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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫  作者: Wiz Craft
〆 第六章 『残されしモノ』
178/242

序幕

挿絵(By みてみん)


 祭刻が過ぎ去った後、エルツは暫しARCADIAの生活から離れていた。理想郷ではちょうどハロウィンが展開され月末に向けてプレイヤー達が最後の大きなイベントに興じている頃。エルツはというと、別段ここでの生活に飽きた訳でも無くただ現実での所用のために留守にしていたのだった。

 約二日振り、ARCADIAの世界での日数に換算すると四十八日振りにこの世界へと戻ってきたエルツはバージョンアップの内容に読み耽っていた。


「たった二日留守にしてた間に随分面白い事になってるな」


 ハロウィンに参加出来なかった事はエルツにとって残念だったが、平日という事もあり参加はどうにも難しかった。


「まぁ、残念だけど仕方ないな」


 そして再びバージョンアップの内容に目を戻したエルツは、マイルームの窓際の定位置で静かにコーヒーを口にした。

 クラスシステムという名の職業選択システム。RPGをプレイする者ならば誰もが馴染み深いもはや定番の要素だ。このARCADIAの世界でもいつかは取り入れて欲しいと願っていた要素の一つだったが、まさかこんなに早く叶うとは正直思わなかった。


「システムの改変は基本バグの宝庫だけど、こんなに大きく変えて大丈夫なのかな」


 微笑交じりにエルツはキーボードを弾き、早速バージョンアップによる皆の反響を雑談掲示板に求める。

 時刻はAM11:17、偶然にもログインしたのはシステムが改変されてからまだ二時間足らずのタイミングだった。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 City BBS

▼雑談掲示板


ALL ●【雑談】クラスシステム解禁!/Chaptain(01/双華/天/1 10:00)

  →Re:【雑談】クラスシステム解禁!/Exa(01/双華/天/1 10:11)

  →Re:【雑談】クラスシステム解禁!/Wing(01/双華/天/1 10:17)

  →ついにこの日が/Misora(01/双華/天/1 10:23)

   →Re:ついにこの日が/Wing(01/双華/天/1 10:28)

   →ハンター志望/Bananacase(01/双華/天/1 10:32)

   →ソルジャーかな/Seiji(01/双華/天/1 10:35)

    →やっぱりですか/Misora(01/双華/天/1 10:41)

    →残念なお知らせです/Jeferson(01/双華/天/1 10:45)

     →Re:残念なお知らせです/Seiji(01/双華/天/1 10:47)

     →Re:残念なお知らせです/Rucus(01/双華/天/1 10:49)

      →Re:残念なお知らせです/Seiji(01/双華/天/1 10:51)

     →Re:残念なお知らせです/Wing(01/双華/天/1 10:53)

      →Re:残念なお知らせです/Rucus(01/双華/天/1 11:01)

      →回復系のクラスは出ないんかね/Bananacase(01/双華/天/1 11:05)

       →Re:回復系のクラスは出ないんかね/Seiji(01/双華/天/1 11:09)

        →Re:回復系のクラスは出ないんかね/Rucus(01/双華/天/1 11:11)

         →Re:回復系のクラスは出ないんかね/Bananacase(01/双華/天/1 11:13)




 □投稿者 Chaptain 【雑談】クラスシステム解禁!


 この日を待っていた!


 □投稿者 Exa Re:【雑談】クラスシステム解禁!

 

 バージョンアップが10:00なのに何故10:00ぴったりに書き込めるんですか?


 □投稿者 Wing Re:【雑談】クラスシステム解禁!


 キャプテン流石です!脊髄反射を超えた超反応!(笑)


 □投稿者 Misora ついにこの日が

 

 遂にこの日が来ましたね。いつか実装されて欲しいと思ってましたけど。

 私も早くギルドで変えたいんですけどまだどのクラスにするか悩んでて。

 皆さんはどのクラスを選択されますか?


 □投稿者 Wing Re:ついにこの日が


 僕はやっぱりマジシャンです。もともと風属性魔法専攻なんで。

 ただ今ギルド来てますけど、今来ない方がいいですよ。

 死ぬほど並んでますから。


 □投稿者 Bananacase ハンター志望


 職業システムついにきたね。うちは断然ハンターかな。遠距離からちまちまやるのが好きなので。しかし、うちも今並んでるけど毎回バージョンアップする度に何かしら行列作るの止めてくれんかね運営側。いい加減学習して欲しいもんだ。


 □投稿者 Seiji ソルジャーかな


 やっぱりソルジャーかなぁ。やっぱ近接系武器に慣れてるから今更ハンターとかマジシャンってちょっとキツそうだし。俺の周りは皆ソルジャー選択するってる言ってる人多いな。割合的にどうなるんだろう。個人的な私見だとハンターは少数派になりそうな気がする。


 □投稿者 Misora やっぱりですか


 私の周りでもソルジャー志望の人が多いですね。

 ちなみに私もソルジャー志望です。


 □投稿者 Jeferson 残念なお知らせです


 たった今ギルド行ってきました。御期待のところ皆さんに凶報です。

 どうやらクラスチェンジするには各クラスそれぞれ認定試験のクエストをこなさないといけないようです。ハンター志望の私の場合は「幸運の双葉」というアイテムを持って来いと言われました。ソルジャーやマジシャンの方はまた別のアイテムを要求されるようです。


 □投稿者 Seiji Re:残念なお知らせです


 認定試験って何だよそれ。大体クエストなんて単語久々に聞いたぞ。


 □投稿者 Rucus Re:残念なお知らせです


 最悪だ。俺もソルジャーのクエスト内容確認してきた。ソルジャーは「地鳥ぢどりの尖爪」が必要になるらしいが、詳細情報皆無。せめてどこでどうやってとるかくらいヒント出せよ。これじゃ動きようがない。


 □投稿者 Seiji Re:残念なお知らせです


 ドロップアイテムか?これで抽選のレアモンスター限定とかだったら最悪だな。

 

 □投稿者 Wing Re:残念なお知らせです


 折角並んでるのに、クエストあるんですね。という事はマジシャンも何かクエストアイテムが必要になるのか。これでレアモンスターのレアドロップとかだったら確かに最悪ですね。


 □投稿者 Rucus Re:残念なお知らせです


 お前ら恐ろしい事言うなよ。今まで数々の糞仕様生んできたD.Cクオリティだぞ。

 普通に有りそうで怖ぇよ。


 □投稿者 Bananacase 回復系のクラスは出ないんかね


 それにしても今回のバージョンアップで回復系クラスは無かったね。

 追加するにはいいチャンスだったと思うんだがね。

 RPG語ってるのに未だに回復アイテムすら無いのは正直どうかと思う。


 □投稿者 Seiji Re:回復系のクラスは出ないんかね


 言えてる。現状回復は休憩ヒールするしかないもんな。まぁ、ヒール中は会話で暇潰せるからいいんだが。会話弾まない無言パーティとか入ると最悪だよな。ヒーラー系のクラスが追加されてれば大分このゲームのバランスも変わっただろうに。


 □投稿者 Rucus Re:回復系のクラスは出ないんかね


 今までのやり方考えてみろよ。ヒーラー系クラス追加するとしたら多分まずは回復アイテム導入してワンクッション置くだろ。で、バランス調整とかほざいてそれからだろきっと。


 □投稿者 Bananacase Re:回復系のクラスは出ないんかね


 レアモンのFoopyが光(?)属性の魔法使ってきたが、あれが布石だと思ったんだがね。

 攻撃的なマジシャンとは、別のサポート的な魔法系クラスは間違い無く後々追加されるだろうが、早くして欲しいもんだ。

 まあ、何だかんだいってもまだオープンβの段階だからね。とはいってもそれを理由にはして欲しくないが。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 掲示板の内容を読む限り、今ギルドに赴くのはどう考えても得策では無い。

 もはや恒例となりつつあるバージョンアップ後の行列だが、正直勘弁を願いたい所だった。


「クエストシステムも修正導入されたんだよな。行列が出来るって事はまた非効率な受注管理してるんじゃないだろうな。プレイヤー一人一人にギルド職員がクエスト受注するとかだったら最悪だけど」


 バージョンアップ情報にはシステムのオート化とも書かれていたし流石にそこは信用したいが。ならば今起きている行列は一体何なのか。


「なんか不安になってきた。邪推は避けるか」


 そう呟いたエルツはフレンドリストを確認し、仲間達のログイン状況を確認する。


「スウィフトは居ないか。最近会ってないけど元気かな」


 そうしてパーソナルブックを閉じたエルツは窓の外を見つめる。窓の外には美しい輝きを纏った蒼海が映し出されていた。


「さてと」


 小さな木製の丸椅子から立ち上がるエルツ。掲示板の内容からエルツにはふと思う事があった。為りたいクラスはこの時既に心に決めていた。オーソドックスではあるがこういう時は必ずバランス型のクラスを選択すると決めている。それがエルツの揺ぎ無いポリシーだった。

 折角オートマタ戦で魔法に関する知識を培ったのに残念だが、ここは無難にソルジャーを選択するつもりだった。


「……地鳥の尖爪」


 まずは、ギルドで長い行列に並ぶよりは、ならば先にクエストに必要だと言われるキーアイテムを探しに行った方がここは賢明だろう。

 掲示板で情報を探すにも恐らくはまず暫くはクエスト情報は集まらないだろう。

 まずは、自分で動いて情報を集める。夜になればコミュニティルームに人も集まる。それまではゆっくり探索活動に励むつもりだった。

 与えられた情報はキーアイテムの名のみ。だが、この時エルツにはふとこの名前から連想する生物がただ一匹存在した。


――そう、狙うべきはあいつか――


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