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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第六章 『残されしモノ』
187/242

 S9 パワーチャージ検証

 三人で朝から狩りをしていたその日の正午を過ぎた頃。草原での昼食後、狩りを再開して暫くするとフランクとエルツは早くもCR5へと到達していた。


「もうCR5か。早いな」

「クラスランクが低いうちはこれどんどん上がりますね」


 フランクとそんな言葉を交わしながらクラス情報を開き、何かスキルを習得をしていないか調べる二人。すると、そこには新たに二つのスキル情報が追加されていた。

 その一つは片手剣のWAであるCounter Blade<カウンターブレード>。相手の攻撃に対してカウンターでヒットさせるとダメージにボーナス値が加わるという条件WAだ。

 そして二人の視線の先にはもう一つ、見慣れないスキル名が表示されていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ■Power Charge<パワーチャージ>


 次の物理攻撃の威力を上昇させる。なお、攻撃の成功判定に関わらず、その後威力は標準値へと戻る。<再使用時間:5分>


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 その説明を読み笑みを浮かべるエルツとフランク。


「これがクラス固有スキルってやつですかね。なんかここに来てようやくMMORPGっぽくなって来たな」と満足そうに語るフランク。

「確かに、今までの戦闘って何ていうか肉弾的というか。なんか身体張った素の戦闘だったもんな。こういうスキルが出てきてくれるのはありがたいな」


 二人の呟きに後ろからPBを覗くリーベルト。


「でも、これどうやって使うんですか」


 リーベルトの言葉に顔を見合わせるエルツとフランク。

 二人はスキル情報に目を走らせ、そしてその記述を見つけた。


「これもボイスコマンド対応なんだ。武器を抜いた状態でパワーチャージって発音するらしい」とエルツ。

「発音するのか。発音するならもうちょっとネーミング考えて欲しかったな」


 そんなフランクの言葉に被せるように呟いたリーベルトの言葉がソルジャーである二人に追い討ちを掛ける。


「何ていうか、ちょっとダサイですよね」


 リーベルトに悪気は無いのだろうが、これから唱える身である事を考えるとその一言は痛烈にエルツの胸に響いた。


「これSPとか消費しないんだ。代わりに再使用にかかる時間が五分か。微妙な長さだな。具体的にどのくらい威力が上昇するのかな。ちょっと検証してみようか」


 エルツの提案に頷くフランク。


「この効果がWAにも適用されるのかも気になるところですね」


 フランクの言う通り、もしこの効果がWAにも適用されるならばソルジャーにとってこれは重要なスキルの一つになるだろう。

 そうして、エルツ達は再びワイルドファング狩りへと戻り検証を始める。

 現在のエルツの物理ダメージはステータス値である物理攻撃力「29」に加え、バロックソードのD値である「10」を加えた「39」という数値が示している。実際に与えるダメージはここからLv9のワイルドファングの物理防御力「19」を差し引いた「20」という数値が通常D値となる。

 実際に斬りかかった際、アナライズゴーグル上で確認出来る、モンスターの身体周りにポップアップするダメージ数値もその理論値とほぼ同値であった。


「パワーチャージ」


 エルツの掛け声と共に紅の光膜がエルツの身体を包み込む。

 この状態で斬り掛かった場合この数値はどう変化するのか。


「えい」


 エルツが斬り込んだ際に発生したダメージ数値は「34」であった。

 またステータス値が「46」。武器D値が「17」のフランクが同様に検証した場合、通常D値である「44」という数値は「67」へと変化した。

 この検証は二人が一時間に渡って約十回ほど繰り返したが、いずれもほぼ同値の結果を示した。

 この時点でエルツが考え出したパワーチャージによるダメージ値の変化を示す計算式は三パターン。

 一つ目は「物理防御無視」である。単純に物理ダメージがそのまま敵へのダメージへとして反映されている場合である。だが、この場合たった十回という検証とは言えない試行ではあるが、平均値として弾き出した実際のダメージ数値と二人が持つ本来の物理ダメージの値が微妙にずれている。

 二つ目は物理ダメージの値そのものに補正がかかっている場合である。エルツの物理ダメージの通常理論値は「20」、これがパワーチャージ使用後は「34」という平均値を弾き出している。フランクで言えば「44」が「67」である。それぞれの1.5〜1.7倍というダメージ値の上昇から、これを近似値として捉えられなくもない。

 三つ目はステータス値の物理攻撃力にのみ補正がかかっている場合である。二人のダメージ変化の差を求めてみると、エルツが「14」。フランクが「23」である。この数値を見た時にエルツはふと頭の中である関係性を閃いた。それは二人のステータス値である物理攻撃力に対してこの数値が約半分の値を取っているという事だ。全ては憶測の域を超えないため、ただの閃きに過ぎないがもし仮にエルツの推測が正しいとするならば全て説明がつくのだ。

 変化値がそれぞれの物理攻撃力に対して半分であるならば、これが何を示すのか。つまりは、パワーチャージのその効果がステータス値である物理攻撃力に対して1.5倍の補正を掛ける。そう考えると全ては説明がつく。

 エルツの場合を例に取るならその計算式はこういう事である。


 29(エルツ物理攻撃力)*1.5(パワーチャージによる補正値)+10(武器D値)-19(ワイルドファング物理防御力)=34.5(理論D値)


 近年複雑化してきたRPGのシステムを考えると何とも稚拙な計算式だが、極力単純な計算式を採用してきたこのARCADIAというゲームシステムの今までの流れを考えれば充分に可能性はある。

 実際に自分が製作者ならパワーチャージというスキルの性能を考えた時に、何となく1.5という数値はキリが良いし、それをネックに計算式を組み立てるかもしれない。そういう意味で物理攻撃力に1.5倍という補正を掛けるこの計算式はエルツには納得に値するものであった。


「結果から見ると単純にダメージが1.5倍くらいになると考えればいいんですかね」


 フランクの言葉に不意を突かれたように相槌を打つエルツ。


「後は、これがWAにも効果が乗るかか」


 エルツの呟きにリーベルトは欠伸をしながらフランクとの会話の行く末を見守っていた。


「さっき撃ってみましたけど、WAの威力も上昇しましたよ。具体的な数値検証はしてないですけど、多分同じくらい効果あるんじゃないかな」


 おそらくはWAの計算式はもう少し複雑なものとなるのだろう。

 WAカスタマイズによって、フランクとは技の威力も異なるため検証は難しい。

 単純に、二人の設定を統一すれば検証は可能だが、正直複雑というよりはただ面倒臭いというのが本音か。

 どちらにせよ、パワーチャージによって通常攻撃、及びWAの威力を強化する事が出来る。この事実が分かっただけでも今日は大収穫だった。


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