S4 ギルドショップ
昨夜は結局ドナテロが寝てしまったためキーアイテムは渡せなかった。リーベルトもソルジャーではなくハンター志望という理由から受け取りを断ってきた。結局、キーアイテムを受け取ったのはフランク一人で、それをきっかけに翌日二人は西エイビス平原へと狩りの約束を交わしたのだった。
現在のフランクのレベルはLv16。Lv9のエルツとは大分レベルが離れている。
今まではレベルの大きく異なるプレーヤーがパーティーを組む理由は素材狩り以外にはあまりメリットは無かった。だがクエストシステムやクラスシステムの導入によりレベル差が開いたプレーヤー同士がパーティを組む理由が本バージョンアップにより出来たのである。
今朝方、朝一でギルドの長蛇の列に並んで『ソルジャー認定試験』のクエストをクリアしたフランクはギルド内でエルツと待ち合わせて居た。
CITY BBSの情報から二人は、クラス認定試験以外の納品・戦闘クエストの多くは受付を通さずギルド内のクエストメニューから請け負えるという情報を入手したのだ。
「エルツさん、おはようございます」
「大変だったね。ご苦労様」
赤銅のバロック装備のエルツに対して、フランクが纏うは蒼白の輝きを帯びた美しい軽鎧、リンカー鉱石の精錬によって生み出されたその輝きは低レベル者にとっては憧れの的だ。
二人は待ち合わせると、ロビーの一角にあるソファーの上に腰掛けPBを開き、クエストメニューを展開する。
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▼納品クエスト New!!
:依頼されたアイテムを納品します
○石ころ×10---◆GP1
○ウーピィの肉×3---◆GP1
○ウーピィの綿毛×3---◆GP2
○ムーキャットの爪×2---◆GP2
○兎石×3---◆GP3
○コカトリスの羽毛×3---◆GP3
○マンドラゴラの根×3---◆GP4
○フーピーの綿毛×1---◆GP5
○月兎石×1---◆GP10
▼戦闘クエスト New!!
:世界に点在する様々な生物の討伐、又戦闘を目的としたクエストの総称です
○ウーピィ討伐×30---◆GP3
○ムーキャット討伐×20---◆GP4
○コカトリス討伐×10---◆GP5
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CITY BBSの情報によると一度に請け負える戦闘クエストは一種までという事だった。
納品クエストについては請け負う必要は無く完全に出来高によるポイント計算となっている。要は集めるだけ集めて後でまとめて精算すれば良いのだ。
クエストメニューに目を通しながら呟く二人。
「戦闘クエストはこのメニューならまずウーピィ三十匹は避けた方が無難ですね。ただでさえ生産やFoopyの影響で競争率高くなってるのに」
フランクの言葉にエルツは画面に指を沿わせながら頷いた。
「ウーピィ三十匹か、これは有り得ないな。この中だったらコカトリスが一番現実的かな」
理想世界の中で現実的という言葉を使うのもおかしいが、この中ではコカトリス討伐が容易そうだった。狩るついでにコカトリスの羽毛を狙えば一緒に納品クエストも行う事が出来る。そういう意味では、戦闘クエストに上げられている三種のモンスターはどれも納品クエストとの併行が可能なのだ。
とりあえずはまずはコカトリス討伐クエストを請け負った二人は、ソファーから腰を上げた。
「そういえばギルドショップが開設されたんですよね」とフランク。
「確かバージョンアップのシステムメールにそんな事書いてあったね」
何か真新しい物があれば良いのだが、そんな思いで二人は再びPBを開き、ギルドショップというポップアップアイコンをクリックする。どうやらギルドショップとは武器や防具店のようにきちんとした店があるわけではなく、各ギルド内でPB上にポップアップするメニューショップの様であった。
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■ギルドショップメニュー
○パーソナルブックカバー:白 300ELK
○パーソナルブックカバー:黒 300ELK
○アナライズゴーグル 1500ELK
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随分メニューが少ないように思えるが、GRが上がれば商品も増えるのだろうか。エルツはそれぞれの商品の説明を見ながらふと一番下に記されていた『アナライズゴーグル』でクリックマーカーを止めた。
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■アナライズゴーグル
主に生物解析を目的に作られた特殊ゴーグル。透光板に解析した生物情報を映し出し、ステータス情報やダメージ数値、又HPゲージ等を表示する事が出来る。またアナライズゴーグルを装着した状態で同種の生物との戦闘を繰り返す事で、より詳細な生物情報を投影する事が出来る。
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情報を読んだ限り、かなり魅力的なアイテムのようにエルツには感じられた。
特にエルツが魅かれたのはダメージ数値とHPゲージの表示という文字にある。この世界では現在までダメージに関する視覚的表示は無かった。それ故にモンスターの状態が明確に分かり辛かったのである。あと、どれくらいのダメージを与えればそのモンスターを倒せるのか、このアイテムがそれを視覚的に表示してくれるというならば、これは画期的なアイテムだ。
「最後のアイテム、これ凄いですね」とフランクが呟いた。
「1500ELKっていうのはちょっと高いけど買ってみる価値はあるかこれは」
新たなアイテムに心を躍らせる二人。
そうしてギルドで一通りの作業を終えた二人は、ディフォーレで食事を摂った後、西エイビスの平原へと繰り出すのであった。