣れない珍しい光景だった。

 アリエスと同い年という事は二十三歳。つまりエルツとも同い年という事だ。


「それなら、じゃあPonkiti君というのはどの子かしら」


 リーシャンテの問い掛けにキョロキョロと辺りを見渡すポンキチ。


「お前を置いてこの世界にそんなふざけたネームつける奴はいないだろうが」


 ジュダに首ねっこを掴まれて引きずり出されたポンキチが吊り上げられたままリーシャンテに一礼する。


「どうも、ポンキティです」


 自分の名前を噛んだポンキチのその様子に笑みを零すリーシャンテ。


「あなたがポンキチ君ね。ペルシアからあなたの話は嫌という程いつも聞かされてるわよ」


 リーシャンテの言葉にペルシアが後ろで動揺を見せる。


「おいらの話ですか。ったくモテル男は辛いぜ。でもモテナイ男はもっと辛いぜ、ねぇ大将」


 そう言ってジュダに視線を振ると同時に締め上げられるポンキチ。

 一同がそんなやりとりに笑みを零しているとジュダはポンキチを床に置き捨て皆に向き直る。


「うちの女団長は今回不参加でな。BLOODY MARYの大将は今回副団長である俺が務めさせて貰う。Judahジュダという。よろしく頼む」

「よろしくお願いします」


 丁寧にお辞儀するリーシャンテにジュダは言葉を重ねる。


「今回TIFFANYの大将は誰が務めるんだ?」


 突然のジュダの投げ掛けにリーシャンテは不意を突かれた表情の後にふっと笑みを見せる。


「残念ですが参加メンバーについては私の口から今は詳しくお伝えする事は出来ません」

「秘密って事か。まぁそりゃそうだろうな。だが、あの人物が居る以上、自然期待は高まっちまう。手合わせするにはまたとないチャンスだからな」


 ジュダの言葉にリーシャンテは無言の微笑を浮かべたまま暫く間を置くと静かにその口を開いた。


「参加メンバーについて詳細は言えませんが、皆様の御期待に応えられる人選を行ったつもりです」

「そいつは楽しみだな」


 リーシャンテの言葉に不敵な笑みを浮かべたジュダはエルツへと視線を振る。


「これで白庭からあのSinが出れば、かなり面白い内容だったんだがな。まぁ、そうそう上手くはいかないか」


 申し訳無さそうに俯くエルツに「気にするな」と言葉を掛けるジュダ。


「あ、申し遅れてすみません。今回この企画を立ち上げさせて頂いた主催者のエルツです。この度は本企画にご参加頂いて本当にありがとうございます。充実した内容になるよう精一杯頑張らせて頂きますのでよろしくお願いします」


 エルツの言葉にじっと視線を返すリーシャンテ。


「ペルシアに頂いたメールを拝見させて頂いたんですが、勝手な先入観でもっとご年配の方が企画されていたのかと思っていたらお若いんですね。吃驚びっくりしました」

「いや、あんな暫定の企画書でお恥ずかしい限りです。ちなみに年はアリエスと同じなので同い年ですよ」


 エルツの言葉に優しい笑顔を返すリーシャンテ。


「ええ、ペルシアから聞いて存じ上げてます。いつもこの子はエルツさんはすごいすごいって。何か彼女の中では何でも出来るメンバーのリーダー的存在だとか」


 リーシャンテの言葉にエルツに微笑みかけるペルシア。


「いやいや止めて下さい。ペルシアがそんな風に思ってくれてたなんて嬉しいですけど、まだまだ一人じゃ何も出来ない未熟者ですから。色んな人に助けられて皆が居るから今回だってこうして実現に踏み切れたんです」


 その言葉に皆が微笑み、トークにも折り目がついたその時エルツは本流へと流れを戻す。


「さて、色々お話すれば話に華は咲きそうなのですが、先も長いのでそれではそろそろイベント詳細についてお話させて頂きたいと思います」


 エルツの言葉に円卓に向き直る各コミュニティのメンバー達。


「ただいま本企画に関して取りまとめた資料を皆さんに送らせて頂きました。まずは資料一つ目のファイルをご覧下さい」


 そうして始まる会議に皆は黙ってエルツの話に聞き入り始める。

 そこには真剣にこの企画を盛り上げようとする企画協力者達の姿が在った。

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