S10 WA『三散花』カスタマイズ
天刻7、暫くフランクとリーベルトと共にCP稼ぎを共にしていたエルツはクラスランクをCR7へと上げていた。CR7へとランクアップした際、エルツはWA『三散花』を習得していた。三散花のカスタマイズ項目は以下の通りである。
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■三散花
WA D値:初撃 ND,二手 ND,第三手 ND+D3*Lv補正
○カスタマイズポイント:6WACP
【三手目の型のみ認識】〆
▼初撃威力---ND
▼二手目威力---ND
▼三手目威力---100%:1WACP 117.5%:2WACP 【135%:3WACP】
【全型認識】
▼初撃威力---100%:1WACP 【107.5%:2WACP】 115%:3WACP 消費SP1
▼二手目威力---100%:1WACP 【112.5%:2WACP】 125%:3WACP 消費SP2
▼三手目威力---100%:1WACP 【117.5%:2WACP】 135%:3WACP 消費SP4
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どうやら三散花では型の認識タイプを二種類選択出来るようだった。
元々WA三散花とは初撃、また二手目の攻撃を成功させて初めて三手目の型を認識する。このカスタマイズ項目で言うと『三手目の型のみ認識』というこの項目がそれに当り、初期設定として採用されているようだった。つまりは初撃と二手目は通常D値をそのまま反映するが、三手目の型を成功させた時、135%のD値ボーナス。これが具体的にどういう計算式で掛かるかは不明だがとにかく威力が上乗せされるようだ。
それに対して、興味深いのはこの『全型認識』というカスタマイズ項目である。
おそらくはこの認識タイプを選択すると、初撃から三手目まで全ての型が認識されD値の補正が掛かるのだ。通常は三散花は三手目の型を発動時に7SPを消費するが、こちらの認識タイプでは細かく消費SPが設定されている。
初手から三手目に掛けて次第にD値に対する補正が上昇しているのは、この攻撃の当てにくさにあるのだろう。何故ならば単純に三手目までの威力を同じ補正値で調整するならば、初撃の威力を最大に設定してやる事が一番効果的だろう。通常三散花は三手目に到達するまでに敵が攻撃を回避したらそこで終了である。これは三手目まで型の成功判定を繋げる難しさを考慮した結果の補正値なのだろう。
こうして見ると、選択するならば全型認識タイプの方が非常に面白そうにエルツには映った。それに若干ではあるが、こちらの方が最終的に掛かる補正値を多く取れる。
「威力を重視するなら初撃から『100%』『112.5%』『135%』の順かな。でもこれじゃ脳筋だよな」
三散花に関してはもっと色々考慮の余地が有りそうだ。じっくり考えてみよう。
さて平日のため現実へとログアウトしたフランクとリーベルトだが、また戻ってきたらその時は今度はバッファロー狩りに連れて行くとエルツにいい残して去って行った。
平日のこの期間、これから十ニ日間程はエルツの孤独な期間が続く。刻の日付と現実の時間は連動している。つまり刻の七日目とは現実世界では午前六時台を示す事になる。これから現実世界で半日程、つまりこちらの世界では十二日間ほどは人々は学業であったり仕事に専念する時間帯なのだ。
だが、そんな時間帯でもこの世界にはエルツと同様に悠々自適にここARCADIAで生活する冒険者達が居る。パーティを組みたいと思えば、いくらでも組む事だって出来るのだ。
エルツはマイルームでPBを開きながら、掲示板情報を見つめていた。
「久々にレベル上げパーティでも参加しようかな」
今までは休日を利用して、ユミルやケヴィン達とワイルドファング狩りで共にレベルを上げてきたが、結局は活動の時間帯も異なるし、完全なる固定パーティを組む事はこの世界では難しい。それに、今はケヴィンとパーティを組む事が難しくなった理由が他にもある。
ケヴィンとミサが交際を始めたとなると以前のように一緒に冒険をする時間は自然少なくなってしまうだろう。そう考えると何だか少し寂しいものだった。
CITY BBSから一つの書き込みに目を留めたエルツは情報を表示する。
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City BBS
▼パーティのお誘い掲示板
□投稿者 Clein Catapiller Party
天刻7,PM1:00よりCatapiller狩り予定
参加希望者はAM11:30までに下記返信(募集人数:1名)
▼参加条件:ソルジャーLv9 CR5〜
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時刻はAM11:17。ギリギリだがまだ間に合うか。
エルツは掲示板の書き込み内容を見ながらキーボードを弾き始める。
「えーと、参加希望と……これで良し」
エルツが書き込み終えてから数分後、掲示板には募集主から場所と時間が提示された。
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□投稿者 Clein
正午に西門にて
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飾り気の無いその記述に首を傾げるエルツ。
「随分と言葉を飾らない人だな……募集人数1名っていうのも。キャタピラー狩りって四人パーティ推奨って話だけど二人で出来るのか。それとももう三人集まってて1名だけ募集してるのか」
そんな事を呟きながらPBを閉じる。
「とりあえずは行ってみるか」
約束の時間まではあと三十分弱。そういえばまだ昼食も取っていなかった。この間に済ませてしまおう。
扉が閉まる音と共に誰も居なくなったマイルームには窓を通して静かに風が注ぎ込まれていた。